朝日に消える幽霊｜リアクション

朝日に消える幽霊

●寝付けない夜に

　普段は９時半には床に就く三宅葉月だが、妙な胸騒ぎがして寝付けずにいた。
　寝子高で朝日に消える幽霊のことを聞いたから。あるいは、何かに誘われるような感覚をおぼえたからか。
　幽霊の噂話に。興味がないと言えば嘘になる。
　胸騒ぎの原因は噂話にあるかもしれない。
　そう思うといてもたってもいられなくなり。星ヶ丘寮を抜け出して九夜山へ向かう。
　その頃、響タルトは同室の友達に寮の門限を誤魔化してもらうことに。
「ありがとう。このお礼は必ずするから！」
　こっそり寮を抜け出し、九夜山に向かい走り出した。

　葉月が懐中電灯を手に寮から少し離れたところで「女の子の夜歩きは危ないね」と、背後から男性の声が。
「ごめん、驚かせたみたいだね」
「いきなり声をかけるからでしょ」
　工藤来夢のツッコミにごもっとも、と振り返った葉月に謝る薄羽白露。
　九夜山に幽霊を見に行くと白露が言うので、葉月は「ご一緒していいかしら？」と尋ねた。
「君も幽霊を見に行くんだね。いいよ、一緒に行こう」
　誰かと行くほうが安全よ、と同意する来夢。
　行こうか、というところで、タルトが３人にばったり。
「あ、三宅さんだ。九夜山に行くの？」
「壁画作りでご一緒だった響タルトさんね。妙な胸騒ぎがして眠れなくて……」
　何故そうなのか自分でもわからないが、九夜山に行けば何かわかるかもしれない。
　そう思い、葉月は行動を起こした。

　噂話を聞いた葉月は、気になったので噂話の情報収集、石や九夜山の伝承、言い伝えを事前に調べていた。
　石についての話は、寺の住職から聞いた白露とタルトは知っていた。
　九夜山の伝承に、出漁したまま帰ってこない恋人の帰りを待っていた女性が衰弱死し、幽霊となり、再会を約束をした九夜山に姿を現すというものがある。
「約束の場所に留まりたいと願う幽霊と共鳴した蜃気石が、妖力を与えたのかな？」
　葉月の話から、そう推測する白露にタルトもそうかも、と頷く。
「何にせよ、それが幽霊第一号ってことね！」
　悲しい女幽霊と妖怪。これをうまく活かせば十分ネタになるじゃない！　と来夢はネタを考える。
　恋愛話にするべきか、ホラーにするべきか。それが問題だ……と思いつつ。

　話し込んでいるうちに、一行は目撃現場に辿り着いた。
「ボーッと待つよりは、有意義な時間が過ごせそうね」
　一番乗りした来夢は、幽霊が見えるまで他に何か情報がないの？　と同行者に聞き込みを。
　聞いた話は何でも漫画のネタにしてみせる！　と意気込んだ表情で。
　白露とタルトは、目撃現場にある蜃気石のことを話してくれた。見たいと望む幻を見せる力があるのだとか。
　見たいものを見せる妖力を持つ石、これはネタに使えるわね！　と来夢はメモる。
「……あそこにある石には、そんな力があるのね」
　だとしたら、会いたいと願うあの人が見えるのかしら、と葉月は思った。