this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
水底の廃墟
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
8
つぎへ >>
唇から零れた息が青銀の泡になった。
「えっ?!」
驚きの声を吐いて、慌てて両手で唇を抑える。手に巻き付く水の抵抗と、周囲の水に踊る己の雪白の髪に、
桜 月
は真紅の瞳を瞠る。
「何で?」
息を吐き尽くしてしまっても、苦しくはなかった。地上に居るときと同じように呼吸の適うことに安堵する。
夢、と思うには体に触れる水の感覚が確か過ぎた。水中に響く己の声が確か過ぎた。
(夢じゃないなら神魂絡みかな?)
ぐるりを囲む碧い水を見渡す。遥かな頭上には炎よりも紅い色を揺らがせる水面、眼下には不思議なほどに白い町。緩やかな丘に作られた町のそこここ、楽し気に行き交う人々の姿が見えた。
(まあ、危険はなさそうだし)
良いか、と判断を下してしまえば、己の置かれた今の状況が途端に気になった。
薄紅のワンピースの裾を人魚のように翻し、水底を目指し水を蹴る。あの町は、
(どんな所なんだろう?)
蜘蛛の糸のような空中回廊が張り巡らされる、白珊瑚の町。そこで生活をする、色とりどりの衣装を纏った人々。町があり、人が居るということは、そこには文化がある。服飾デザイナーを将来の夢に見据える月の瞳は好奇心に輝く。
(どんな物が生まれたんだろう?)
町を行く人々の衣装は、基本的に様々の色や意匠を織り込んだ布を帯で締めたもの。装飾を凝らした帯は男女様々の締め方があるらしい。
石畳の上に立つ。地上を歩くように歩を進めながら、月は興味の尽きぬ瞳を周囲に巡らせる。肩から提がっていた鞄を探れば、大抵いつも持ち歩いているノートと筆記用具が出てきた。満足げな笑みひとつ、月は目に留まった町の住人の衣装や女の髪を飾る紅珊瑚の髪留めを紙に書き込み始める。
薄紅のワンピースの裾と雪白色の髪を青の水の中に揺らし、ルビーの色した瞳の少女は足取りを弾ませる。
あちこちを飾る花や鉢の意匠や、ふと見つけた店先に並ぶ紅い珊瑚や蒼い鱗の装飾品、見慣れぬかたちと鮮やかな色した青果を次々に手にした紙に描きとめ、――見知らぬ町を行けば新しいデザインの糧を得られる気がして、少女はひとり、見知らぬ人々が笑いさざめく水底の町を歩き始める。
髪と同じ赤銅色の長い睫毛をゆっくりともたげる。その瞬間に、瞳へ飛び込んできた鮮烈な色に、
「っ、……」
獅子目 悠月
は思わず息を飲んだ。
花よりも空よりも鮮やかに深い、あおが体を包み込んでいる。
指先に触れる冷たさと優しい感覚に、あおが水であることを悟る。気づけば白砂の水底に立っていることに、水底にあって息ができることに、目を瞬かせる。
「ここは、……」
知らず唇から零れた言葉が声になって、重なる驚きに胸が轟く。驚愕の声をあげてしまいたい衝動を抑え、榛色の瞳に青に包まれて白く揺れる町を見回す。突如として水底に立ったがために跳ねていた心臓が落ち着けば、脳裏に浮かんだのは、以前にも迷い込んだことのある水底の町。
己が今立っているのは、白珊瑚で出来た町の央へと続く緩やかな石段であるらしかった。
(またあの場所に来たのか……?)
