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寝子島高校
水底の廃墟
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足元を紅い花が埋めていた。
雪のように白い砂の上に鮮やかに紅く広がる色は、
(そう兄ぃの色だ)
幼い頃から優しくしてくれる
如月 蘇芳
の瞳を思わせた。
「ん……」
裸足の爪先をくすぐる白砂の感覚に薄紅色の瞳を細め、
来島 アカリ
は瞬く。藍色の睫毛が上下する僅かの間、少年の瞳は紫紺から薄紅に、薄紅から黄金に、華やいだ色を揺らめかせる。
視界が、碧い。
(ここ、どこ……?)
瞳を彩る紅い花を見下ろして、花が花ではないことに気づいた。花のように鮮やかな色を宿して広がる、それはどこまでも紅い珊瑚の花畑。
夢にも思える紅い花畑の向こう、碧い水底に沈む白い町が見える。人気の感じられない町の静けさに、見覚えがあった。
(前にも来た街、だよな)
さっきまでは家で寝ていたはずだった。
シーサイドタウンで新たに始めた一人暮らしのアパートの部屋を思い浮かべる。小さなベッドで、最近は半同居状態な
ロベルト・エメリヤノフ
と、それから橋の下で拾った愛猫と一緒に、目覚めるまでは確かにくっついて眠っていた。
「……先輩、いるー……?」
主である自分よりも半同居人であるロベルトの方に懐いているように思える愛猫は、もしこちらに迷い込んでいるとしてもロベルトと共に居るだろうと諦めに近く思いつつ、珊瑚の花畑へ視線を巡らせる。
珊瑚を踏まぬよう、一歩を踏み出す。水の中に居るはずなのに、水底に足をつけてさえいれば地上と同じように歩ける不思議さも、以前訪れたときと変わっていない。
(なら、そのうち戻れるだろうし……)
以前、水溜りを踏んだ途端に落ちてきたときも、気づけば寝子島に帰っていた。今回もきっとそうだと自分に言い聞かせ、アカリはそっと深呼吸をする。ひとりきりで青い水底に立っているせいか、微かな不安に心臓がざわざわする。
「先輩」
さっきよりも高く、声を張る。自分の声が震えているようにも聞こえて、唇を尖らせる。
(折角来たんだし、ゆっくり楽しんでいこうかな)
震える心中を鼓舞したくてわざと強気に思ってみたその時、
「……あっ」
揺らめく碧い水の向こう、紅い花畑に佇む赤髪の少年を見つけた。
「あ、いたいた」
知らず弾む声には気づかず、同じく弾む足取りで近づこうとして、ロベルトのその脇、何気なく立っているだけで凛と伸びた背筋が目を引く白髪の少年の姿も目にする。
「……あれ、」
アカリの声に、白髪の少年は珊瑚と同じ色した優し気な瞳を淡く細めてみせる。
「そう兄ぃ?」
「アカリ君」
蘇芳が微笑む。すぐ近くに立っていたロベルトが青い水に赤い髪を揺らして振り返り、優しく笑んだ。
「アカリ」
幼馴染である蘇芳と片恋をするロベルトを目の前に、アカリは思わず足を惑わせる。自分と合流するまでの間、ふたりは何を話していたのだろう。
(二人が知り合いなのは知ってたけど、)
最近モデルの仕事を始めた蘇芳は誰がどう見ても、ロベルトが日頃から口にする『美少年』に違いない。
「……また、ここに来れるとは思ってなかったよ」
「……へえ、前にも似たようなことがあったんだ?」
ロベルトが囁き、蘇芳が応じる。知り合い、という関係だけとも思えぬ親密さをその声音に感じ取って、アカリは眼を瞬かせた。
(なんか……へんなかんじ)
『美少年』に対して、いつものロベルトならばもっと過剰な反応を示す。もっと顔を見せろもっと触れさせろとばかり、ぐいぐい距離を縮めようとする。
「なんか、懐かしいな」
それなのに、ロベルトは蘇芳に近づこうともせず碧い水を仰ぐばかり。
「こんな綺麗な場所に何度も来れるなんて羨ましい。静かで、時の流れを感じなくて……とても良いね」
「うん……いいところだよね、静かで落ち着いて……」
蘇芳の顔を見る必要もないように、珊瑚の花畑や人の気配が微塵も感じられない水底の町へと視線を投げるばかり。
