８０００文字探偵｜リアクション

８０００文字探偵

■名探偵、伊藤美緒！
『私の名前は伊藤美緒。ひとは私のことを灰色の脳細胞……略してハイボールと呼ぶ。ルはどっから来たのよ、ルは』
　陽光のさすテラスで、円形の白いカフェテーブルにむかうツインテールの美少女がいた。
『今日も私のもとに、難事件が舞い込もうとしているみたいね』
　ティーカップをそっと持ち上げる美少女っていうか美緒。
『どんな事件もこのわた――』
　の、横に置いてあったラジカセ（ラジオチューナーとカセットテープレコーダーが合体した最高にナウいヤングアイテム）の停止ボタンを、刑事がかちっと押した。
「探偵、自分のナレーションを自主再生している場合じゃ無いぞ。事件だ！」
　お茶に一度だけ口をつけると、美緒はキリッと目を光らせた。
「わかったわ、行きましょ」

　――アイキャッチのために用意されたスポーティーな美緒ちゃんのピンナップを脳内再生しよう

「これは、ひどい現場ね」
　ハンカチを口元に当てた美緒に、刑事（そういやこいつ誰だろう）が難しい顔で語った。
「被害者はサンマ先輩。今朝方家庭科室で死んでいる所を発見された。凶器は恐らく腹部に刺さっている包丁だろう。あと周りでピクピクいってるのはノリで服毒した連中だから無視していい」
「あと僕が犯人だよー」
　血まみれの包丁を握ってぬぼーっと現われるマンボウくん。
　二度見する刑事と美緒。
「さしころしたよー」
　三度見する刑事と美緒。
　刑事たちがあたふたしていると、美緒は眉間をもみつつ手を掲げた。
「ちょっと待って。マンボウくんさん（非誤字）は包丁で刺し殺したと言っていたわね。その場合激しい返り血を浴びたはず。それがすこしも残ってないってことは、きっと他に犯人がいるはずよ」
「それは綺麗に洗い流したんじゃ……」
「しゃらっぷ！」
　刑事にデコピンかますと、美緒は決め顔で言った。
　あとツインテールのさきっぽを人差し指にくーるくる巻き付けるやつをやりながら言った。
「この事件……異邦人探偵、エルキュール・美緒がびしっと解決してみせるわ！」
「ハイボールどこいった」

　――アイキャッチのために用意されたお風呂上がりな美緒ちゃんのピンナップを脳内再生しよう

　美緒は走った。
　事件の真相を求め、学内をくまなく走り回った。
　早く真犯人を見つけなければ、罪も無いマンボウくんさん（非誤字）が逮捕されてしまう。
　そしてたどり着いたのは、バレーボール部の使うシャワールームだった。
「返り血を浴びたならそれを洗い流している筈。きっとその痕跡が残っている筈よ。いざ――！」
　カーテンを開く！
　全裸の男子高校生が振り返る！
　両手で乳首を隠す男子高校生！
「「キャー！　ヘンターイ！」」
　美緒は両手で顔を隠しながらシャワールームからダッシュで飛び出した。
「花も恥じらう乙女探偵ヴァージンロード・美緒になんてもの見せるのよ！　切腹だわ！　この世の男子高校生みんな切腹だわ！」
　いたずらにえん罪を広げる美緒。だがそんな彼女の脳裏にヒラメキがはしった。
「ハッ……！」

　――アイキャッチのために用意された冬服装備な美緒ちゃんのピンナップを脳内再生しよう

「みんな、よく集まってくれたわね。大事なお知らせがあるの」
　美緒はツインテールを指でくーるくるやりながら言った。
「実はもう……このパートの尺がないのよ！」