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水底の廃墟
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高く遠く、紅い光がさざめいている。
(今見ているのは)
初夏の新緑色した瞳に空より遥か先にある深紅を映す。天から地へ視線を戻せば、蒼く碧く、ゆらゆらと静かに揺れる水の底、色を喪った街に溢れる色鮮やかな衣装纏うた人々の群。
冬の頃に呼ばれた折には、ここには誰も居なかった。誰も居ない真っ白な街で、ユニと名乗る少年と遊んだ。白銀の長い髭もつ老人と会った。以前会えたのは彼らふたりだけだった。
それなのに、以前同じ街並みのはずであるのに、目前の街の通りには黒い髪と黒い瞳を持つ人々が楽し気に暮らしている。
花を抱えた少女たちが笑いさざめきながら通り過ぎる。
白壁の前に据えた机の前では老翁たちが酒を酌み交わしながら見知らぬ盤上ゲームに興じている。
水の中では日差しなど関係ないだろうに、日除けの天幕を掛けた雑貨屋の店先で女たちが終わらぬ世間話を楽しんでいる。
(これは、……)
例えば、この町の過去の姿なのだろうか。
ここには自分と『じいちゃん』しかいないのだと、ユニは確かに言っていた。
――おれが目を覚ましたらこうなっていた
――でも、大好きなじいちゃんが居るから
大丈夫だと屈託なく笑っていた。
青い水よりも蒼い髪を揺らす青い瞳の幼い少年を思い、
志鷹 若菜
は優しい眉をひそめる。雑踏の中に、あの少年の姿を探す。白銀の髭の老人を探す。
「……どこに居るの?」
一度訪れたことがあるはずなのに、全くの見知らぬ場所に立っている心細さに、若菜は戸惑う。ともかくもあの二人に逢いたくて、賑わう街に踏み出す。
石畳の路を白く覆う砂が雪のように舞い上がる。
口に広がる甘い水の味は、以前と同じ。水中にあって容易く息のできる不思議も以前と同じ。
ただ、街に人が溢れていることだけが違った。それだけでひどく胸が騒いだ。
胸元でふわりと揺れる首飾りを咄嗟に手に掴む。周りの水よりも冷たい石の感覚に、ほんの僅か心が凪いだ。新緑の瞳に黒い睫毛の影を落とし、手の中に握りこんだ首飾りを見下ろす。濃紺の小さな石には、星々を散りばめたような極小の光が宿っている。
星々に祈るように首飾りを握りしめながら、丘陵に沿う街の央を貫く石段を登り始める。真直ぐに見上げる視線の先には、幾本もの白柱に支えられた巨大な神殿。
見回せば、街の人々は誰一人として石段に立っていない。神殿に向かおうとする人影もない。
(ユニくん、お爺さま……)
一縷の望みを託し、祈りと共に石段を登る。水底にあっても地上を歩くと変わらぬ身体の重さを感じながら足を運ぶ。
「っ……」
息を僅かに切らしながら石段を登り切ってみれば、
「……やあ」
身長の数十倍もある巨大な白い神殿の、同じほどに巨大な扉の前、白い髪に紅い瞳を持った小柄な少女が立っていた。
「こんにち、は……?」
「君もアレス翁に会いに来たのか?」
目を丸くして瞬く若菜に、
旅鴉 月詠
は真紅の瞳を僅かも動揺させずに問う。
「アレス……お爺さまのこと、ですか?」
若菜の言葉に、月詠は細い顎を引く。肩越しに振り返り、神殿を塞ぐ大扉を見仰ぐ。
「奥に居るはずだ」
以前、同じタイミングでこの街を訪れたことのある少女は、この神殿でアレスと名乗る老人と言葉を交わしたのだという。そうして、この神殿の扉の奥に、町を護る巨獣を見たのだという。
「だが、幾度呼びかけてもアレス翁の応えはない」
ただ、と月詠は閉ざされた扉を小さな拳で軽く叩く。耳を澄ます少女に倣い、若菜も扉に耳を近づける。
微かに、衣擦れの音がした。子どもが息を殺してすすり上げるような息遣いが聞こえた。
「ユニ君」
若菜は息を呑む。両掌を扉に押し付けて力の限り押してみるも、扉が動く気配はない。
「内からでなければ開かないのだろう」
どこまでも冷静な見解を述べる月詠に頷き、若菜はそっと息を整える。できる限りに穏やかな声で呼びかける。
「久しぶり、ユニ君。元気だった? 私のこと覚えてる?」
「……若菜」
分厚い扉の向こう側から、小さく小さく聞こえた少年の涙声に若菜は安堵する。何にせよ、応じてくれた。
「一緒に町をお散歩できないかな」
戸惑うように黙する少年の気配が、ふと揺らぐ。
