ヒットマンズカーニバル｜リアクション

ヒットマンズカーニバル

■プロローグ　１０人の殺し屋たち
　車の行き交う大通りから二本外れた裏通り。
　スニーカーにヘッドホン。ハンドポケットで歩く青年の姿があった。
　じゃり、と踏んだアスファルト。青年、霧谷朧は中古ゲームショップの前で立ち止まる。
「さーて、今日はどんな掘り出しモンがあるかね」
　ヘッドホンを外すと、朧は店内へと入っていった。
　古びた店内はすれ違う幅すらない有様で、ライトすらまともについていない。レジカウンターには編み物をする老婆がひとり。客の姿は、恐ろしく少ない。
　壁一面にぶら下げられたレトロ携帯ゲームのロムカセットを見つめて、朧は苦笑した。
「ばーちゃん、最新のゲーム置こうよ。せめて一世代前のやつくらいはさー。くっそ寂れてんよここ」
「うるせーガキぃ。買わねーなら帰んな」
「はいはい、買うから買うから」
　朧がレジカウンターに差し出したのは、古いゴルフゲームとパズルゲーム。ただでさえ売れない商品の中で、ひときわ売れそうに無いものだ。
　老婆はそれを一度レジの裏に下げると、紙袋に入れて朧に渡した。
「五百万円」
「あいよ」
　五百円玉と袋を交換し、朧は店を出た。袋を開け、カセットを取り出し、爪を引っかけて外装を外す。すると、中からメモリーカードが現われた。
　スマートホンに差し込み、データを開く。
「……うげ、金持ちの道楽かよ。こりゃ凄腕揃いだ。ちょいと下準備しますかね」
　そう言って、朧は再び歩き出す。
　不可視の殺し屋、『ウィスプ』。
　素顔も殺し方も何もかもが不明という、伝説の殺し屋である。

　暗黒都市ネコジマシティに根を張った１０人のヒットマン。
　彼らに下されたのは『自らを除いた残り９人の抹殺』である。

　不可視の殺し屋――霧谷朧。
　眠らせ姫――椎井莉鳥。
　ランベールファミリーの次期頭――ジュスト・ランベール
　秘密の花園――椿美咲紀
　ゴールドソーサー――八神修
　表通りのシカリオ――七峯亨
　鬼の執行人――矢萩咲
　自由闊達少女――新田樹
　人形回し――骨削瓢
　人斬り刀――御剣刀

　どれも一級。他９人を殺しうる実力と才能を備えたヒットマン。
　今宵始まるは最凶最悪の饗宴。

　ヒットマンズカーニバル

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