ラブ☆部活＆同好会デー｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会デー

【Ａ】作戦タイム（勧誘する側）
　ホームルームが終わると生徒達は一斉に動き出す。いつも以上に慌ただしい。教頭の突然の発表が多大な影響を及ぼしていた。朝礼の話によれば明日、部活と同好会による部員争奪戦が始まる。その行事（？）に否応なく、全員が巻き込まれることになった。
　三年十組も例外ではない。目まぐるしい動きを見せる。
　その中、席に着いていた桐野正也が頭を掻き毟った。
「いきなりかよ、こんちくしょー！」
　突発的な事態に付いていけず、半ば混乱していた。
「なーに叫んでんだよ、正也ちゃーん」
　軽い足取りで宇佐見望月が戻ってきた。幾つかの箱を胸に抱えている。
　目にした正也は威厳を取り戻すように姿勢を正す。
「今日、楽しみにしてた中継があったんだよ」
「その様子だと録画してねーよな」
「その通りだ。まぁ、それよりコピー機の確保はどうなった？」
　望月は八重歯を見せて笑った。
「こーちゃん先生に突撃して印刷機の使える時間を押さえてきたぜ！　それとこれが戦利品だ」
　胸に抱えていた物を正也の机にドカッと置いた。八色の油性ペンを収めた箱は五つを数える。
「備品で配られた物だから遠慮なく使えるぜ」
「それは助かるな。あとは用紙代だが、どうだった？」
「もちろん、聞いてきたぜ。こーちゃん先生の話では部費から出せるってさ」
　近くの空いている机の上に望月は腰を下ろし、得意そうな顔で笑って見せた。
　何か気掛かりなことがあるのか。正也は腕を組んで神妙な顔付きとなった。
「チラシのデザインとかは得意な奴らに任せるとして、体験入部の内容は考えないとな。それらの用意や確認も必要になる。あ、グラウンドの使用で揉めないように他の部に伝えておかないとな」
「そっちは任せるぜ。俺様は試し書きとかに使える紙を集めてくるか。ついでに陸上部の連中も集めてくるぜ」
　早速、行動に移す。望月は素早い動作で教室を出ていった。
「俺も動くか」
　正也は副部長らしく、真剣な表情で教室を後にした。

　教室に陸上部の部員が集められた。机を一箇所に集めて円陣を組むように座った。机の中央には廃棄寸前の紙が大量に積み上げられた。各々が油性ペンを手にしてデザインを考える。
　正也は正面に座っていた望月に目をやった。
「何かデザインの案はないのか？」
「そっちで話を進めてくれ。俺様は部室で回収した油性ペンのチェックで忙しいんで」
　中央の紙を一枚、無造作に引っ掴む。表を見た途端、気の抜けたような声を出した。
「あ、英語のテストのヤツじゃん。これ、ムズかったよなー」
　紙を裏に返して油性ペンの書き味を試す。正也は軽く息を吐いて自身の作業に戻った。
　デザインの案が纏まった。あとは宣伝用の文章を考えるだけとなった。汗臭いイメージを嫌った爽やかな文言が候補として紙に書き出されていく。
　突然、望月が立ち上がった。
「んがー、面倒くせーんだよ！　もっとズバーッと書け！　陸上部が部員募集してんだよ！　明日なんだよ！　それだけでいいじゃねーか！」
　小奇麗な言葉の上から油性マジックで書き殴る。端的な言葉は力強く、周囲の反応の上々であった。
　デザインと文章を組み合わせた宣伝用のチラシが完成した。油性マジックの色を最大限に活かした赤と青系、それと黄色に緑系の二種類となった。
　正也はチラシを手にした。
「印刷は俺に任せて、あとは各自で行う体験入部の内容を考えておいてくれ」
「そうだな！」
　望月のテンションは上がった。正也とハイタッチを交わす。その熱は他の部員にも移り、熱意の籠った議論が続けられた。

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