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水底の廃墟
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青の中に体が沈む。
驚くと同時、咄嗟に止めようとした息を止め損ねた。胸の奥から空気を吐き尽して、気づく。
「あれ?」
息ができる。
呟いて、言葉が発せられることにも思い至る。
ゆらゆらと顔の周りで踊る黒髪を揺らし、
宮祀 智瑜
は青に染め上げられた周囲を見回した。甘いような水の味がするものの、フツウに出来る呼吸にとりあえず安心する。
(これは夢?)
首を捻る。眼下に広がる白珊瑚の街並みに向け、水をかく。
(それとも別の世界?)
青と白に彩られた世界を目にして思い出すのは、以前幾度か迷い込んだ黄昏に染まる世界と、その世界の住人であった男のこと。そう言えば、見上げる視線の果てにあるのは深い紅の色をした水面。
(でも、……)
あの黄昏の世界の茜色とは違う。この世界の赤は、もっと深い。見続けている間に己が吸い込まれ取り込まれてしまいそうな気さえして、智瑜は黒い睫毛を伏せた。背筋を這い上る寒さに思わず自分で自分を抱きしめる。
「ちょっと、……あなた、大丈夫?」
掛けられた声に振り向けば、短い黒髪の少女が少し離れた水の中に浮いていた。
今しも目が覚めたばかりのように重たげに瞼を上下させ、迷彩柄のタンクトップとショートパンツ姿の少女は身体を動かすことに慣れた仕草で身体を捻った。水中に居ることにも動じていない落ち着いた顔つきのまま、水を蹴り、智瑜の傍に寄る。
「顔色が悪いわ」
「あっ、だっ、大丈夫! 大丈夫ですっ!」
ぶっきらぼうで無表情なその癖優しい掌に背中を撫でられ、智瑜は慌てて首を横に振る。
「びっくりしちゃって」
「そうね」
智瑜の明るい笑顔を横目に、
椎井 莉鳥
は不愛想に頷く。
「……ここは……水の中?」
見渡す限り、どこまでもが青かった。
(青、蒼、碧、藍――)
視界のすべてを染め上げる色の名を思いつくまま、心中に呟く。
見上げた遥かな水面は毒々しいほどの深紅に揺蕩うているけれど、その紅さえ、水底に近づくにつれて青く碧く染め上げられてゆく。淡く濃く、ゆらゆらとかたちを変えながら、あおを織り成してゆく。
(どこまでもあおくて、)
青に指を伸ばそうとして迷う。この青は、どこまでも透き通っていて、どこまでも綺麗だ。どこまでも深くて、どこまでも遠くて、遠い。その青に、触れられる気がしなかった。
(……あおい)
夢だと思った。けれど肌に纏う水の感覚は決して夢ではない。冷たく重く、確かな質量で以て身体を包み込んでいる。動きを制限している。
その水の中で息ができる不思議さに瞬きを繰り返しながら、自室のベッドで眠りに落ちたときの格好そのままな自分の姿にほんの僅か、眉をひそめる。
(でも、)
水をかけば、抵抗なく思うように動くことができる。その場でくるり、身軽に宙返りだって容易くできる。
「わっ、すごいですね!」
感嘆の声を上げる傍らの少女に会釈を返す。冷たい水の中にいるというのに、春の空気に触れているかのよう。少なくとも身体が冷えてしまうことはなさそうだ。
「町があるのね」
「はい、人もいます」
青い水底の丘に白い珊瑚の街、ひどく静かに見える白い町には、けれどたくさんの人の姿があった。色とりどりの魚が泳ぐような原色を散りばめた衣装を纏った人々が、街角に笑顔を見せている。
少女ふたりは誘われるように街へと降り立つ。
石畳の路に降り積もった白砂を粉雪のようにふわりと舞い散らして水中から降り立った少女たちの姿にも、街を行き交う人々は驚く素振りを見せない。気づいていないかのように素知らぬ顔で石畳の路を歩いている。
水底に爪先がつけば、まるで地上にいるかの如く振る舞うことができた。体にまとわりつく水の抵抗の少なさに、莉鳥は瞬く。
見知らぬ水底の町を並んで歩き始める。すれ違う人々は、きちんと体があるように見えるのに、まるで硝子細工で出来ているように存在感が希薄だった。声高に喋り、笑いさざめいているように見えて、意識を向けなくてはその話声もほとんど聞こえない。
「外国に来たみたい」
人通りの多い通りを過ぎたその先、青に半ば染め上げられながらも様々な色を咲かせる花々に周囲を飾られた広場に出て、智瑜がぽつりと零す。耳を澄ませば、集中すれば、周りで話す人々の言葉は聞き取れる。ぼんやりと歩いているだけでは、誰の言葉も聞き取ることができない。
「……そうね」
広場の中央にある噴水を囲み、様々な露店が広げられている。見慣れぬ民芸品の値段を巡って店主と買い手が一悶着し、花の屋台の前では恋人らしいふたりが仲睦まじく花束にする花を選んでいる。甘そうな菓子にかぶりつく子どもに、それを見守る母親、屋台で何かを調理する男、――青い画面の無音映画を眺めているようではあっても、ともすれば自分たちの立つここが水の底であるということを忘れてしまいそうなほど、広場には活気と人々にあふれていた。
「……ん?」
広場を見渡していた智瑜がふとしゃがみこむ。見れば、路の端、取り残されたように転がっていたのは、花を象った香水瓶と読めない文字の書かれた古い地図。
