螺旋階段の家｜リアクション

螺旋階段の家

　数日後、学校の一角にて、屋敷野梢、志波武道、如月庚、上下左右の四人が、雑談から始まり、いつしか何とはなしにあの時の事件について話し合っていた。

「人の噂も75日……
　あの猫は、一体何日分の『噂』を代わる代わる食わされて続けていたんだろうな……」
　日常の雑談から『螺旋階段の家』の話へ、そして対象が三毛の猫又の話になったとき。
　庚は戦闘後からずっと、心の端に掛かっていた思いを落とした。それは、戦闘中からずっと差し伸べたかった庚なりの優しさだった。

　左右も複雑そうに、僅かに首を傾げて思いを乗せる。
「噂だけであのようになっちゃったんですの？
　……『生気や記憶を貪り食う』は、人からあの家の悪い噂を消そうとしていたのかもしれませんわね」

「卵が先か鶏が先か……噂が先か、という意味ですが」
　それを聞いて、事件からずっと、気分が優れない様子の梢が呟いた。
「あの怪異って、寄せ集め的な印象を受けるんですよね。
　『心霊スポットあるある』な話も、少なくありませんでしたし……」

　梢は俯き、思いを重ねていた結論を告げる。
「心霊現象目白押しすぎて──でももし、噂が先なら……
　あの猫はもしかして、この家と飼い主さんを悪い噂から守ってるうちに、とか……」
　出された言葉に、一同の間に重たい空気が湧き上がった。

　確かに、猫の本体は攻撃を避ける事もせず、尚ずっと死んだ主人の下に共に居続けていた。
　人の噂を発端にした事件──そう思うと、心に陰が落ちずにはいられない。

　生徒会長である武道が、それらを踏まえて真摯な様子で、口元に手を当てて考えた。
「何か、出来る事はないかな……？」
　武道の僅かに思い詰めた言葉を耳に、梢は何かを決めたように、強い意志で顔を上げる。

「──人の口に戸は立てられないですが、真実を広めることはできると思います。

『噂みたいな凄惨な事件、なかった』
『猫と飼い主が暮らしてただけ』とか。

　救いになるかは分かりませんが……何かしてあげたいです」

　心からの思いと決意。
　あの事件を経て、それを反対する者はいなかった。

　噂が消えるまでには、時間が掛かるだろう。
　しかし、いつかはそれが消え去ることをただ強く願いながら──

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

この度ご参加いただきました皆様、最後まで読んで下さいました皆様、誠に有難うございました。
この度、マスターを行わせていただきました冬眠と申します。

今回、ジャンルである『ホラー』も『バトル』も殆ど書いたことのない分野であり、いつもの事ながらいつも以上に震えつつ皆様のアクションをお待ちしておりましたが、そのどれもがとても個性的で、拝読して大変楽しませいただきながらも、精一杯執筆を行わせて頂きました。
少しでも楽しんでいただけましたら、この上ない幸いでございます。

それでは、また次回お目にかかれますことを、心より願いまして

↑ページトップに戻る