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みんなの寝子島小説集！
「ふぅん。ねぇ、あんた、名前は？」
ゆいの目を真っ直ぐに見つめて、《黒い姫》はうっとりするような美しい笑みを零しました。
（……ああ）
泣きそうな思いで、ゆいは胸元をぎゅうと握り締めます。
こんなふうに、誰かに見留められるのはもう、どれくらいぶりになるでしょう。
この黒曜石のような瞳に、ずっと捉えられていたいと、ゆいは心の底から思いました。
ちなみに黒曜石とは、ガラス質の火成岩です。
火成岩は、マグマが冷却され、固まってできる岩石だが、その種類は――。
※
「わあ……」
ゆいの唇から、感嘆の息が溢れました。
《黒い姫》が、ゆったりと、優しく微笑みます。
「ようこそ、私の国へ」
その世界こそが、《黒い姫》の治める王国でした。
遠くの方に、お菓子や宝石で出来た魔法のような森が広がっています。
目の前に臨むのは、苺のケーキを思わせるメルヘンなお城。
ただただ目前の光景に見惚れるばかりのゆいへと、《黒い姫》は歌うように言いました。
「ゆい。あんたに、ここを任せるわ。あんたがここを、この世界を守るの」
※
「誰……？ 《黒い姫》様の敵なら、容赦はしないわ」
ゆいは、突然現れた少女のことをキッと、自分にできる精一杯で睨みつけました。
少女が、首を緩く横に振ります。
「私はただ、あの麗しい姫君に、一目お目にかかりたいだけなの」
「だけど、証拠がないわ」
「ええ、今は。けど、この世界を旅することが、証になってくれる」
少女は、夢見る眼差しで苺のお城を見上げました。
※
「あんた達は、私のかけがえのない友。それはもう、疑いようのないこと」
苺のお城で大冒険を繰り広げた２人のことを、《黒い姫》は友と呼びました。
「これからは私達、この世界で、永遠に幸せに暮らしましょう？」
※
「ああもう、なんてことなの！」
《黒い姫》が、苛立たしげに声を荒げました。
「この世界を、私の、私達の世界を、侵そうとする輩がいるなんて！」
蕩けるような甘い色の空を、翼を持つ黒い獣が、お城を目指して飛んできます。
獣達の瞳は、ギラギラと燃えていました。
まるで、ストロンチウムの炎色反応のようです。ストロンチウムの元素記号は――。
※
「ゆいちゃん！ あなたならできるわ！」
旅の少女が、ゆいに向かって叫びます。
そう、今ここであの獣達と戦えるのは、ゆいと少女しかいないのです。
大切な《黒い姫》のために力を使うことを、けれどゆいは躊躇いました。
「この力……ゆいの力は、誰にも愛されない力だから。忌み嫌われてきた力だから」
「その力を、私は、そして《黒い姫》様は愛するわ」
少女の言葉を耳に、ゆいは《黒い姫》の笑顔を思い浮かべます。そして――。
「この力が――私の力が、《黒い姫》様の世界を守る剣になるなら！」
ゆいが念じると、力が、ポップコーンのように弾けました。
なお、ポップコーンが弾けるのには、水と水蒸気の体積の違いが関係しており――。
※
「ありがとう、二人とも。これで、この世界の平和は守られたわ」
《黒い姫》は、力を合わせて獣達を打ち倒したゆいと少女のことを讃えました。
「ゆい、あんたの力は、素晴らしいものよ。これからもその力を、私のために使って頂戴」
「はい、必ず」
頷くゆいを、少女は柔らかな眼差しで見つめています。
２人はこの先も、永遠に《黒い姫》の傍に在るのでしょう。いつまでも、幸せに……、
大天使 天吏は、図書館で、小説のクライマックスの執筆に当たっていた。
「……あ！」
知った声に、顔を上げる。
腕に本を抱えた犬杜 初が、顔に喜色を乗せて天吏の元へと歩み寄ってきた。
「あら、初ちゃんじゃない」
「びっくりしたぁ。こんなところで会うなんて。……あれ？ これって……」
初の眼差しが、天吏の手元の原稿用紙を見留める。
「ああ、これはね、小説を。論文とはまた違って難しいわ。空想なんて、科学からかけ離れた存在ですもの」
「へええ、あんた、なんていうか多才なのね……え？」
感心していた様子の初が、不意に、固い声を漏らした。
「苺の、お城？ それに、このゆいって子……」
「ああ、そうなの。お話のネタがなくて勝手に初ちゃんをモデルにしちゃった」
「それは……別に、全然構わないけど……」
天吏の小説に目を通す初の表情が、軽く強張る。
けれど天吏は、そのかんばせに柔らかな、それでいて有無を言わせぬような笑みを湛えるのだ。
「大丈夫、心配しないで。ちゃんと初ちゃんを幸せにしてみせるわ」
初が帰ったあとで、天吏はひとり、呟きを落とした。
「本当に、この幸せが……あれば」
口元には、笑みが乗っている。
天吏の心の在り処を知るのは、恐らくは、彼女自身だけ。
ゆいの目を真っ直ぐに見つめて、《黒い姫》はうっとりするような美しい笑みを零しました。
