ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　上下左右は杖をリズミカルに突いて歩く。気ままにくるりと回って両手を広げた。
「今日から軽音部ですわ！」
　杖を楽器に見立てて陽気に弾いて見せる。その動きがピタリと止まった。生徒玄関の近くの外壁に小窓が作られていて、そこから黒猫が上半身を出していた。周囲の様子を窺うような姿に興味が湧いた左右は忍び足で近づく。
「逃げないのですわ。人に慣れていますの？」
　言いながら距離を詰める。一メートルを切ったところで左右は首を傾げた。しゃがんで顔を寄せると、杖を取り落して片手で口を押さえる。自身の膝を平手で何度も叩いて、堪え切れずに声を上げて笑った。
　大きな波を越えた。左右は目尻に溜まった涙を人差し指で拭った。
　小窓から覗く黒猫は外壁に描かれた精巧な絵であった。目立たない色で一文が書き添えられていた。
『猫だけにキャット声が出た？　By美術部』
　左右は杖を手に取って立ち上がる。一文を目にした途端、笑いがぶり返した。