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概念召喚CGO ~大召喚舞踏祭~
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■壮大なるプロローグ 世界の主役たち
シーツの感触。枕のすこしごわごわした感じ。
なびくレースカーテンと朝陽。
ユーリ・ロッソ・ネーモ
は目を覚ました。
「ここは、どこ……?」
周囲を見回すと、ベッドによりかかるようにして眠る少女がいた。
息が止まるほどの美しさをもった少女だ。
ユーリの息が止まらなかったのは、少女という物体を見たのが記憶する限り初めてだったからだ。
「あっ、目が覚めたんだ」
少女が帽子を差し出してくる。
「道の前で倒れていたの。かぶっていた帽子に名前が書いてあるけど、これがあなたの名前?」
帽子を受け取って、ユーリは目を細めた。
まるでわたあめのようにふわふわとしていた頭の中身が、急速に埋まっていくのを感じた。
これはなんだろう。
あれはなんだっけ。
そんなことを思うたび、記憶の深い海から対象の記憶が引き上げられていく。
「そうか……そうか、おれは、『そう』だったんだ」
少女が不思議そうに首を傾げている。
ああそうだ、彼女にもちゃんと応えなきゃいけない。
「うん、おれの名前はユーリ。君の名前は?」
帽子を被り直し、ユーリは微笑んで見せた。
少女はにっこりと笑ってこう言った。
「アカリ」
大召喚舞踏祭。
全ての世界から集められた共通概念の最高峰『概念英雄』を召喚し、最後の一人になるまで戦わせる。それは世界の覇者を決めるための戦いだ。
ゆえに契約者の座を求めて争いが起こることすらある。
「おねこさま、一大事でございます!」
跪く貴族の男。
世界ネコたちに御神輿のように担がれていた籠がぴたりと止まり、すだれを上げて一人の少女が顔を出した。
頭にネコの耳がはえた少女だ。神事を行なうような服を着て、沢山のネコを従えている。
その名は
恵御納 夏朝
。
「どうしたの? 頭を上げて」
夏朝の呼びかけに、頭を垂れていた男はようやく顔を見せた。
「国が、召喚にあたっていた社や巫女たちが襲われております。このままでは契約者の座が……」
「…………」
召喚された概念英雄にとって、契約者の滅亡は勝利条件に関わらない。自らが神となるためであれば見捨てることもできるのだ。
しかし……。
「うん、いいよ。この世界に呼んで、皆に会わせてくれたから」
夏朝は指をついっと上げ、この世界で出会ったネコたちを呼び寄せた。
空を駆ける力をもった世界ネコが神輿をひき、ものを浮かせる力を持った世界ネコが神輿を掴む。
サンタクロースのそりもさながらに、夏朝は来た道を風のように飛び戻ってゆく。
一方こちらは夏朝を召喚した契約者たちの国。
霊山を囲むように広がる瓦屋根の建物に、次々と火が上がる。
「ケケケ、村も人も襲い放題とはモラルのない戦いですねぃ」
長い舌をちろちろと動かし、下半身が蛇となった不可思議なバケモノが笑った。
「概念英雄も初戦は『心ある誰か』。弱者を襲えば弱みを見せますよぃ」
翼を生やした覆面の男が、魔方陣を開いて大量の魔法爆弾を投下していく。
爆発に散らされるように逃げ惑う民たち。
両腕のガトリングアームを作動させ、民家を横薙ぎに粉砕する機械の男。
彼の腕が民の背中へ向けられた――その時。
「待て待て待てぇーい! 弱い者いじめたあ概念英雄のやることじゃねえな!」
突如現われた男が、機関銃の弾を全て背中で受け止めた。
変なドリンクを呑んでマッスルポーズをとってみせれば、怪我どころか傷跡もない。
「ダレダィ、オタクハ」
機械の男に問いかけられ、男はマッスルポーズのまま振り返る。
「俺か? 俺は
水守 流
。人呼んでカンストハンター流。そっちは…………えー……」
蛇男、翼男、機械男。それぞれを見てから『んー?』といって首を傾げた。
「どれが概念英雄だ?」
「おたくが死んだら教えてやるよぃ!」
次々と転がってくる油壺。
ひもじかけで倒れた燭台から炎が伝い、流の周囲で爆発した。
仮面をつけた悪代官が、扇で己を仰いでいる。
「どれ、死んだかな?」
「残念。爆弾は友達でな!」
樽でできた爆弾をサッカーボールのように蹴り飛ばし、悪代官にヒットアンドボンバー。
はびゃーといって爆発四散する悪代官。
「こいつぁたまげた。別の奴が釣れちゃあ計算があわねえよぃ。ここは一旦退却でござるよぃ!」
忍者風の男が地面にボールを叩き付けると、煙が辺り一面を覆った。
「ござるよぃ? なんだその口調! ごっほ!?」
むせながら煙を払う流だが、先程の集団はもうどこにも居なかった。
玉座。
オーケストラの演奏とはためく旗。
ここは暗黒谷にたった城。
たった一夜でできあがったというこの城には、ある概念英雄が住んでいる。
「女王様、支度が調ってございます」
跪く鎧の兵士。
演奏をそのままに、玉座の女は立ち上がった。
彼女は名を
空乃 アリア
。
一夜にして城を築き、百万の兵をたちどころに生み出した張本人である。
廊下の左右に控える兵士たちは槍を持ち、きをつけの姿勢を保っている。
全ての兵士は顔を覆ったヘルメットを被り、頭頂部にはネコミミのような飾りがついていた。
中身もそのまま、人に似た形に整ったネコである。
彼らは猫爪兵(びょうそうへい)。アリアがネコの爪に力を与えて生み出した傀儡の兵士たちだ。
「これがそう?」
ひとりの猫爪兵に案内された部屋に入り、アリアは水晶を手に取った。
水晶にはここではないどこかが映し出されている。
「はっ。遠見の水晶にございます。おかしな口調の男を倒し、手に入れたもののようで」
「持ち主のことなんでどうでもいいわ。便利そうね」
水晶をもって念じてみれば、自分の城の上空が映し出された。
魔王でも住んでいそうな、難攻不落の城である。
百万の兵が休まず守備につき、無数の罠が敵を阻む。
この水晶を持っていた者も、城に攻め込んできた謎の魔術師だったそうだ。それも一人で。
「けど、何かおかしいわね。軍を率いるならまだしも、そんな普通の奴がなぜ一人で……?」
断続的な銃声。地を揺らすような爆発。
燃えかすと鉄骨とコンクリートの残骸ばかりが残る町を、
ティオレ・ユリウェイス
はひとり歩いていた。
迎え撃つは黒いアーミージャケットを纏った軍隊だ。
「撃たない方がいい。撃った分だけ自分に当たることにした」
小銃による包囲射撃がティオレを襲うが、弾頭は彼女に当たる前に全て停止。まるでゴムでできた筒をひっくり返すように反転すると、それぞれ撃った本人に射撃時と全く同じスピードで飛び、身体のあちこちへと着弾。崩れ落ちていく。
「だから言ったのに」
倒れた兵士たちを見下ろすティオレに、無数のミサイルが白煙の軌跡をひいて殺到。着弾。爆発。
あまりの衝撃にそばのビルが傾き、自重に耐えられず倒れ、ティオレを下敷きにしていく。
「やったか!」
将軍と思しき男が立ち上がり、そして世界に僅かなノイズが走った直後、そこにいたのはティオレだった。
はっとしてビルのがれきを見やる兵士たち。ティオレの代わりに将軍が下敷きになっていた。もっとも人間の原型などとどめていないが。
おびえる兵隊の襟首を掴み、バッジに目をやる。
「貴様ら、我を召喚した国の軍隊か? なぜそんなことをする……ああいいわ、女王に直接聞く」
「む、無理だ。女王は遠く離れた場所に――」
兵士の話を最後まで聞くことはなかった。
なぜならその時既にティオレの位置座標は女王の眼前にあったのだから。
食事中の女王が慎重にナイフとフォークを置く。
「なぜ私を襲う? 国を挙げて私を守る約束のはずだったけど、逆転したのか?」
「その通りよ。我が国は、全国力をもって『あなたを殺す』約束をしたわ」
目を細めるティオレ。
何もおかしなことは言っていないという目をする女王。
ティオレは手を翳し。
「考えを変えろ。あなたの国は私を全力で守る」
「……全力で守る」
「それでいい」
無理矢理国の方針を変え、そして背を向けた。
ティオレは平行する世界におけるティオレ概念の最高峰。ある宇宙を統べる力をもつ神々……その中でも頂点にたったティオレである。
故に宇宙に存在するあらゆる事象の原因と結果を決定することができ、その力を持ってすればまばたき一つで宇宙を丸ごと更新することすら可能であった。
そんな彼女を、一番理解しているはずの契約者が攻撃するはずがない。
「おかしい。他にも概念をねじ曲げている者が居る。他の概念英雄か……? だとしたら、恐らく……」
おそらく。
ティオレにとって最も脅威となる存在だ。
「女王。攻撃目標を指定する。全軍をぶつけて足止めしておきなさい」
大陸を超え、大気圏を抜け、宇宙を見ながら飛ぶ一本のミサイル。
重力にそってかたむき、そして再びのジェット噴射によって目標へと加速。
コメディ映画ではないのだ。大陸を超えて飛ぶミサイルとかいうものが数メートル範囲の目標に直接ぶつかるなんてことはない。
だが数キロ離れようとも爆発が半径数十キロを吹き飛ばせばそれでよい。
更に言うなら上空で爆発してくれればなお良いのだ。
が、ミサイルは爆発の寸前で停止した。
停止と言ったら停止だ。
薬物が正常に反応し爆発を起こし広がろうとしている状態のまま、空中で停止したのだ。
「あぶないなあ。ぶつかったら怪我しちゃうよ」
まるで小石でも飛んできたようなリアクションをして、
白 真白
はため息をついた。
ミサイルに向けるようにカードを翳している。カードには壊れた懐中時計の絵が描かれていた。
「攻撃者を特定するのは面倒だし、これでいっか」
続いて別のカードを取り出すと、ミサイルは逆向きに飛んでいった。
「これで、発射したひとのところにピッタリ着弾するでしょ」
るんるんと鼻歌交じりに進む真白。
が、そんな彼女を無数の人影が囲んだ。三角のずきんを被った魔術結社たちだ。
真白を召喚し、契約した人物たちでもある。
「ん、どうしたの? 何か困りごと?」
首を傾げる真白に、魔術師たちが一斉に攻撃魔法を唱えた。
それも己の命を代償にする禁術だ。これが常人であれば頭を破裂させて死に、家族友人ペットに至るまで同じように破裂する呪いが真白にかかったところだが。
「え、なに? 危ないなあ」
カードを翳すと、魔術師たちの呪術がなかったことになった。
文字通りの意味である。そんな禁術など、最初からこの世にない……ということになったのだ。
結果、意味不明の行動をするはめになったらしく困惑する魔術師たち。
真白は別のカードを翳すと魔術師たちを屈服させ、自らの味方に変えた。
「おかしいなあ。この人たちは最初に味方にしたはずなのに。私と同じ概念操作の能力をもった概念英雄がいるのかな?」
少しだけ考えて、真白は魔術師の一人を呼び寄せた。
「ねえ、私を攻撃するように言ったのは、誰?」
大地を走る獣。
翼のついた黒豹のようなこの聖なる獣は、名をカイという。
その背に跨がり、風に髪を靡かせているのは
卯木 衛
。
「カイくん、少しスピードあげようか」
後ろから追いすがる、下半身が馬の男や人面犬といったバケモノ連中から一気に距離を離し、天空を走って行くカイ。
雲を抜けた所で、黒髪をはやした巨大なドラゴンが眼前を遮った。
「おっとぉ、この先は通せないよぃ」
「だってさカイくん」
衛はたった一言。
カイが爪を僅かに走らせると、ドラゴンはその瞬間に絶命し、衛が手を翳すとドラゴンの肉体を構成するあらゆる物質が分子レベルで崩壊し、目に見えないほど細かい粒子になって散っていった。
「フハハハハハ! さすがは概念英雄。恐るべきチート能力よのぃ」
杖を掲げたローブの男。下に来たシャツには大きく『魔王』と書かれている。
「あっしの部下になれば世界の半分をや――ハァン!?」
衛が指先に生みだした小さな球形。それを飛ばすと、魔王らしき何かは巨大な水素爆発に巻き込まれて木っ端みじんになった。
「ったく。さっきからなんなんだ? 統一感のない有象無象が襲ってくるんだが」
このままではラチがあかない。
衛はカイに合図をすると、地面へと着地した。