(なんか、……なんか、まるで)
まるで、のその先がけれど思いつけず、アカリは俯いた。
(……へんな、かんじ)
「前はアカリと悠月と僕の三人だったけど、今日はこの三人だね」
俯くアカリの顔をひょいと覗き込み、ロベルトは屈託ない笑顔を浮かべる。
「三人で会うのは初めて……かな?」
「そう、……ですね」
覗き込んできてくれるロベルトの優しい栗色の瞳がひどく眩しく思えて、アカリは藍色の睫毛を伏せた。
(あの時は)
脳裏に浮かぶのは、以前この町を訪れたときのこと。
あの時はまだ、ロベルトと出会ったばかりだった。人見知り気味に接する自分に、
(……そうだ)
ロベルトはそれこそぐいぐいと距離を縮めてきてくれた。
(こんな風になるなんて、思ってもみなかった)
ロベルトを想うようになるまでの日々が一瞬にして頭を巡る。出会ったばかりのあの頃は、ロベルトはただの高校の先輩だった。
この人に片思いをするようになるなんて、思ってもいなかった。
俯いても視界の端に映ってしまうロベルトの裸足の足元から視線を逸らす。ロベルトが自分と同じ裸足であることに気づいた途端、同じ布団に入って眠っていたことが妙に生々しく思えてしまった。
(先輩のところにも居ない……家で寝てるんだよな、きっと)
愛猫の安否に考えを向ける。うっかり赤くなってしまいそうな頬を誤魔化し、
「久しぶり、そう兄ぃ」
ロベルトから一歩離れる。珊瑚の花畑を眺める蘇芳に近づく。
「ちゃんと話すのはお花見に行ったとき以来……だっけ?」
幼い頃からのように蘇芳へ話しかける。
「確かにそうかもしれないね」
「変わりない?」
「変わらないよ」
いつもと同じように幼馴染である蘇芳と話しながら、いつもと同じように笑いかけながら、
(なんとなく、だけど……)
思い至る。
幼馴染のお兄さんである蘇芳に見せる自分と、片思いの相手であるロベルトに見せる自分は、どこか違う。どちらも同じ自分であることには違いないけれど、
(恥ずかしい)
ロベルトに見せる自分を、蘇芳に見せたくなかった。
それが何故だかも分からぬまま、アカリはロベルトを視界にも会話にも入れないようにして幼馴染の蘇芳と話し続ける。
「猫も元気にしてるからね、そう兄ぃ」
「猫? ……ああ、猫か。それは良かった」
橋の下で見つけ、アカリに託すかたちで押し付けた捨て猫を、今の今まで忘れていたことなどまるでなかったことにして、蘇芳は安堵の笑みを浮かべてみせる。
「アカリ君が引っ越してから休みの日に会うことも減ったし……今度うちに遊びにおいでよ」
優しく優しく微笑みつつ、ロベルト君も、と声をかける。どこかぼんやりと水底の町を眺めていたロベルトは弾かれたように顔を上げた。沈みかけていた顔を一瞬で笑みに満たす。
「ほんと!? じゃあ今度行くよ!」
「うん! うちにも遊びに来てね、そう兄ぃ」
ロベルトの言葉を耳にしているはずなのに、アカリは聞こえなかったかのように蘇芳の腕に両手で抱き着いて弾んだ声をあげた。
なにかを隠すようにはしゃいだ様子を見せるアカリの顔を見下ろし、蘇芳は珊瑚の瞳を瞬かせる。最近は、ふたりで居るときはよくよくロベルトの話を聞かされていたというのに、本人を前にした今はどうしてこんな態度を取るのだろう。
ちらり、ロベルトを見遣る。
(……ああ)
白い頬の横顔と、青白くさえ見えるうなじのあたりの強張り方を一目見た途端、蘇芳は紅い瞳を細めた。全く、と小さなため息を吐く。
(何か良くない方向に考えてる顔、してるね)
(幼馴染って言ってたから……)
心に零れた呟きが自分ながら言い訳じみて聞こえて、ロベルトは頬に力を込めた。
(こんなもんなんだろうか)
いつもなら先輩先輩と近寄って来ては、気持ちいいくらいに真直ぐな好意を向けてくれるアカリが、今日は蘇芳に構ってばかりいる。
ついさっきまでは一緒に並んで眠っていたのに、体温を間近に感じていられたのに、その体温の持ち主が今はなんだかひどく、遠い。
