８０００文字探偵｜リアクション

８０００文字探偵

■黒猫探偵、八神修！
「俺の名前は黒猫ホームズ。愛しいネコ、ブラックとともに事件に挑む。今日もどうやら難事件が舞い込んできたようだ」
「探偵ー！　探偵ー！　なにドラマのオープニング風にナレーションしてるんだ！　事件だぞ！」
「ああ、今行くよ」
　修はブラックの背をブラッシングしながら、優雅に振り返った。

　訪れたのは寝子島高校。その家庭科室である。
「学校での犯罪か……なるほど、それで被害者は？」
「ああ、彼だ」
　刑事に連れられてきた家庭科室。その……なんていうの、料理とかするのに便利なあのでかい台？　の上にサンマ先輩がどべーんと寝転がっていた。
「いや、授業で使う食材ではなく被害者を」
「だから彼だ、サンマ先輩だ」
「失礼……」
　修はキュッと白い手袋（高級品）をはめると、チャッと虫眼鏡（高級品）を取り出し倒れたサンマ先輩（高級品）を観察し始めた。
「発見時刻は今日の朝、仕事を始めようとした家庭科の教師が発見者だ」
「その教師というのは……？」
「はい、私が発見者の教師です」
「はい、ぼくが犯人のマンボウだよー」
　すちゃっと手を上げる発見者と犯人（マンボウ）。
　修は立ち上がり、ぐーっと背伸びをして、そして眉間をゆっくりともんでからもう一度振り返った。
「で？」
「犯人だよー」
「そういうことなんだ、探偵。その……なに……犯人、わかっちゃったから、ね、今日はここで」
「ちょっと待ってくれ！」
　一度視線を戻してからもっかい振り返るというアクションをはさみ、修は決め顔を作った。
「不自然だと思わないか？　すぐに気絶するマンボウくんが殺人なんておかすはずもないというか考えた時点で気絶しているはず！」
「たしカニ（納得できる事柄があると混入するカニの一種。お刺身が美味い）！」
「それにここで終わらせたら今日のリアクションが俺とブラックがたわむれているだけのイメージビデオになってしまう！」
「たしカニ（納得できる事柄があると混入するカニの一種。日本海に生息する）！」
「この事件……俺がリアクション一本分もたせてやる！」

「こうして俺とブラックの調査は始まった。ブラックは鼠や猫たちに、俺は生徒や教師たちに聞き込みを行なう。そして徐々に明らかになっていく真実。やはりマンボウくんは犯人じゃない。真犯人を見つけ出し、使われたトリックを解き明かすんだ」
「探偵、探偵！　ナレーション風に語っている場合じゃないぞ！」
「どうした……！」
「尺が、もうない！」
「なんだってだからあれほど事件前のシーンはカットしておけと言っ――」

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