以前は、傍らに友人たちが居た。
人気のない町を歩きながらもひどく賑やかだった以前を思い出しつつ、周囲を見渡す。町のすぐ外側らしい石段の入り口には、人の姿はひとりとしてない。
青い水にも、その底に佇む白い町にも、見覚えはある。それでも、以前と全く同じ町であるのかどうか、判別がつきかねた。此処がどこかわからないまま、悠月は足を踏み出す。わからないのであれば、確かめに行くのみ。
(確か)
あの時、あの三人で立った野外舞台までの道筋を頭に描く。町の央から少し離れた場所に、それはあったように記憶している。
白く立ち枯れた木を過ぎる。家々が連なる町の中を通ろうとして、知らず足が止まる。
以前はひと一人として見つけられなかった町の通りに、今は色とりどりの衣装纏った人々が溢れている。水底を泳ぐ魚の群のように衣服の裾を水に踊らせ、いかにも楽し気に駆けて行く少女たちがいる。足元に転がる遺物じみた指輪や首飾りには目もくれず井戸端会議に余念のない女たちが、それを半ば呆れ顔で眺める男たちがいる。
少女たちに脇を掠められ、悠月は小さく息を吐き出した。
(ここに来てから驚いてばかりだな)
口元に僅かな苦笑をにじませつつ、人々に溢れる町に視線を巡らせる。道行く人々の中を歩き始めるうちに、気づいた。
ひどく、静かだ。
住人の姿があるだけで以前とは違う場所にも思えるはずなのに、青い水の中を占める静かな空気は、以前と全く同じもの。
(いや、しかし、……)
耳を澄ませば、少女たちの笑い声は確かに聞こえる。女たちのかしましい話声もしっかりと聞こえる。けれどそれは耳を傾けているその間だけ。少しでも気を逸らせば、たちまち住人の声は絶える。
(これは、)
石畳の街路に無造作に転がる空のインク壺や割れた椀、紅珊瑚の耳飾りや髪飾り、黒檀の杖に硝子の鳥。忘れ去られたような品々に、町の住人は誰一人として見向きもしない。見えていないのではないかと思い至って、悠月は町行く人々を見つめる。
(これは、何だ)
以前訪れたはずの町に抱く違和感に対する答えを見出せぬまま、以前訪れた舞台へと辿りついた。石造りの円形劇場は、町と同じに人々で溢れかえっている。
客席から舞台へ、色とりどりの花びらがまき散らされる。
舞台の央へと歩み出た純白の衣装の女が扇情的な眼差しを客席へと向けて後、唇を開く。
聞こえるはずの歌声を捉えられず、悠月は白い眉間に不審を刻んだ。榛の瞳を花散る舞台へと巡らせ注意を向けて、初めて女の歌声が耳に届く。客席に零れる人々のため息が聞こえる。
客席を回り込み、舞台の端に立つ。歩くことに気を向けた途端に耳を圧する静寂に、思う。
(もしかして今いるここは、)
誰かの夢なのかもしれない。
誰かの記憶なのかもしれない。
「同じ……舞台だな」
舞台の端、空のように見える水中に高く突き立つ石柱に触れる。舞台の端から見る客席は、あの日と違い人に溢れてはいれど、それでもあの日見たものと同じだった。
(それとも、残ったナニカなのか?)
