奇襲！　ろっこん無効を打破せよ！｜リアクション

奇襲！　ろっこん無効を打破せよ！

●●●消失、ろっこん無効の拡大●●●
「日記にこれが完成した喜びが記されていたそうだよ」
「俺たちもこの容器の効能が書かれていたのを発見しました」
「イラストだけだけどね」

　研究用Bに示し合わせたかのように集まった面々で情報のやり取りをする。
　武道は大介と碧南が見つけたことを、刀と美咲紀は活動記録から。

「この短時間でよく…いや、白衣の勤勉さが仇となっただけか」
「中和剤や解除方法は見当たらなかったが、レシピは分かった」
「傀儡師ちