ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

　猫の着ぐるみ姿で邪衣士は校内を彷徨っている。切っ掛けは突然にどっと押し寄せてきた。生徒達に押されて流され、気付けば一人になっていた。
「学校で迷うはずがない」
　明るい声でスタートを切った。腕を振ってずんずん歩く。生徒達に押されることにも慣れた。手にしたプラカードを掲げて、探検部をよろしくニャ、と愛想よく振る舞った。
　その態度は長く続かなかった。立ち止まることが多くなる。やたらと頭を動かして歩き出し、慌てて引き返す。その繰り返しが現状を大いに語っていた。
「……俺は迷ったのか？」
　だらりと下げた手からプラカードが落ちた。士の両膝が折れて地面に四つん這いとなった。
　――この状況は洒落にならない。先輩に勧誘の仕事を押し付けて俺が遊んでいるみたいじゃないか。探検部の部長だというのに……まさか、着ぐるみの視界がここまで悪いとは思わなかった。
　失意に沈む士に明るい声が飛んできた。
「新聞部なのだ！　ＮＭＲには不思議が満載なのだ！　とにかく校内新聞を読むのだ！　陸上部の勧誘に遅れそうなのだ～！」
　最後の方で本音が漏れていた。
「後木か！」
　士は急いで立ち上がる。後木真央が正面から走ってきた。胸には白晒。白褌をはためかせて左の腰辺りに新聞紙を携えていた。
　真央の姿を見て士の頭の中まで白くなった。
「……お、おおい、俺だ！　邪衣士だ！」
　一瞬で己を取り戻して声の限りに叫んだ。気付いた真央が笑顔で突っ込んできた。
「士ちゃん、探検部の勧誘なのだ？」
「そうだが、困ったことに」
「そうなのだ！　士ちゃんにも校内新聞をあげるのだ！　厳選されたＮＭＲが載っている号なのだ！　ドキドキワクワクの保証付きなのだ！」
「お、そうなのか？　じゃあ、貰っておくか」
　渡された新聞に目を落とす。視界が悪いので新聞を顔に近づけて読んだ。
「確かに面白いな。それで後木、迷子になった俺を部室まで……」
　真央の姿はなかった。士は新聞紙を畳んでプラカードを拾う。適当な方向にとぼとぼと歩き出す。
「探検部ニャ。よろしくニャ……」
　沈んだ声で放浪の旅へと戻っていった。