ゾンビ、吸血鬼、鬼、悪代官、骨、スライム、サラリーマン、学生、幼児、透明人間、アンドロイド、蛇、毛虫、巨人、リトルグレイ風宇宙人……ありとあらゆる有象無象がカイと衛を取り囲んでいる。
「ヒヒヒ、おたくもここでおしまいだよぃ」
ピンクのナース服を着た男が注射器片手に言った。こいつが一番キツかった。
「なんなんだこいつら。世界観くらい統一しろっての」
衛は天に手を翳し、その場に暗雲を生み出した。人を殺すレベルの雷が周囲の有象無象に直撃し、ぎゃあといって吹き飛んでいく。
「なんかおかしいぞ、この戦争。一体何が起こってんだ……?」
指が白いデスクの表面を叩く。
「大召喚舞踏祭は過去にも幾度か行なわれた。例外なく歴史の闇に抹消されてきたけれど、『例外が無かった』のはその部分だけだ。この戦いは常に例外だらけだと言っていい」
窓の外。眼下に流れる雲。
VIP専用のシートに背を預けた
八神 修
は、アテンダントからコーヒーを受け取った。
「けれど、絶対的な基盤として、2は1よりも大きい。俺たちはそうなれる」
カップの数は二つ。
そのうち一つを、修は隣に座る
椿 美咲紀
に手渡した。
「それだって覆す概念英雄はいるのです。2が1より小さくなることもあるのが、シューくんのいう例外なのですよ」
涼しい顔で言う美咲紀に、修は左右非対称な顔をした。片方の眉だけ上げて、唇を逆向きに寄せる。
「ならこうしたらどうだろう。俺たちは『1よりも大きい1』だ」
「んー」
口をむすび、両眉を上げる美咲紀。
二人のリアクションが表情豊かなのは、飛行機の中で海外ドラマを見過ぎたからだ。
見過ぎた理由はなにかといえば。
「概念英雄(イデアヒーロー)、まもなくワシントンへ到着します」
ややあって。
修と美咲紀はワシントンの中心も中心、ホワイトハウス前へと降り立った。
彼らの前に交通ルールや常識といったものは存在しえない。
行きたい場所を望めばそこに行けるのが、概念英雄たるゆえんと言ってもいい。
現役大統領は彼らを歓迎し、オーケストラで出迎えた。
満足そうに頷き、タラップを下りる修――の脳天5センチの距離にライフル弾頭があった。
回転し、今まさに頭蓋骨を割る寸前である。
それが突如として消滅。
オーケストラを奏でていた楽団の全てが機関銃をもち修へ乱射を開始。
修は指先一つ動かすこと無く歩みを続け、彼を狙った何千発という弾は彼の半径1メートルの範囲で消滅していく。
回転しながら落ちてくる指揮棒をキャッチすると、修はまるで自らが地球の指揮をとるかのごとく降り始めた。
弾が楽団(?)の頭上に出現。消滅した時とまったく同じ速度でそのまま降り注ぎ、彼らは即座に無力化された。
両腕を広げてみせる修。
「大統領。賢くない選択だ。俺と合衆国は契約関係にあったはずだろう?」
「その通りだ。我々は約束通り、君たちを――」
大統領は笑顔で手を合わせ、開き、歓迎するように言った。
「抹殺する」
軍事機密のそのまた先にある透過迷彩によって隠れていた戦車や超静音ヘリが姿を現わす。
秒間何万という弾の集中砲火。
それが最新鋭の戦車であっても五秒で蜂の巣になるような攻撃に晒されて、しかし修は身じろぎひとつしなかった。
むろん、隣の美咲紀もである。
美咲紀はあろうことか眠そうにあくびをかみ殺すと、手を翳してぱたぱたと振った。
「すみません。タイムいいですかあ」
言った途端、全ての兵器が沈黙した。
否。全ての兵士が死亡したのだ。
一切の脈絡なく。原因もなく。ただ生命活動の停止という結果だけが生まれた。
その場に立っていたのは大統領だけである。
次々と落ちるヘリ。
腰を抜かしそうになる大統領に距離を無視して接近し、ネクタイを掴みあげる修。
横から覗き込んだ美咲紀が、あどけない顔で尋ねた。
「大統領さん。なんで私たちを攻撃するのです? だれかにそうしろって言われたんですか?」
「そ……そうだ……だからころさないで……」
顔が赤と青でいったりきたりしている。大統領は失神寸前だ。
