異世界転生勇者系　～君のためのクロニクル～｜リアクション

異世界転生勇者系　～君のためのクロニクル～

■異世界戦士ストレイト！
「来たぜ、異世界」
　キリッとした顔で風雲児轟は振り返った。
　ここは始まりの村……とみせかけて冒険者たちの集う大都市である。
　さあてと異世界の平和を守ってみるかなと歩き出したところで、突如魔物が現われた。
　バッタと人間を無理矢理融合させたような魔物……っていうか怪人は、優雅なカフェテラスを破壊しながら突き進む。
「大都市トーキョはこのバッタライド様が制圧する。貴様らは大組織ジョーカーのしもべとなるのだ！」
「「そうはさせん！」」
　いかにも王宮騎士っぽい人たちが現われ、宝石をちりばめた箱のようなものに金の鍵を差し込んだ。
「「神交チェンジ！」」
　光に包まれた直後、彼らはバイク乗りが着るようなライダースーツとスリムなヘルメットのようなものに身を包み、怪人と戦い始めたではないか。
　それを見ていた轟は……。
「ほう、色々察したぜ」
　色々カットして、火花を散らして吹き飛ばされる王宮騎士っぽい人たち。
　トドメをさそうとする怪人を前に、轟はひとりで割り込んだ。
「逃げろ民間人！　殺されるぞ！」
「いや、俺は死なない。そして、お前に言いたいことがある」
　轟はびしりと怪人を指さすと。
「その力は、人々の平和のために、正義のために使うもんだぜ。セオリーは分かってるようだから、今から『正義のお手本』を見せてやる！」
　革グローブをはめ、拳を握り、見得を切るように構える。
「戦衣着装！」
　彼の身体が光に包まれ、晴れるとそこには白銀のスーツを纏った姿があった。
「貴様は誰だ！　どこに所属している！」
「一つずつ答えてやる」
　拳を突き出し。
「ザ・ストレイト」
　指を立てる。
「『ヒーロー』だ」

　それから、ザ・ストレイトこと轟は世界各地を渡り歩いた。
　ヒーローの力を誇示して民衆を支配するものを倒し。
　親の敵討ちのために犠牲をいとわないヒーローの暴走を止め。
　国の利益を取り合うためにぶつかるヒーロー戦争を鎮め。
　そしてそれらの裏で暗躍し、ひそかに魔王復活の儀を進めていた者の陰謀を暴き、今――。
「お前の悪事もここまでだぜ！」
　敵のアジトに飛び込み、黒幕へと指を突きつけた。
「どうやってここに！　外の戦力を突破できるはずがない！」
　うろたえる黒幕に、轟は笑う。
「皆気づいたのさ。『ヒーロー』の魂ってヤツにな」
　それは正義の心と人々への愛。
　この世界に生まれた全てのヒーローが持っていた適正であり、すれ違い続けた彼らが共通して持っていた魂であった。
「だから俺たちは解り合った。そして共に手を取り、戦う決意をした！」
「馬鹿な！　人間は愚かだ！　力におぼれ、狂う生き物だ！」
「ああ、だが美しい！　『戦衣着装』！」

　激闘の末、黒幕を倒すザ・ストレイト。
　しかし儀式は完成していた。大地を割って現われる巨大な影。魔王！
　集結した巨大ロボを、戦隊を、メタルヒーローをも巨大な爆発でまとめて吹き飛ばしてしまうその驚異に、ヒーローたちは次々と倒れていった。
「ここまでなのか……！」
「いや、まだだ。ザ・ストレイトがいる！」
　そう、仮面は割れ血を流し、立つことで精一杯の彼だが。
　だが、立っていた。
「世界は一つになろうとしてる。皆いい奴らだ。だから」
　だから。
「俺は諦めねえ！」
　手を翳す。
　すると、無数のヒーローたちの力が光となって集まった。
　女神から授かった救世の光。それはこの世界にちらばった神の力をひとつに集める一直線の希望。
　ザ・ストレイト・ウルティメット！
「うおおおおおお！」
　黄金の翼をはやして飛翔し、巨大な魔王を打ち破った。

　黒く覆われていた空は青く晴れ渡り、起き上がったヒーローたちと握手を交わす。
「行くのか？」
「ああ」
　挨拶は、それで充分だった。
　背を向け、歩き出す轟。
　光の粒子に包まれ、轟が消えていく。
　だが人々の魂の中に、轟の正義は生き続けるだろう。