浮遊都市ネコジマ。
飛空艇発着港のベンチにて、
薄野 五月は古びた本を開いてた。
「いまより七百年前、人類は絶滅しました。
大地より
ケダモノたちが現われてから、一日で国が潰え、三日で大陸はえぐれ、一週間で人類は大地から消えました。
99%の人類を犠牲に、残る1%は都市を空に浮かべ、逃げ延びました。
99%の人類を犠牲に、残る1%は肉体を機械化して、生き延びました。
そして今も、ケダモノたちとの戦いは続いているのです」
浮遊都市ネコジマ。
中央管理塔観察室にて、
黛 結は機械のまぶたでぱちりと瞬きをした。
「
竜宮の接近を確認。
到着まで82時間。
構成――蛟級(コキュウ)1200、蟠級(バンキュウ)800、応級(オウキュウ)18。
特級指定個体を三体確認――ヨルムンガンド、ピュートーン、ニーズヘッグ。
先遣部隊を下げますか?」
浮遊都市ネコジマ、より南方5キロメートル地点。
飛空戦艦NNK第十七砲塔にて、
夏神 零は眼前に広がるケダモノの群れを観察していた。
大地をはう巨大なミミズ、猛牛、蜘蛛、島のごとく巨大な飛行する亀。その上にしがみついて浮遊都市を狙うあれや、これや。
「敵団を肉眼で確認。これより陸戦装備で迎え撃つ。ボディの換装を急げ」
相手側からの応答を受けつつ、零はポットの中へと入っていった。
「心配ない。
我々アンドロイドはみな、数百年の間に人間だった頃の記憶を破棄した。しかし魂ともいうべき部分に記録された
メモリーが、我々の機能を格段に引き上げる。
それが、ケダモノたちを倒す最後の武器となるだろう」
「「人類に栄光あれ」」
戦闘用ボディに意識を乗り換えたアンドロイドたちが、戦艦のハッチより次々に飛び立っていく。
鋼に包まれた人類は、生き残りをかけて今日も戦う。
ごきげんよう。こちらはアンドロイドとバケモノが戦う未来都市――を舞台にしたらっかみIFシナリオです。
普段のらっかみ時空とは異なる、鉄と油と魂のにおいをご堪能くださいませ。
未来人類アンドロイドと、人類の敵ケダモノ
この世界では人類のほとんどが絶滅し、土地や文化や記憶といった様々なものを放棄しました。
そのかわり、機械の身体にデジタル保存された数十パターンの人格データをインストールされたアンドロイドとして生き残っています。
浮遊都市ネコジマに全てを詰め込み、数百年間籠城を続けてきました。
人類滅亡の元凶ことケダモノは大地を支配し、ごくわずかな種は飛行能力を得て浮遊都市壊滅を企てようとしています。
今回はそんな大事件のひとつ、『竜宮襲来事件』を舞台としています。
アンドロイドとメモリー
みなさんはアンドロイド(正確にはアンドロイドにインストールされたデジタル人格)となり、都市に襲来するケダモノたちと戦います。
アンドロイドの戦闘用ボディには未来技術の粋が詰め込まれており、身体そのものが兵器として機能します。
人間とかわらない見た目の者もいれば、戦車に人格を詰めた者や、戦艦に自分を埋め込んだ者もいます。
ここにレギュレーションはありませんので、IF世界らしく趣味に走ってしまってください。多少偏っていても、あとは書き手が何とかします。
そんなアンドロイドの中には、人間だった頃のメモリーを残している者がいます。具体的にはプレイヤーキャラクターたちです。
彼らはメモリーを使用することで本来ではありえない計算速度をはじき出し、オーバーブーストされた機能で戦うことができます。
メモリーとは……そう、あなたがアクションに添えて設定する、『イラスト』です。
あなたのイラストが、あなたの切り札となるのです。
※なかにはロボっぽい自分を描いたイラストを挿入したい方もいらっしゃると思います。
その場合は『メモリーはないがきわめて高性能なアンドロイド』となることが可能です。アクションの中でそのように書いて頂ければばっちりアドリブしますので、ぜひぜひ
竜宮のケダモノ
浮遊都市を狙うケダモノの群れ。
その多くは飛行能力を持たず、大地を突き進むのみです。
都市を守る軍隊は無数の戦艦を差し向け、これを迎撃しようとしています。
皆さんはこの一員となっていることでしょう。
元々軍人だったのか、この戦いのために雇用された傭兵か、サポートを目的とした人員か。
みな戦艦にスタンバイされた戦闘用ボディに意識を転送し、戦いへと赴きます。
竜宮とはケダモノの群れをさす用語です。
生まれたばかりで大抵は飛行能力をもたない蛟級。
成長し力をもち、一部は飛行能力を有する蟠級。
高い戦闘能力をもった文字通りのバケモノ、応級。
そしてその中でも特に危険とされる特級指定個体。
今回確認されている三種について解説しましょう。
ヨルムンガンド――巨大な翼竜。アンドロイドの身体を破壊させる光線を口から放つ。
ピュートーン――大地をはう大蛇。体表から放つガスはアンドロイドの意識を錯乱させる。飛行能力を有するが、はうほうが早いので主に地上を移動する。
ニーズヘッグ――浮遊する巨大亀。背に大量のケダモノを乗せ浮遊都市への上陸を目指す。