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まかい探訪記
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「そう、決して森に入らないでおくれ」
震える息を吐き出し、震える指先でまものずかんの頁に触れる。長い長い年月を掛けて蒐集し続けてきた物語を、この目に捉えたまものたちの姿かたちを辿れば、慄く心は少し平穏を取り戻した。
恐ろしいまものを解き放ってしまった愚かな詩人に対し、機械の子たちは構わず次の物語をせがんでくる。物語をただの物語と片づけたのか、それとも、
――そろそろ帰れ、と言ってるんです
不意に、森で出会ったシルフの少女の尖った声が耳朶に蘇った。
まもの喰いを解き放ち、恐怖のあまり無様に森を逃げる私の前に、彼女は突如として現れた――
風が降った。
「そこの変なフード、即刻この場を立ち去りなさい」
つむじ風と巻き上げた木の葉を華奢な身に巻き付かせ、上空より音もなく降ってきたのは、
緋色の髪の乙女
。
「風が変な振動をしているから、見に来てみれば……」
毛先にゆくにつれて緋から翡翠へとその色を変える髪を風に遊ばせ、風の乙女は不機嫌に瞳を細める。薄い胸元を帯のように抑える茨の飾りが鞭のような不穏な音をたてて風を切った。
鬼火の如き蛍石の色して輝くその瞳に、けれど全身の力が抜けた。へたりこむ私の前、風を纏いし乙女はまるで水中を踊る動きで宙を滑り、気まぐれに仁王立つ。細い腰に両手をあて、茨のような眼差しで睥睨してくる。
「なんか、急に客人が増えましたね」
面倒な、とぼやくその声に、心底安堵した。
「風の結界でもはらないといけないのでしょうか……」
他者の来訪を嫌う言葉に思わず胸を撫でおろす。目の前の風の乙女には、少なくとも感情がある。感情を見せてくれる。
息を吐いた途端、空に嘶く風が瞬く間に降りて来た。身を薙ぐほどの暴風にはたかれ、吐いた息を飲み込む。悪夢から醒めたように周りを見回せば、昏い森には荒ぶる風雨が吹き荒れていた。
知らず嵐の只中に立っていることに、知らずずぶ濡れになっていることに首を傾げる。風の乙女は呆れたように息を吐いた。
「人の土地に入り込んで怒らせるの、今はやってるんですか? 侵入される度に嵐を起こすのも楽じゃないんですよ」
真正面から叱られて、それでも安堵が過ぎるあまりに笑みが零れた。
「もう、何なんですか……」
彼女の体は風で出来ているかようだった。投げ出すように風に背を預け、ベッドの端から足を投げ出すように不満げにぶらぶらさせる。子供のような無防備な姿を見せながら、彼女がひらり、手を振った途端。
嵐がぴたりと収まった。
「あーもー、面倒くさーい」
優しく涼しく揺れる森の梢に向け、風の乙女は駄々をこねる。故意ではないと言おうとしかけて、
「前も変な機械が入り込んできましたけど、今度は変なフードですか……」
彼女の言葉を耳にした途端、詫びのよりも先に『変な機械』と風の乙女との物語を乞うていた。
「えー……」
頼む、と頭をさげる。リュートを取り出し、物語を傾聴する体勢に入る。
「面倒な」
わざとらしいため息まじり、風の乙女は語り始める――
風がざわめいている。
眸を巡らせるまでもなく、侵入者であることは理解した。身を寄せていた祠から背を離し、風を纏う。身を宙に放つ。
世界樹の梢が風に鳴っている。
面倒な、と思った。
思うと同時、わが身を央に暴風を解き放つ。木々を激しく揺さぶり、木の葉を梢から引き千切り、荒ぶる風が森を駆け抜けて行く。風に呼ばれ、夜空よりも昏い暗雲が沸き起こる。空気を軋ませ、紫電が走る。
たちまちにして巻き起こる嵐に、知らず唇が笑みとなる。突然の嵐に襲われれば、侵入者たちはいつだって尻尾を巻いて逃げ出した。朽ちた祠にも、祠を依代とする風の精霊族の存在にも気づかずに。
今度の侵入者も、嵐に追われてこの領域から逃げ出すものと思っていた。
面倒な、と今度は呟きが唇から零れて落ちる。
