異世界転生勇者系　～君のためのクロニクル～｜リアクション

異世界転生勇者系　～君のためのクロニクル～

■工藤転生デビルサマナーズ
　工藤来夢こと工藤信子は漫画家である。
　今日もひとつリアルなネタを取材しにいきますかとお外へ繰り出したところ、気づけば学校の屋上に寝転んでいた。
　あまりに前後の違いがありすぎるので夢でも見ているのかと思ったが、前後の違いというやつは想像以上にかけ離れていたようで。
「ここ……」
　具体例を示そう。
　空は淡く光る青紫の雲にびっしりと覆われ。
　三階以上のビルはことごとく倒壊し。
　テレビゲームの中でしか見たことが無いような悪魔的クリーチャーが二車線道路を闊歩している。
　車という車はひしゃげて壊れ、その上を巨大なドラゴンめいたものが通り過ぎていった。
　来夢は考えた。
　ここが元いた世界ではないこと。
　飛んだ記憶の中で女神的な存在と会話したような気がすること。
　超常の能力が自らに備わっていること。
　それらをふまえた上で。
「漫画のネタになるわね」
　目をギラリと光らせて、来夢はとんでもないことを言った。

　さて、王道にそうならば来夢はこのあと女神から授かった『世界のコードを書き換える』というチート能力を駆使して世界が滅んだ原因を突き止めーの打倒しーの解決しーのでエンディング、となるわけだが。
「勇者様なんてまっぴらごめんよ。この能力があればおもしろいことが出来そうだわ！」
　来夢は早速空飛ぶドラゴンを強制的に服従させると、背に乗って大空へと飛び上がった。
　たとえば初めてマッチを手にした子供は火の付け方すらままならないが、中には最初からマッチを擦ってたき火を起こす子供もいるという。その違いはひとえに想像力である。こうすればこうなるかな、という想像力が現実に即したとき、人は無限のパワーを得るのだ。
　こと想像力において、来夢はエキスパートであった。
「最高傑作を作りましょ！」
　右手を振れば、町並みが鮮やかに変化した。
「あたしがこの世界の神になるのよ！」
　左手を振れば天空が晴れ渡り大地に無数の山と柱が生まれた。
　組んだ両手を空に翳せば、この世界にいくつもの勇者の芽吹きが生まれていく。
「さあ、あたしに選ばれし勇者よ、それに従う悪魔たちよ、幾多の困難を乗り越えてあたしのところまで這い上がってくるといいわ！」

　ゲームスタート。

このページにイラストを設定する