冷たくはないはずの水温が妙に冷たく感じられて、ロベルトはそっと自分で自分を抱きしめた。
久しぶりに会えた幼馴染だから。
さっきまではあんなに近くに居たのだから。
自分を納得させるための言葉も、どうしても空虚なものに思えてしまう。
(来島は)
この自分を好きだと言っていた。家にも入れてくれる、ご飯も作って食べさせてくれる、一緒の布団で眠ってくれる。たぶん、望めばそれ以上のことだってしてくれる。
けれど不安は消えない。アカリが永遠にこの自分を好きでいてくれる保障はどこにもない。もしかすると、いずれ彼もまた自分のもとから去って行ってしまうのかもしれない。
(僕は)
アカリを独占したいわけではない。アカリが自分を想うように、きっと自分はアカリを特別には想っていない。それなのに不安に思ってしまうのは、何故だろう。
自分では出口を見つけられない思いが心の内をぐるぐると巡る。
「あれ」
堂々巡りの思いに心を占められるロベルトの俯いた視界の端を、迷いのない颯爽とした足取りで蘇芳が通り過ぎた。
「ん?」
悩んでいることを悟られたくなくて慌てて顔をあげるロベルトに、蘇芳は穏やかに笑いかける。
「向こうに誰かいるみたいだから、ちょっと見てくるよ」
「じゃあ、俺もっ」
「だめだよ。アカリ君はロベルト君とここに居て。ここについて聞けたら後でちゃんとお話してあげる」
腕にくっついて離れようとしないアカリを引きはがし、ロベルトに押し付ける。
「アカリ君を頼んだよ」
「ああ、気を付けてね」
「行ってらっしゃい、そう兄ぃ」
ふたりにひらりと手を振り、蘇芳はひとり、珊瑚の花畑を歩き始めた。
(二人には仲良くして欲しいし……)
協力するにやぶさかではない。それに、
(……その方が後でたっぷり楽しめるしね)
水中に会っても青白く見えたロベルトのうなじが薄紅に染まる様がふと瞼に浮かんで、蘇芳は微かに唇を緩めた。
蘇芳の長身が珊瑚の花畑の向こうに見える小屋の向こうに消えるまで見送ってから、ロベルトは小さく首を傾げる。見る限り、人の姿は見受けられないけれど、もしかするともっと町の中の方に人影を見たのだろうか。
「どうしたんだろう」
「どうしたんでしょうね」
青い水が風のようにゆらゆらと揺れる。揺蕩う水に合わせ、花が風に惑うが如く珊瑚が揺れる。
見晴るかす白い町は、町からほんの少し離れた野原から見た限りでは全くの水に沈んだ廃墟に見えた。
(俺たちの他にも誰か、来ているのかもな)
蘇芳が見たのはそのうちの誰かなのかもしれない。小屋の影に隠れてしまった蘇芳の背中を追って背伸びしたそのとき、
「アカリ」
低く、思いつめたような声音でロベルトが手を掴んできた。今にも抱きついてきそうな眼差しと、掴んでくる手の熱に、思わず動揺する。
「なに? 先輩」
声が上擦る。
「前に、僕を好きと言ってくれたけど……」
「……はい」
「それは、今も?」
聞かれた途端、頬に熱が上った。ほんの一瞬、それが恋心を疑われたがための怒りなのか、好きなひとに恋心を確かめられたがための羞恥なのか、アカリは迷う。
「……何バカなこと言ってんの」
思わず叱りつける口調になった気がする。それともそんな気がするだけで、本当は甘えるような口調だったような気もする。
だって、とロベルトは白い頬に赤い睫毛の陰を落とした。
「僕よりももっと……魅力的な人間はいるだろう?」
ロベルトの言う『魅力的な人間』が今しも話をしていた蘇芳を指しているように聞こえて、アカリは眼を瞠った。嫉妬してもらえているのではないかとちらりと思いかけて、緩く首を横に振る。
そうではない気がする。嫉妬とはまた違う気がする。
(なんだろう)
たぶん、と思う。たぶん、この優しい人は自分に自信がないのだ。自分が誰かから愛され続け得る人間であるとはどうしても思えないのだ。
みんないつかは自分から離れて行ってしまう。きっと、そう思ってしまっている。
(……なら、)
こんなことを口にするのはとんでもなく恥ずかしいけれど、今から口にする言葉は、ロベルトのための言葉だ。ロベルトのためだけの言葉だ。