「手を繋いで行こう、……ね?」
繰り返し語りかける若菜に応じ、大扉がほんの僅かに開く。水底よりも蒼く昏く沈んだ神殿内から、ふらり、泣き腫らした顔の少年がまろび出てきた。咄嗟に抱きとめる若菜の両腕の中、ユニはもがく。
「じいちゃん!」
悲鳴のような声をあげるユニに続き、扉の内側から白銀の髭の老翁がゆっくりとした足取りで外に出る。大きく息を吐き、閉じた扉の前に大儀そうに腰を下ろす。
「行ってきなさい」
ひらひらと皺深い手を振るアレス翁の前、若菜は膝をついた。
「今日は、アレスさん」
改めて自己紹介をする。アレス翁は髭と同じに長く垂れた白い眉の下、灰の瞳を淡く笑ませた。
「二度目の訪問、真に感謝する」
ユニと手を繋いだ若菜が石段を降りていく。
「私たちを呼んだのは、アレス翁か」
その背を見送りながら、月詠はアレス翁の隣に並んだ。扉を背に石床に座す。
「如何にも」
静かに微笑むアレスの横顔を見つめ、瞬く。神殿の外に出てうずくまったきり、老翁は最早動く力も失くしたようだった。
以前はもっと矍鑠としていた。老翁の瞳は心までも見通すような鮮やかな碧であったように記憶している。それなのに、今は精根尽き果てたような深く濁った灰色。
(町も、この翁も)
来たことのある町のはずなのに、会ったことのある老翁と同じであるはずなのに、違う。
「……これは何か? かつてあった町の記憶の再現か?」
月詠の直截な物言いに、アレスは心底楽し気に微笑んだ。
「ユニが見せてくれた。好まないか」
「や、前よりはにぎやかでいいのではないだろうか」
町が滅んだ理由を、月詠は翁から聞いている。
――ある日、町に水が湧いた
何処より来たとも知れぬ水は、人を溶かせしめる水だった。
町を護る巨獣が護り得たのは、その折神殿に捧げられていたユニ少年ただひとりであったという。
(……だから)
今現在も水で満たされているこの町の姿は、過去ではなく現在のものなのだろう。
町に人々が溢れているのであれば当然聞こえるはずのざわめきは、けれど意識しなければ耳に捉えることができない。町を行く人々の姿も声も生者と同じはずであるのに、月詠の感覚に捉えられるのは、前に来たときと同じ静けさばかり。
(町の住人が虚像だからなのだろうか)
しかし、と月詠は白銀の髪を揺らして首を捻る。町の人々は、水があることが普通であるように振る舞っていた。であるのならば、これはただの再現ではない。
「町の中限定で住人を記憶から作り直したのか?」
月詠の問いに、知らぬ間にうたたねしていたアレス翁は億劫そうに首を横に振る。
「ユニはまだそのように複雑な力の使い方はできない」
「では、以前町に泳いでいた魚達を人型に変化させてる?」
「元よりあれはユニの無聊を慰めようと私が作り出した幻影。遊戯の如き幻を放つ力さえ、私には最早失せた」
息を吐き尽すように言い、アレス翁は重たげに瞼を閉ざす。
「幻に慰撫されるは、愚かだろうか」
「箱庭を作る者は人恋しさを覚えるものさ。箱庭の住人を愛しているから作り続ける」
嘆くような老翁の言葉を月詠は否定する。
「それで寂しさを紛らわせることができるなら、それも悪くない」
「世界を箱庭とみなすのか」
息をすることさえ億劫そうに、けれど話すことは楽しそうに、アレス翁は呟く。
「魔女の如き少女だ」
褒めるでもなくけなすでもなく言われ、月詠は口元を緩めた。
「世界は終わらない、己の中で」
呪文を唱えるように囁き、老翁の隣でスケッチブックを広げる。描くのは、華やかな衣装纏った人々が笑いさざめく水底の町。
亀と蛇の姿の神獣、玄武の緻密な刺繍が施された巫女衣装の裾が水に揺れる。
「え……?」
雪雲色の長い髪を青い水に震わせ、
冬樹 闇
は深紅の瞳を瞬かせた。
ついさっきまで、己が神主を務める冬樹神社の庭園の池畔に立ち、ペットとしているミドリガメが泳ぐさまを眺めていたはずだった。
瞠る瞳の端、ミドリガメがついと泳いで過ぎる。
やはり水中であるのだと思い至ると同時、呼吸ができることにも気づいた。口元に手をやり、息を吐き出す。水の流れが掌に触れ、闇はますます目を瞠る。
「……不思議」
見回せば、蒼い水底に静謐とともに佇む白い町が在った。
目前には、緩やかな丘の上に建つ数十もの柱に支えられた巨大な神殿へと続く長い石段がある。
「……神殿……?」
