【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【赤の扉】突入

　アクラブ隊の残党は城塞の中に逃げ込もうと橋の方へ戻り始めたが、エイロス隊から分断して要塞近くに取りついていた蒼蝶隊によって阻まれた。
　駆けつけた樹は橋の先にある固く閉じられた門を見据えて念じる。
「あの門を瞬間移動できれば……ん、んんーーー！　重いっ！」
　動かない！　単純にそう思った。大きく分厚い城門を瞬間移動させるにはもっと経験が必要そうだ。
「仕方ないわね。こうなったら大量の火炎瓶で……」
　そういう樹の隣にいつのまにか月詠がいた。手にしたリモコンに手をかけ、樹を横目で見る。
「良かったらタイミングを合わせるかね？」
「えっと？」
「火炎瓶をぶち込むつもりなのだろう？　こちらもリモコン炸裂イモを仕掛けたところだ。やるなら同時の方が効果が高いと思うがね」
　『絵空事』で持ち込んだ大量の炸裂イモと、そのイモにアンテナアスパラを刺してリモート起動できるようにしたリモコン炸裂イモが、いつの間にか門の傍に大量に転がっている。
「よくわからないけど、わかったわ。一、二の三で合図して」
「了解。それでは……アン、ドゥー、トロワ！」
　月詠はリモコンスイッチを押し、樹は『箱庭（リトルガーデン）』で複数の火炎瓶をイモ上空に瞬間移動させる。リモコン炸裂イモが爆発し、衝撃でただの炸裂イモと火炎瓶も誘爆！
　爆発音と爆風があたりを襲う！
　亮が魔風の力で扉周囲に竜巻を起こし酸素を注入すれば、炎はさらに激しく門を燃やした。
　月詠は新田兄妹の念の入れように苦笑した。
「もう充分。そろそろ味方が通れるよう消火したいところだが、放水は可能かね？」
「任せて！」
　樹は指輪に宿した魔水の光で水を操り、消火活動を行う。鎮火すると、うち崩れ丸焦げになった門が姿を現した。門だけでなく、石橋の方も爆発で一部崩れてしまっていたが、月詠は飄々としたもの。
「結果オーライ。気を付けて通ってくれ」
　一歩下がって恭しく一礼する。後方に下がって近接戦闘はもっと得意な者たちに、という意思表示をすると、それに応えた如月庚が、崩れた石橋を飛び石のように渡って走り抜けた。
「新田、旅鴉、先に行かせてもらうぜ」
「如月将軍に、続けー！」
　屋敷野梢以下蒼蝶隊も後に続く。
「本陣の雑魚は後から来る部隊に任せましょう。私たちが狙うは黒獅子ゴンザレスですよ、如月将軍」
「将軍はガラじゃねぇって……何度も言わせんな。だが、お陰で士気が上がったか。お膳立てありがとうよ」
「いえいえ。こういうの、一度やってみたかったんですよねー」
　梢は肩を竦めてくすっと笑む。
「さて……いっちょ、私達のフツウを守りに行きますかー」
「おおよ……俺達の領域に土足で踏み入る奴らには容赦無しだ」
　行かせてなるものかと、城塞内を守る兵たちが飛びかかってくる。
　だが、大将の言葉を守って「徹底的にぶちのめす」気満々だった蒼蝶隊の仲間たちは二人を援護して暴れ、追いついてきたティクスはじめ十二支団のメンバーも、嬉々と剣や拳を振るいはじめた。
　後方からは旅鴉隊による最大射程距離から弓魔法優先での魔法射撃。
「弓や銃を使う敵を先に狙って。ティクス隊と連携するのよ！」
　ティオレ・ユリウェイスは旅鴉隊副将として魔火の使い手たちを指揮し、一方で切りかかってくる敵の攻撃は軽業師的身のこなしで避け、反対にダガーナイフで切り捨てる。
「ここはまかせて！　行ってゴンザレスとやらをぶちのめして来て頂戴！」
　ティオレの心強い言葉にうなずき、庚と梢は影兵たちには目もくれず走る。
　階段を駆け上り、回廊を抜け、玉座の間の扉を二人同時に蹴り開ける。
「いくぜ、相棒」
「はいっ」