復讐のノーズグラス！　～眼鏡は俺の敵～｜リアクション

復讐のノーズグラス！　～眼鏡は俺の敵～

●忍びよる悪魔

　――その日は、いつもの学校生活になるはずだった。
　毎朝目にする登校風景、友人との他愛もないおしゃべり、少し個性的な先生たちの授業。
　そんな変わりない一日が訪れると思っていたのに。
　いつから歯車が狂ってしまったのだろう。
　どうしてこんな事になってしまったんだろう。
　物語は、狂気に包まれた一人の人間が紡ぎ始める。
　嗚呼、どうして人間はこんなに罪深き生き物なのだろうか。

※やや誇張ある表現が存在します。

　事件はそこから始まった。
（何だ、これは）
　鷺守昴は愕然とした表情で自分の机を見下ろす。
　どれだけ目を見開いても目の前にあるのは――鼻眼鏡。
「鷺守？　呆けたような顔してどうした？」
「眼鏡に、鼻とひげが……」
「えっ」
　昴の肩越しに覗きこむと確かに鼻眼鏡が。声をかけた御剣刀は衝撃を受ける。
「……ああ。何か出し物とか……あったっけ？」
「ない」
　即座に否定の言葉が投げられる。じゃあ何故こんな物を鷺守が。
「鷺守、そういう趣味が……」
「違う！　いつの間にか僕の眼鏡にこのようなものが付いていたんだ！」
「お、落ち着けって」
　大声に、周囲が俄かにざわつくのを感じた刀は人差し指に口を当てる。
　ぼやけた輪郭を睨んでいた昴は緑の瞳をいったん閉じた。
　そうだ、ここで八つ当たりしても仕方がない。
「いつの間にかって……鷺守の眼鏡本体に鼻とひげがついたってことか？」
「ああそうだ。しかも磨こうと出した予備の眼鏡にまで……」
　ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
　この眼鏡は高校入学祝いに祖父から贈られたものであり、心から大切にしているものだ。
　それをこんな、こんなふざけた姿に……！
「……屈辱だが、このまま授業を受けるしかない」
　こんな理由で休むことなど出来ない。そう言って鼻眼鏡と変わり果てた眼鏡を装着する。
「許さないぞ犯人……ただで済むと思わない方がいい……！」
「……何か手伝えることがあれば言ってくれ、な？」
　ファンキーな外見とは裏腹に、刀は昴の背中に修羅を見たような気がした。

「プークスクス！」
　ばっと振り向かれるのを察知し、桃原空音は咄嗟に顔を逸らした。
　せっかく面白い物を見られているのだ。機嫌を損ねて外されてはつまらない。
（真面目系キャラが鼻眼鏡だなんて！　…ブフッ）
　記念に1枚、遠目からぱしゃり。やばい腹筋がひきつって手ブレする。
（やば、これ楽しすぎるんだけど！　今日は鼻眼鏡デーとかそんなのなの？）
　こういうときこそ、ねこったー。
　画面を開けば、ＴＬ上に案の定鼻眼鏡の話題が出ていた。
　その中でも目に留まったのは、元々眼鏡をかけている人だけがこの被害にあっているという事。
　ということは……眼鏡キャラ全部鼻眼鏡？　桐島せんせーも生徒会長も鼻眼鏡？
「あははははは！」
　これは見に行くしかない。
（撮影撮影撮影なのだだだだだー！！！）

このページにイラストを設定する