風に殴られながらも、侵入者の気配は真直ぐに祠へと向かってきている。
夜の闇と暴風に支配された森の空を渡る。
「止まりなさい」
気流を乱し、風を乱し、ただひたすらに前を向き歩き続ける黒髪のまものを見つけるなり、鋭く声を放つ。
「……この辺りに」
嵐の只中に立っているというのに、眉ひとつ動かさぬ涼し気な顔つきでそのまものは口を開いた。嵐の闇にあってさえ蒼白いその顔は、まるで仮面のよう。もしかすると表情を動かす機能を持たないのかもしれなかった。
漆黒のマントに覆われた屈強そうな体躯に、熱を感じられなかった。滑らかな被膜に覆われたその身は、風の精霊には知るべくもない黒い金属が使われている。鋭い光宿す眼ですら、人間のそれではない。
相対して、気づいた。このまものは機械なのだと。人でありながらその身のほとんどを機械と入れ替えた、人ならざるもの。最早まものとしか言い得ぬもの。
「『端末』を持つ者は、いるか……?」
「立ち去りなさい」
侵入者の言に、聞く耳など持ってはいない。それに、
「タンマツなんか知りません」
どのような理由で人から機械へと変貌を遂げ、どれほど昔から彼が『タンマツ』を探す使命を帯び、どれほど永く孤独の旅を続けていようとも、関係なかった。ただただこの領域への侵入者を許したくない一心で、風の力を掌に集める。
「立ち去りなさい」
放つ。渦巻く風は矢よりも早く飛び、侵入者の足元で爆ぜた。風が散る。地面が抉れ土塊が舞う。
威嚇攻撃の痕を見下ろし、まものが僅かに首を捻る。こちらを仰ぎ、二度三度と瞬く。攻撃を攻撃と認めていないかもような、最初から威嚇だと見破っていたかのような動きに腹が立った。
「次は吹っ飛ばします」
再度、今度はきちんと当てる腹づもりで風を掌に集める。
「覚悟しなさい」
言い放った途端、まものは右腕を掲げた。何かの儀式なのか駆動所作なのか、額を指でなぞる。額を覆う髪が揺れれば、そこには傷痕のようなものが見えた。
瞬間、右の掌に不穏な力が収束し始める。淡い燐光を放ち始めるその掌に、思わず身が強張った。
「神魂粒子放出式戦闘手甲……マナーモード解除」
まものは呪文じみた言葉を淡々と唱えている。
「粒子圧縮……チャージ……」
「ちょっと、待っ――!」
風を裂き、世界樹の梢を破壊し、一条の光が空へと放たれる。
彼女から聞き出した物語を一曲にまとめ上げ、語り上げる。
空を仰げば、空を塞ぐ世界樹の梢の一角、満天の星空に向けた窓のような大きな隙間が開いている。あれがおそらく、機械のまものが放った恐ろしい威力の一撃の痕なのだろう。
最後の一音を奏で、空中に寝そべり頬杖をついてとにかく大人しく耳を傾けてくれていた風の乙女を仰ぐ。
「えー」
森全体を覆いつくすような世界樹の梢とその隙間から見える満天の星空を背負い、彼女は唇を尖らせた。
「それじゃまるで私とあの変な機械が互角だったみたいじゃないですか」
違うのか、と問えば、違います、との断定が返ってきた。
「私の方が段違いに強かったに決まってます」
とは言いつつ、物語の改変を迫る気はないようだった。
「あーでも、あれは厄介でした。神魂粒子放出式戦闘手甲。きっとあれでどこかの誰かを救ったりやっつけたりしてきたんでしょうね」
リュートを爪弾き、一通り仕上がった機械人間と風の乙女との一幕をまものずかんに書き込む。
「
庚
」
面白くもなさそうに覗き込んできていた風の乙女が、思い出したように呟いた。
「庚、というそうですよ。あの変な機械。私のつけた傷が治るまでその辺に転がってました。まあもっとも、私も流石に疲れて同じように転がってましたけどー」
庚、と名乗った機械人のその後を問う。彼女の口ぶりからして、森の番人であるシルフと機械の旅人である庚が暫しの間をこの地で共に過ごしたのは確かだ。
「さあ? また一人で行っちゃったみたいですね。今もどこかで『端末』を探しているんじゃないですか」
突き放すような口調でありながら、彼女はどこか寂し気にも見えた。