「誰に、言われたんですか?」
「お、おぼえてな――」
パチンと指を鳴らす修。
ホワイトハウスが消えた。一瞬で、音も無く更地となった。
「思い出してくれ」
「し、白だ! 白い色をしていた!」
「正確に」
「思い出せないんだ……信じてくれ……」
大統領は涙を流しながら首を振った。スーツの下半身はもうびっしょりと濡れ、地面を汚している。
「髪の色だ。銀か、灰か、とにかく白かったんだ……」
修はネクタイから手を離した。
美咲紀は背を向けた。
たったそれだけで、ホワイトハウスは復活し、死んだはずの兵士たちは全て生き返り、撃ったはずの弾は火薬や雷管ごと元に戻っていた。
わけがわからないという様子で物をとりおとす兵士たち。
「シューくん」
「ああ、間違いない。概念英雄の攻撃だ。概念を書き換えるタイプか、洗脳タイプか……とにかく見つけよう。その『白い概念英雄』をさ」
拳が塔を大地ごと粉砕する。
タイに古くから伝わる寺院が木っ端みじんに吹き飛び、爆発の中から
七峯 亨
が飛び出した。
煙の中から巨大な鬼が姿を見せ、亨を掴もうと手を伸ばす。
「チッ、動きが愚直すぎるんだよ」
亨は突如としてその場から消えた。
否、豆粒ように小さくなって、鬼の指をすり抜けたのだ。
腕を超高速で駆け抜け、頬に膝蹴りを入れる。
体格差など『ヒトとノミ』だというのに、鬼は思い切り吹き飛び、大きな湖に足だけ出して沈んだ。
「鬼のあっしぃー! ええいよくもあっしを推理小説の犠牲者みたくしてくれやしたねぃ。これでもくらいなよぃ!」
天狗が葉っぱのような内輪を振りかざし、雷鳴をとどろかせる。
「いくら小さくても電撃までは避けられま――ギュウ!?」
人間サイズに戻った亨は、パンチ一発で電撃をはじき飛ばした。まるで飛んでくるボールをはねのけるかのようにだ。
「避けやしねえよ」
飛んできた岩を足場にして跳躍。物理法則をいくつか無視して飛ぶと、天狗の顔面に拳を打ち込んだ。
跡形も無く消し飛ぶ天狗。
着地した彼の横に、腕組みした
矢萩 咲
が立っていた。
「亨。我が相棒よ。あれを見てどう思う」
「ん……?」
咲に言われるまま振り返ると、雲を抜くような大男が湖を増やしながら歩いていた。
雲をかきわけてこちらをのぞき見る。
「おおう。おたくは魔神メガエラかぃ」
「そういう貴様は魔神ホネソギではないか」
「……知り合いか?」
亨に言われ、咲は小声で返した。
「私のいた世界で、『最強の』魔神だ」
「……」
何か言いたげだ。
最強の魔神は咲ではないのか、とか。
なぜ別世界の魔神がここにいるのか、とか。
「概念英雄か?」
「かもしれんな。同じ世界から三人も呼び出されるとは驚きだが」
その会話が聞こえたのか、魔神ホネソギはくつくつと笑った。笑ったことで気温が五度上がる。
「そう思えるのは幸せだねぃ」
踏みつけるように足を上げ、踏みつけるように足を下ろす。
彼が歩くだけで盆地がうまれ、山が生まれ、湖ができる。
対して咲は。
「神の名にふさわしい影響力だ。私など文字通り足下にも及ばないだろう。実に妬ましいよ」
拳を握り、突き出すのみ。
魔神ホネソギの足が叩き込まれる。
直後、魔神ホネソギは巨大な黒い光線に包まれ、跡形も無く消滅した。
「だから貴様は負けるんだ」
拳を突き上げた咲だけが、その場に残っている。
他には何も無い。
否、小さくなって彼女の胸元に収まった亨がいた。
「相変わらずのお手並みで」
「はさみつぶしてやろうか?」
「幸せな死に様だが、まだ早い」
ぴょんと飛び出し、サイズを戻して着地する。
「世界をこの手に収めてからだ。俺か、お前のどちらかが」
「お気づきのこととは思いますがあ」
槍が、貫いていた。
「私はねー、前置きとか無いんですよぉ」
屋敷野 梢
の槍が、
骨削 瓢
を貫いていた。
がたがたと震え、腕をゆっくりと持ち上げる瓢。
柄の部分を指でトントンと叩き、梢は首を傾げた。
「攻撃しようと考えた時には、既に攻撃は終わってるんですねー。そのまんまの意味ですよ? 地球の裏側で『あっパンチしよう』と思ったらもうパンチは対象の頭蓋骨にめりこんでいる。現状の説明は以上です」
