８０００文字探偵｜リアクション

８０００文字探偵

■名探偵、鳴神師呉！
「待ってください、この事件……俺に任せてくれませんか！」
　悩みすぎて黒板に六芒星を書き始めた緑のもとに、探偵っぽいあの、マント？　みたいな？　やつ？　を靡かせながら一人の少年が現われた。
　パイプでボールをフーフー浮かせ、探偵っぽいあの、なに、ぺたーんってした帽子（ハンチング帽っていうよ）を被った少年は……逆光の中で手のひらを突き出した。
「このままではイメージボードをただ広げるだけで残り文字数を埋め尽くしてしまう。けれど俺が来たからにはもう大丈夫だ。この俺が……リアクションの残り三割をもたせてやる！」

　全員が集まった家庭科室。
　そこで師呉はかけても居ない眼鏡をちゃきっと直した。
「皆さん、いいですか。まずこの事件の犯人はマンボウくんじゃ……ありません！」
　言い切る師呉に、その場の全員が振り返った。
　カッ（ネコを撫でていた修）
　カッ（花にお水やっていた美咲紀）
　カッ（血まみれのナイフを拭くサキリ）
　カッ（この場で漫画原稿を書き始める来夢）
　カッ（フライパンを振る樹）
　カッ（ピンナップ用のポーズをする美緒）
　カッ（サングラスかけて帰ろうとした緑）
「真犯人はあなたですね――アジくん！」

　そして師呉による再現映像が始まった。
「青魚系マスコットキャラとして有名だったアジくん。しかし脂のノリがよく何かと季節に乗って売れていくサンマの地位をひっそりとうらやんでいた」
　四畳半のアパートで『サンマチョベリバ』と和紙に墨汁で書き続けるアジくん。
「そんなある日、テレビ中継でサンマ漁が流れ――」
　テレビを見たアジくんが振り返ると顔にめっちゃ隈取りがされていた。
「ハイ殺意！」
「殺意軽いなあ」
「俺も青魚だ。ＤＮＡも豊富に含んでいるのになぜ！」
「アジは栄養が豊富だからな」
「そしてアジくんは犯行に及んだのです。まず窓から侵入したアジくんはなんやかんやでサンマ先輩を殺害」
　ぼーっと明後日の方向を見ているサンマ先輩の横に回り込んで包丁をざくりとやるアジくん。
「サンマ先輩無防備すぎる」
「そしてなんとなーく現場に現われたマンボウくんに催眠術をかけたのです」
　マンボウくんの前で五円玉をめっちゃ揺らすアジくん。
「なんて卑劣な……！」
「そんな簡単にかかるかな」
「催眠術にかかったマンボウくんは自分が殺したと思い込み、あとは部屋をなんやかんや密室にして出て行ったのです」

「ちょっと待ってくれ」
　出てきたばかりでキャラがブレブレのアジくんが両手を翳した。
「俺はそんなことしてない。大体説明が曖昧すぎるぞ、なんやかんやってなんだ！」
「なんやかんやは……」
　カッ（ネコにご飯をあげてた修）
　カッ（先にハンバーグ食べてた美咲紀）
　カッ（血まみれのナイフを素振りしまくるサキリ）
　カッ（編集さんから逃げるべく窓ガラスをクロスアームで割る来夢）
　カッ（ハンバーグに醤油をかけはじめる樹）
　カッ（ピンナップ用のメイド服を着る美緒）
　カッ（美緒と一緒にピンナップをとろうと着替える緑）
「なんやかんやですよ！」

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