「まだ少し入ってます」
薄紅色した香水瓶を片手に、智瑜は破れかけの古地図を広げてみる。噴水のある広場や、街の中央に見える大きな神殿が描きこまれているところからみても、この町の地図に違いないだろう。
「交番に届けた方がいいですよね」
香水瓶を大切に手に握りこみ、智瑜は地図とにらめっこする。読めぬ文字や記号をいくら指で辿っても、どれがこの地の交番にあたる場所であるのかを判別するのは難しい。
「交番なんてあるのかしらね」
智瑜の脇から地図を覗き込み、莉鳥は呟いた。そのうちに地図上に交番を探すのはあきらめて、花と人に溢れる広場をぼんやりと眺める。水の中であるせいか、屋台の食べ物のにおいが漂って来ないのは幸いだった。
(……お腹、空いた)
きゅう、と小さく鳴るお腹を押さえる。とはいえ、現実世界のお金はもちろん、この世界のお金も持っていない。
(どうせ夜中に食べても太るだけだから)
さらりと空腹を無視し、好奇心の赴くまま、気ままな視線を広場に迷わせる。
「少し歩いて来るわ」
「はい」
地図とにらめっこするばかりの智瑜を置いて、広場へ足を踏み入れる。初めての場所は、なんだか楽しかった。
踏み出す度に爪先でふわふわと舞う白砂の感覚と冷たい石畳の感覚をそっと楽しみつつ、歩く。
ふわり、舞い上がった白い砂の下、先ほど水中で掴みたくとも遠すぎて掴めなかった青の色を見た。思わず雑踏の中に足を止める。腰を屈め、指を伸ばす。まとわりつく砂を払いながら拾い上げてみれば、それは透明に近く淡いブルーのシーグラス。
掌に掴み取った青を、大切に両手に包み込む。どこまでも届かないと思っていたのに、思いがけず足元に見つけた青の色。掌に包んだそれをショートパンツのポケットにしまい込み、莉鳥は視線を上げる。
「……?」
無声映画のような光景の中に、くっきりと浮かび上がる少年の姿を見た。
黄や赤の鮮やかな衣装を纏いながらもどこか存在が希薄な人々の中を、確固とした存在感で歩を進める、寝子島高校制服姿の少年。
大事そうに手にしているのは、確か桜花寮の近くにあるらしい肉まん屋の紙袋。
夜の買い食いの途中にでもこちら側に迷い込んだのだろうかと思い巡らせるうち、少年の黒い瞳がこちらを向いた。思いがけず真直ぐに視線が鉢合って、けれど互いに不愛想な少年少女は笑い合うでもなく言葉をかけあうでもなく、ほとんど同じ間で視線を逸らし合う。
ほんの小さな会釈ひとつだけ残して雑踏に消えて行く黒髪の少女の華奢な背をそろりと横目に見送り、
優木 遥斗
は知らず強張っていた筋肉質な肩から力を抜いた。
(……やっぱり、)
女子と話すのは緊張する。
気づけば入り込んでいた見知らぬ世界で出会った寝子島の女子であっても、それはやっぱり変わらないらしい。
そっと息を吐き出す。零れた息のかたちして揺れる青い水を黒い瞳に映し、唇を緩める。水の底の見慣れぬ世界ではあるけれど、広場をぐるりと回ってみたところ、人々は皆屈託ない笑顔を見せている。剣呑な気配はどこにも感じない。平穏そのもの、過ごしやすそうな世界に思える。
気を取り直し、周囲を見回す。散策がてら、まずはこの世界での食べ物を探してみよう。
(今までは)
思い起こすのは、今までに訪れた異世界のこと。例えば屋台を手伝ったり、騒動のどさくさに紛れてお菓子をつまみ食いしたりしていたけれど、今日は手元に肉まんがある。
水の中にあってもほんのりと温かい食べ物の感覚を袋越しに感じて、遥斗は目元を和ませる。今日はこの手持ちの肉まんと交換してもらえないか、交渉してみよう。
この世界ではどんなものが食べられるのか、感情を表し難い表情の下で心を弾ませる。噴水の前で揚げ菓子を作る屋台に、皮がパリッと固そうな大きな丸パンを売る屋台、原色の果物を山積みにした屋台。広場にはたくさんの屋台が天幕を連ねている。
主に食べ物の屋台を見て回りながら、遥斗はちらりと黒い眼を細める。
それにしても、この町の人々の存在感のなさはなんなのだろう。
楽し気に笑いさざめく子どもたちも、品物の代金を巡って言い争う商人たちも、誰もかれも、触れてしまえば消えてしまうのではないかと思える。纏った衣装は目にも綾、視界に入る誰も彼もがきちんとした人のかたちをしているのに、手を伸ばしても何にも触れられない気がするのは何故だろう。
(面倒なことはないにしたことはないが)
それでも、こういうかたちで取り込まれたことには何かしら原因があるはず。制服の襟を正し、いつも持ち歩いている竹刀を袋の外から握りしめる。
ともあれ、町の人に声を掛けてみよう――
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担当ゲームマスター
阿瀬春
前回シナリオ
水底の町
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年08月22日
参加申し込みの期限
2017年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年08月29日 11時00分
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