（……ああ）
泣きそうな思いで、ゆいは胸元をぎゅうと握り締めます。
こんなふうに、誰かに見留められるのはもう、どれくらいぶりになるでしょう。
この黒曜石のような瞳に、ずっと捉えられていたいと、ゆいは心の底から思いました。
ちなみに黒曜石とは、ガラス質の火成岩です。
火成岩は、マグマが冷却され、固まってできる岩石だが、その種類は――。
※
「わあ……」
ゆいの唇から、感嘆の息が溢れました。
《黒い姫》が、ゆったりと、優しく微笑みます。
「ようこそ、私の国へ」
その世界こそが、《黒い姫》の治める王国でした。
遠くの方に、お菓子や宝石で出来た魔法のような森が広がっています。
目の前に臨むのは、苺のケーキを思わせるメルヘンなお城。
ただただ目前の光景に見惚れるばかりのゆいへと、《黒い姫》は歌うように言いました。
「ゆい。あんたに、ここを任せるわ。あんたがここを、この世界を守るの」
※
「誰……？ 《黒い姫》様の敵なら、容赦はしないわ」
ゆいは、突然現れた少女のことをキッと、自分にできる精一杯で睨みつけました。
少女が、首を緩く横に振ります。
「私はただ、あの麗しい姫君に、一目お目にかかりたいだけなの」
「だけど、証拠がないわ」
「ええ、今は。けど、この世界を旅することが、証になってくれる」
少女は、夢見る眼差しで苺のお城を見上げました。
※
「あんた達は、私のかけがえのない友。それはもう、疑いようのないこと」
苺のお城で大冒険を繰り広げた２人のことを、《黒い姫》は友と呼びました。
「これからは私達、この世界で、永遠に幸せに暮らしましょう？」
※
「ああもう、なんてことなの！」
《黒い姫》が、苛立たしげに声を荒げました。
「この世界を、私の、私達の世界を、侵そうとする輩がいるなんて！」
蕩けるような甘い色の空を、翼を持つ黒い獣が、お城を目指して飛んできます。
獣達の瞳は、ギラギラと燃えていました。
まるで、ストロンチウムの炎色反応のようです。ストロンチウムの元素記号は――。
※
「ゆいちゃん！ あなたならできるわ！」
旅の少女が、ゆいに向かって叫びます。
そう、今ここであの獣達と戦えるのは、ゆいと少女しかいないのです。
大切な《黒い姫》のために力を使うことを、けれどゆいは躊躇いました。
「この力……ゆいの力は、誰にも愛されない力だから。忌み嫌われてきた力だから」
「その力を、私は、そして《黒い姫》様は愛するわ」
少女の言葉を耳に、ゆいは《黒い姫》の笑顔を思い浮かべます。そして――。
「この力が――私の力が、《黒い姫》様の世界を守る剣になるなら！」
ゆいが念じると、力が、ポップコーンのように弾けました。
なお、ポップコーンが弾けるのには、水と水蒸気の体積の違いが関係しており――。
※
「ありがとう、二人とも。これで、この世界の平和は守られたわ」
《黒い姫》は、力を合わせて獣達を打ち倒したゆいと少女のことを讃えました。
「ゆい、あんたの力は、素晴らしいものよ。これからもその力を、私のために使って頂戴」
「はい、必ず」
頷くゆいを、少女は柔らかな眼差しで見つめています。
２人はこの先も、永遠に《黒い姫》の傍に在るのでしょう。いつまでも、幸せに……、
大天使 天吏は、図書館で、小説のクライマックスの執筆に当たっていた。
「……あ！」
知った声に、顔を上げる。
腕に本を抱えた犬杜 初が、顔に喜色を乗せて天吏の元へと歩み寄ってきた。
「あら、初ちゃんじゃない」
「びっくりしたぁ。こんなところで会うなんて。……あれ？ これって……」
初の眼差しが、天吏の手元の原稿用紙を見留める。
「ああ、これはね、小説を。論文とはまた違って難しいわ。空想なんて、科学からかけ離れた存在ですもの」
「へええ、あんた、なんていうか多才なのね……え？」
感心していた様子の初が、不意に、固い声を漏らした。
「苺の、お城？ それに、このゆいって子……」
「ああ、そうなの。お話のネタがなくて勝手に初ちゃんをモデルにしちゃった」
「それは……別に、全然構わないけど……」
天吏の小説に目を通す初の表情が、軽く強張る。
けれど天吏は、そのかんばせに柔らかな、それでいて有無を言わせぬような笑みを湛えるのだ。
「大丈夫、心配しないで。ちゃんと初ちゃんを幸せにしてみせるわ」
初が帰ったあとで、天吏はひとり、呟きを落とした。
口元には、笑みが乗っている。
天吏の心の在り処を知るのは、恐らくは、彼女自身だけ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年01月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年01月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年01月26日 11時00分