槍を抜くと、瓢はふらふらと後じさりし、そして仰向けに倒れた。
南米の貧困街だ。とても概念英雄が住み着くとは思えないようなボロアパートの一室に彼はいた。
血が絨毯にしみこみ、広がっていく。
「な、なん……」
「なんで攻撃しようと思ったかですかー? んー」
梢は槍を杖のようについてよりかかり、考えをまとめていた。
考えた時には既に攻撃が終わっているという存在ゆえか、考えを最後までするというのが慣れないらしい。
「場所を特定するのも移動するのも、時間なんていりません。零秒です。けど存在を知らないと、攻撃手段を持たないと、実行はできませんよね。けどあなた……分割存在を世界のあちこちに放っていませんでした?」
魔神や鬼や、巨人やサラリーマンや、魔王や忍者や翼人間。
瓢は己と同じ概念存在をそれぞれの世界から呼び出し、実存させることができた。
目的を同じくする自分同士。瓢は協力し合って他の概念英雄たちをつぶしにかかったというわけだ。
神をも超えるパワーをもつ概念英雄たちには叶わない場合が殆どだが、ごく一部の同一存在には彼らに匹敵するパワーを持つ者もいる。それがいくつもいくつも合わされば、一人軍隊の完成である。
「けれど残念でしたねー。私には兵隊をかいくぐる時間も、王様に到達する時間も、それを調べる時間も零に等しいんです。私の攻撃対象になった時点で負けなんですよー」
「ひ、ひひ」
瓢は倒れたまま笑った。
「ひひひひひ」
目だけが梢を見る。
「あっしは瓢という概念の最高峰。けどあっしが死ねば『最高峰』は更新されますよぃ」
「それを零秒で殺すだけですよ」
「それがあっし本人だったとしても?」
「概念強化『異界の他者』」
途端、瓢は一億人に増えた。地球のあちこちに現われたのだ。
一億人の瓢は己の同一存在を再実存させた。
「あっしは世界にいくらでもいる。いくらでも生まれる。いくらでも増える。一秒前のあっし。二秒前のあっし。三秒前のあっし。その全てが、おたくの敵ですよぃ」
「……」
梢は走った。
零秒で五億人を殺した。
そのたびに瓢が生まれ、そのたびに殺し、そのたびに生まれた。
幽霊瓢が語る。
「読めましたよぃ。おたくの能力は『最速で攻撃をすること』。逆に言えば限界はおたく自身だ」
魔王瓢が言う。
「おたくが世界よりも早く動いた時おたくは世界の最速から外れてしまう。よって、世界よりも早くは動けない」
巨人瓢が告げる。
「あっしは、全世界のあっしという概念を全て消さなければ無くならないですよぃ。世界と同じ速度で増える、あっしをねぃ」
その全てを殺し尽くし、梢は血を吐き捨てた。
稲妻人間瓢に攻撃を受けたのだ。
一方で瓢は限界まで加速した梢に最後の一人になるまで殺されたが……逆に言えば最後の一人を殺すことはできなかった。それが彼女の限界。世界の速度だからだ。
「けどこれ以上殺されちゃあキリがありやせんねぃ。一時退却しやしょうかぃ」
魔方陣が生まれる。
「この絶大過ぎる力、他の概念英雄なんて敵じゃあないですねぃ」
無人島の上でブレーキをかけ、梢は槍を握りなおす。
「さてさて、どうしましょーかね」
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…
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3人まで
シナリオジャンル
バトル
神話・伝説
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年09月05日
参加申し込みの期限
2017年09月12日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年09月12日 11時00分
参加キャラクター一覧
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