解らなかった。答えに至るには、町を歩いた分だけの情報では少なすぎる。
巡り迷う思考は、ただひとりで舞台に立ち高く低く歌う歌姫の声を聞くうちに溶けた。
思案を溶かして胸に湧く熱の正体は、とうに知れている。
舞台の端に控える舞台主らしい男に話しかける。胡乱気な眼差しを向けてきた男は、けれど悠月が舞台で歌いたい旨を告げた途端に満面の笑みを浮かべた。戸惑う悠月を舞台の影に引き込み、何人かの女と共、瞬く間に少年の痩せた肢体を華やかな舞台衣装で包み込む。
「綺麗な衣装だな」
掛けられた声に振り向けば、薄紅のワンピースを纏った長い白髪の少女が艶めいた笑みを浮かべている。白い手にしたノートに走らせる筆をひとときも休めぬまま、悠月の鋭い眼差しにもたじろがぬまま、真紅の瞳の月は舞台裏に並ぶ幾つもの衣装や追い追い舞台に出る準備に忙しい踊り子たちを見回す。
「うん、……綺麗だ」
怖じぬ真紅の瞳で改めて見つめられ、悠月は小さく息を吐いた。その言葉に負けぬよう、凛と背筋を伸ばす。
結い上げた赤銅の髪を下ろして梳り、紅い花と白いヴェールに飾れば、即席の歌姫が出来上がった。女物の舞台衣装に白皙に朱を昇らせるも、抗議するよりも先に舞台へと押し出された。先に舞台に立っていた歌姫に楽し気に場を譲られ、万雷の拍手に迎えられ、引くに引かれず少年は腹をくくる。
長く裾を引く衣装を水に揺らし、ほんの僅かの間だけ歌う曲に悩むも、視界いっぱいに広がる水の青を見れば心はすぐに決まった。
(……蒼)
唇に流れ出す歌は、彼と初めて歌ったもの。
客席を埋める観客を前に、瞼の裏に浮かんでいるのは、あの日初めて声を重ね、ついには相棒となった男の蒼い瞳。
(そうだ、……この、あお)
瞼を開いた瞬間に瞳に飛び込んできた色は、まるでいつか間近に見た彼の瞳の色と同じだと思った。そう思った瞬間に胸が轟いたのは、突然水底に立ち尽くした衝撃のせいではきっとない。
(ずっと歌いたくて)
胸に生まれた、熱を帯びた衝動を歌にしたかった。
(歌いたくて、……)
高く高く、水の青のように澄んだ歌声を舞台いっぱいに響かせながら、歌いながら、繰り返す。水の青を目にしたときから歌いたかった。ずっとずっと、歌いたかった。でも、何故? 胸に湧く堪えられない熱のようなこの想いは、
(これは、何だ?)
想いを辿れば、蒼い瞳に行きついた。恐れも知らず、心の内を見通すように間近に覗き込んできた、あの蒼い瞳。組み伏されるように床に押し付けられて、それでも動けなかった。普段ならば、あの程度の体重の持ち主など容易く跳ね除けられるはずなのに、それすら己はしなかった。
(あの時、)
あの時、胸に溢れた熱い蜜のような想いが、今もまた胸を占めようとしている。熱く甘く、胸を満たして行く想いを抱えきれずに歌にする。蒼い瞳の彼を想い、歌う。
どこまでも一途な想いを声に乗せて歌った唇を閉ざす。知らず乱れる息を今は堪えようともせず、深く一礼する。息を吐き出し、蒼い水を見晴るかす。
嗚呼、と切ない息が漏れた。
(……そうか)
天啓の如く、思い至った。
今まで、知るべくもなかった感情が胸を満たしている。青い瞳の彼に、大事な相棒で、それだけだった彼に向けて抱いた想いの正体を、悠月は今こそ悟る。
(あおが、まぶしいな)
これは、まばゆいほどの恋慕だ。
赤銅色の髪を艶やかに揺らし、少年のように華奢な歌姫がその歌を終える。
愛しいひとに向けるような柔らかな、それでいて烈しい眼差しを観客席の上に広がる蒼い水に向け、もう一度優雅に頭を下げて舞台から去る。
白いヴェールを揺らめかせて歩み去る紅髪の歌姫に、
志鷹 若菜
は精いっぱいの拍手を送る。
「若菜」
傍らの席に掛けていたユニに顔を覗き込まれ、若菜は瞬いた。頬を伝う、水よりも熱を帯びたものに気づいて新緑の瞳を瞠る。そうしてから、睫毛を伏せる。
「ごめんね、何でもないよ」
大好きな誰かを想っての歌姫の歌に、懐かしいような優しい歌声と旋律に耳を傾けていて、ふと思い出してしまった。
(あの子も歌が好きだった)
弟の恋人で、もうほとんど家族同然だった、今はもうどこにもいない優しいあの子。
「泣かないで」
頬にユニの冷たい掌が触れる。
「泣かないでよ」
「うん、」
少年の小さな掌に涙を拭われながら、若菜は何度も小さく頷く。
「うん、ごめんね……」
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
8
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
水底の廃墟
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
前回シナリオ
水底の町
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年08月22日
参加申し込みの期限
2017年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年08月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!