彼女の名を問う。見上げる視界の中、風の乙女はどこか神秘的に微笑んだ。
「私は四大精霊が一人、シルフ――世界樹とともに生まれた精霊族です」
シルフ。そう呼ばれる精霊族のうちに、かつて勇者と呼ばれる者と共にまおうを倒した者がいた。まかいを旅する吟遊詩人であれば、知らぬわけのない抒情詩の一節を口ずさむ。
「もう、昔のことなど忘れました」
風の乙女はほんの僅か、懐かしむような寂しいような表情を見せる。
その横顔に、問いかける言葉を呑んだ。貴女こそが彼の勇者と旅をした風の乙女であるのか、そう問い質すことは如何にも愚かに思えた。
まおうを滅したはずの勇者の行方は杳として知れない。その仲間の行方も、また。
その仲間のひとりに、ここでこうして邂逅叶うとは思ってもいなかった。
伝説の一端に触れられた興奮のまま、彼女自身の物語を乞う。蛍石の光放つ眼差しを投げて後、彼女はついと森の奥を示した。
「いつしか森の番人のように思われていますが、それは違います」
白い指先が示すのは、森の緑に沈むように呑まれるようにして佇む古よりの祠。
「まあ……今まで多くの侵入者を暴風で追い払ってきましたが……」
木の根にも似た蔦が絡みに絡み、容易く再建も敵わなさそうなその祠が、風の精霊たる彼女の依代であり力の源であるらしかった。
「ここは、古くから私だけの土地ですからね」
昔はもう少し立派だったんですよ、と彼女は眼を伏せる。おそらくはその頃、風の乙女としての力も最盛期であった頃に、彼女は勇者と出会ったのだろう。
今はもう自然になされるがまま、放っておけばあと数十年もすれば祠は崩れて朽ちる。それと同時に、彼女も滅ぶ。
知ってしまえば、することはひとつだった。
「……何をしているんですか」
祠を覆いつくさんとする樹蔦を取り除き始める私に、彼女は呆れた声をあげる。そんなことをしても無駄だと。すぐにまた元通りに繁殖してしまうのだからと。
「そんな気まぐれな、戯れじみた祈りなんて不要です」
彼女の罵声を浴びながら、樹蔦の籠を少しでも取り払う。柱や壁にこびりつく苔を布で拭う。祠に収められた精霊の力の器に祈りを捧げる。
「……戯れに、外の話をしてくれませんか?」
ふと、シルフは息を吐いた。世界樹の高い梢に腰を下ろし、疲れたように瞼を閉ざす。
「魔力がなければ、私みたいな燃費の悪い精霊はかなり力が抑えられてしまうんですよ。最悪、戦闘を繰り返せば消滅です」
世界樹からほとんど無尽蔵に供給される魔力を祠に集め、精霊の器によって己の魔力に変換しているのだろう。彼女が自在に動けるのは、祠のあるこの場所に限られる。
「……勇者は、触媒を用意して連れ出してくれましたけどね」
それが出来るものは稀有だ。であればこそ、外の世界を自由に飛び回った記憶は、彼女にとってかけがえのないものなのだろう。
「他の四大精霊達は元気なんでしょうか?」
磨いた祠の前、世界樹の根に種を宿らせ伸びた薄紅の花を一輪もらい受けて供える。
四大精霊との邂逅は彼女が初めてであったがため、彼女の懐古に応えることはできなかったが、せめてもひとりきりで滅びを待つ風の乙女の無聊を慰めんがため、私はリュートを弾く。彼女の知らぬまものの物語を語り始める。
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3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
神話・伝説
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年09月10日
参加申し込みの期限
2017年09月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年09月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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