呟くよりも早く、冬樹神社の神主の爪先は石段にかかった。周囲に広がる町には目もくれず、ナニカに誘われるように一心に、神殿を目指し石段を登り始める。
人気のない石段を一段一段踏みしめながら、ふと唇に微かな笑みが滲んだ。
神殿に続く長い石段は、冬樹神社とどこか似ている。
「あ……」
舞うように泳いでいたミドリガメがひらり、水中に宙返りした。闇のもとへ戻ってきたかと思えば、巫女衣装にじゃれつくようにくるりと周りを一巡りし、再び神殿へと向かう。
「待って……」
指を伸ばす。咄嗟に石段を蹴れば、水中へ放たれたように体が浮かんだ。水底から離れた途端に浮力を得る己の身に戸惑いながらも、闇は迷わぬ動きで水を蹴る。容易く掌に水を捉え、不思議な水の空間を彷徨うように泳ぎ始める。
足で登るよりも楽に石段を登り切ったその先には、見上げるほどに大きな白い神殿がそびえている。
神殿の入り口を固く閉ざす石の大扉の前、並んで座る白髪の少女と白鬚の老翁を見つけて近づく。おや、と顔を上げた少女は、座したままうたたねする老翁の横でスケッチブックに町の絵を描いていたらしかった。
「巨獣に会いに?」
「巨獣……?」
白髪の少女、月詠から此処が町を護る巨獣の神殿であることを聞き出して、闇は肩に停まり休憩するミドリガメの甲羅を撫でながら巨大な神殿を仰ぐ。
「呼ばれた……気がする……」
重たげな石の扉の向こうに、町を護る巨獣は居るのだろうか。大扉へと向けた深紅の瞳を闇は細める。自分たちに世界を飛び越えさせ、こちらの世界に呼び込んだのは、おそらくはその巨獣であるのだろう。それほどの力を持つ者であるはずなのに、扉の奥に感じる気配はひどく幽かに過ぎる。
(これは、もう……)
瞳を伏せる闇の前、扉の前に座す月詠が傍らの老人の膝に触れる。
「アレス翁」
「ん、……寝てたか」
深く澱む灰色の瞳を薄く開き、老人は闇を見上げた。ようこそ、と淡く微笑む。
「よく来てくれた」
「……アレス」
老翁の名を呼び、闇は瞬く。巫女衣装の裾をさばいてその場に端座するなり、両手を石床につき頭を下げる。衣擦れの音をたてて頭を上げ、真直ぐにアレス翁を見つめる。
相対して、直感した。目前に座すこの小柄な翁が巨獣であると。本体は別にあったとすれども、この老翁が町を護る巨獣であると。
「何か……大事なこと……話しがあるのかな?」
己をこの地に呼び出した目的を問う。
頼みがあるのであれば、出来る限り聞き届けたかった。助けになれるのであれば、助けたかった。
(うち……玄武の神主……)
青い水底に生きる『町を護る巨獣』に対し、水の玄武を司る神主として浅からぬ縁を感じている。近しいものとしての親近感さえある。
闇の真紅の瞳を皺に埋もれそうな灰色の眼で覗き込み、アレスはまた笑った。枯れ枝のような指を伸ばし、闇の肩にとまるミドリガメの小さな甲羅を撫でる。
「水に沈み人の絶えたこの町の、今は青い静寂に閉ざされるばかりのこの町の、元の賑やかさを誰かに見てもらいたかった」
嗄れた声で囁く。
「見せているのは最早私の力ではないが、それでも。……町を護る巨獣を尊び敬い、静かに、けれど楽しみながら日々を過ごす町の人々を誰かに見て欲しかった。それがたとえ、あの子が私のために見せてくれたひと時の幻だとしても」
ああ、と照れたように息を吐く。
「……そうだな、この子は、己の跡継ぎはこのようなこともできるのだぞと誰かに自慢したかったのかもしれない。私は、老いた」
「アレス」
石扉に背を預け杖に縋ることでようやく体を支えているような老翁の名を、老いたと嘆く『町を護る巨獣』を、闇は静かな眼差しに見遣る。
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阿瀬春
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水底の町
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年08月22日
参加申し込みの期限
2017年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年08月29日 11時00分
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