「そんなすぐに心変わりなんてしません」
アカリは笑ってみせる。
「その……好き、じゃなかったら、うちで住まわせたり、ご飯作ったりなんてしねーし」
言っているうちにやっぱり恥ずかしくなった。
「それに……」
瞬きが多くなる。言葉につられてどきどきと弾み始める心臓にせいで吐息が零れる。視界が滲む。
「他の人がいくら魅力的でも関係ない、です。俺が好きになったのは、ロベルト先輩なんだから」
真直ぐに見つめる。
「そ、そうかい?」
もう一度の恋の告白を受けて、ロベルトは狼狽えた。
「アカリはずいぶんと、まっすぐだなあ」
心底から感嘆する。目の前の少年とは違い、自分は美少年とみるとすぐに目移りをする。本当に理想とぴったり合った美少年でもなければ、くるくると心変わりして飛びついて行ってしまう。
ロベルト・エメリヤノフ
はそういう人間なのだろうと、自分でも思っている。だからこそ、アカリの真直ぐさにはたじろいでしまう。
「……アカリは、すごいな」
正直なところ、アカリがどうしてこんなにも真直ぐな想いを抱いてくれるのか理解できてはいない。
(……だけど)
まあ、とロベルトは知らず強張っていた目元を緩める。
(来島がそれでいいのなら、……いいか)
ロベルトの頬に浮かぶ笑みに、アカリは安堵する。
「……そんなことない、ですよ」
ロベルトが褒めてくれるような特別なことなんて何にもない。
(俺はただ、)
目の前のこの人が好きなだけ。
ただ、それだけ。
(……うん、なんとか大丈夫そうだね)
白く枯れた珊瑚を積み上げた小屋の壁に背を預け、蘇芳は紅い瞳を伏せる。垣間見たふたりの間には、先ほどまでのぎこちなさはもうどこにもない。
アカリの屈託のない笑顔を遠目に見て、思わず瞳が和む。
(大事に大事にしないと、ね?)
こんなことで萎れさせてしまうわけにはいかない。今まで、幼馴染として十二分に手を掛けてきた。優しく優しく接してきた。お陰であの子の己に対する感情には一筋の瑕疵もない。
(熟す前にダメにしちゃ、勿体無い)
端正な顔に残酷なまでに美しい笑みが滲む。
唇に頬に浮かんだ笑みは、束の間の後に消えた。滑らかな頬を一撫でし、蘇芳は壁から背を離す。
幼馴染のあの子は、近い将来、間違いなく極上の味となる。
(一番美味しい時に食べたいよね)
くすりと笑ったことさえ無かったことにして、何食わぬ顔でふたりの元へと戻る。やっぱり誰も居なかったよ、と素知らぬ風に言い放ち、水底の花畑を指し示す。
「あっちにすごく綺麗な珊瑚があったよ。見に行かない?」
「うん、行きたい!」
弾んだ声を上げ、実際に弾んだ足取りで珊瑚の花畑を駆けて行くアカリの小柄な背を追い、続けて駆けだそうとするロベルトの肩を、蘇芳は素早く引き寄せる。
「また今度遊ぼうね?」
ロベルトの耳に唇を寄せ、アカリには聞こえないように囁きかける。
(アカリ君が青い果実だとしたら)
蘇芳にとって、ロベルトは食べ頃の熟れた果実。
(美味しく食べないと、勿体無いよね)
耳元に蘇芳の甘い声を聞きながら、冷たい手で肩を掴まれながら、ロベルトは栗色の瞳を平然と瞬かせた。
「うん……また今度、ね」
ふたりきりの秘めごとを当たり前のように受け入れ、頷く。
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15人
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15人
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シナリオガイド公開日
2017年08月22日
参加申し込みの期限
2017年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年08月29日 11時00分
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