そのお店は、シーサイドタウン駅から少し離れた、ちょっと裏路地のような、けれどもどこか洒落た雰囲気を持つ通りの一角にある。
取り扱っているのは色んな雑貨や、アクセサリー。それから店主夫婦が毎日心を込めて焼いている、焼き菓子やケーキの類。
雑貨類は店主夫婦が気に入ったものだけを取り寄せたり、時には手作りをして売っているとかで、素朴だけれども優しい雰囲気のものが多い。それはともすれば、売り物ではなくそれ自体が店を彩る装飾にも感じられる。
ケーキや焼き菓子も同様に、その日の気分や、仕入れた材料で作るものが変わるから、定番商品でなければ同じものに巡り会える事はあまり、ない。けれどもそこが楽しいと、足繁く通っては日によって変わるお菓子を楽しそうに眺める客が居るのも事実だ。
そんなお店『somnium(ソムニウム)』では、今、初夏に先立って夫人の田舎からたっぷりと送ってきた、夏みかんを使ったケーキやお菓子を『初夏のSWEETフェア』と称して販売していた。少ないながらイートインでも楽しめる店内には、近所の人や、もちろん寝子高生だって毎日顔を見せている。
夏みかんを使ったクリームをつめたシュークリームに、夏みかんをたっぷり載せたケーキ。夏みかんで作ったジャムをたっぷり練りこんだクッキーやパウンドケーキだって売ってるし、夏みかんそのものをスライスして乾かし、チョコレートでコーティングした、一風変わったお菓子も人気が高い。
飲み物もコーヒーや紅茶が各種取り揃えられていて、今なら夏みかんを使ったジュースもフェア限定でお目見えしている。一体どこから仕入れてきたのか、ちょっと異国情緒漂うグラスやカップで味わえば、日常なんて忘れてしまいそう。
だから今日も店内には、入れ替わり立ち代り、色んな人が訪れて、思い思いに買い物を楽しんだり、お茶を飲んだり、テイクアウトして嬉しそうな顔で帰っていく。店の外に並べた小さなテーブルや椅子にも、このところは、満員御礼が続いていた。
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その、『somnium』をすっかり気に入ってしまった寝子高生が、桜花寮にも1人、居た。志鳥 紫乃(しどり・ゆかりの)という、この春に転校してきたばかりの高校2年の少女である。
彼女が『somnium』と出会ったのは、一週間ほど前、学校が終わって桜花寮に帰ろうと歩いている途中の事だった。その雰囲気に心を引かれ、ふらりと立ち寄ってみた紫乃は、店内に置かれた様々な雑貨やアクセサリー、そして美味しいお菓子をすっかり気に入ってしまったのだ。
ゆえにもう一度行きたいと、今日も彼女は学校が終わるや否や、寝子島をさ迷い歩いているの、だが。
「うーん……この先だった、でしょうか? でも、あっちにも見覚えがあるような……」
携帯の地図アプリと睨めっこをしながら歩く、紫乃は実は大の方向音痴だった。しかも寝子島にはこの4月に転校してきたばかりなのもあって、島内どころか学校の中でもまだ怪しいくらいである。
そもそも『somnium』に辿り着いたのも、実の所は寮までの道を迷っていて、偶然見つけたという経緯なのだから筋金入りだ。そんな彼女が、もう一度『somnium』に辿り着こうというのは、なかなかに難しい事で。
「一体どこにあるんでしょう」
はぁ、と途方にくれて紫乃は、商店街の入り口で立ち尽くしていた。そこが商店街の入り口だと言う事は、数え切れないくらいに迷ったのでいい加減に覚えたが、どうやってここまでやってきて、ここからどう行けば学校や寮に帰りつけるのかは、いまだに覚えていない。
それでもどうにか『somnium』を見つけたくて、今日も紫乃は寝子島を歩き回り、迷子になってはクラスメイトや寮の友達に探されているのだった――
こんにちわ、水無月 深凪でございます。
3本目のお話は、こんなお店でののんびりとしたひと時でお邪魔致します。
スイーツと雑貨のお店『somnium(ソムニウム)』。
皆様でしたら、どんな風にお過ごしになりますか?
お友達や、大切な方とご一緒に、のんびりとお過ごしになっても楽しいかもしれません。
お1人でのんびりと甘いものを楽しんだり、或いはお買い物を楽しんで頂いてもきっと、素敵なひとときになる事でしょう。
よほど珍しいものでない限り、たいていのスイーツや雑貨は売っているもの、と扱っていただいて構いません。
雑貨は、もしかしたらご夫人の目に適った、ちょっとだけ変わったものもあるかもしれませんね。
そんな品物を探しにお店を訪れるのも、ちょっとわくわくするひと時ではないでしょうか。
ちなみに、そんな『somunium』の店主夫婦は、ご主人が定年を迎えた後に夫婦揃って寝子島に移り住み、趣味を一杯に詰め込んだお店を開いたという、木原 高明(きはら・たかあき)さんと伊都子(いつこ)さん。
揃って68歳を迎える今も、海外や国内各地に旅行に赴いては、あちらこちらで仕入れてきた雑貨なんかをお店に並べていたりします。
髪に混じった白いものも目立つお年頃ですが、どこか可愛らしいような、優しい雰囲気が親しみやすい、とご近所では評判だとか。
ガイド中に登場します紫乃に関しては、構ってやっていただいても、スルーでも構いません。
面識に関しては、ご自由に設定頂けますと幸いです。
なお、紫乃は迷子になっていますが、皆様は普通にお店の事はご存知、という前提でアクションをお書き頂いて構いません。
もちろん、紫乃と一緒に探して頂くのも大歓迎です(笑
それではお気が向かれましたら、どうぞよろしくお願いいたします(ぺこり