機導戦歴ネコジマ｜リアクション

機導戦歴ネコジマ

■人類の明日のために、既に消え去った肉体たちのために
　浮遊都市ネコジマ、中央管理塔、巨大ブリーフィングルーム。
　この場には大量のアンドロイドたちが集められ、すりばち状の座席が埋まっている。
　彼らが注目するのは中央の円卓についた約十人のスペシャルなアンドロイド。その、プライベートボディたちである。
　アンドロイドの中でごく僅かに覚醒するという『メモリー持ち』と呼ばれる朝鳥さゆる、嘉島和穂、仙藤蒼、椿美咲紀、水守流のＰＰＩアンドロイドたち。
　そして同じくメモリー持ちでありながら作戦の統括責任を負うことの多い戦艦型、白真白と八神修のＰＰＩアンドロイド。
　更には高性能実験機、新田樹ＡＩ、新田亮ＡＩ。
　メモリー持ちとして知られている骨削瓢もスペシャルに数えられてはいるが、彼の場合自我をロックされているため、ここには参席していない。
「集まって貰ったのは他でもない。かのアンノウン・レイが出現した」
　会場がざわつく。
　レイの出現は必ずといっていいほど災厄を伴う。
　いや、災厄に際してのみ現われると言った方が正しいか。
　彼の目的は分からないが、少なくとも何か大変なことがおこるだろうことだけは、会場の誰もが察することができた。
「あの夏神零ＰＰＩアンドロイドがどうしたの」
「そのパーソナルパターンかどうかの確証はないんじゃないんでしたっけ」
「永久欠番になってるパーソナルパターンはそれしかないんだから、確定したようなものでしょ。ね、そう思うでしょ？」
「どうでもいいわ」
「確かに、誰かはどうでもいいのです。肝心なのは……」
　口々に語る女性型アンドロイドたち。
　ナガレとリョウは肩をすくめて、オサムとマシロのホログラム体にアイコンタクトをした。
　テーブルの中央にチップを出現させるマシロ。
「レイが残していったチップを解析したところ、竜宮接近の情報を見つけました」
「「竜宮……！」」
　会場のざわつきが更に大きなものとなる。
　ケダモノの群れ。
　それもほとんどの確率で特級指定個体を含む群れである。
　大きなホログラム体を投影して場内のアンドロイドたちを見回すオサム。
「それも大軍隊だ。ヨルムンガンド、ピュートーン、ニーズヘッグ。この三体が別々の方角から浮遊都市ネコジマを目指している」
　ざわつきは。
　雨脚が過ぎるがごとく。
　やんだ。
　もはやざわつくどころの事態ではない。
　皆、同じ顔つきをしている。
「全面戦争だ。今から部隊を三つにわけて同時決戦を仕掛ける」

　そうして組まれた新たなアンドロイド軍隊。
　戦艦『八神』にてピュートーンと戦う西方軍には――オサム、ミサキ、イツキ、リョウ。
　戦艦『真白』にてヨルムンガンドと戦う東方軍には――マシロ、アオイ、ナガレ。
　戦艦『ＮＮＫ』にてニーズヘッグと戦う北方軍には――ヒサゴ、カズホ、サユル。
　ニーズヘッグ戦にはレイの介入が予測されており、ヒサゴはもしもの時の保険であった。
「述べるべき言葉はいくつもあるが、あえてこれで締めよう――『人類に栄光あれ』」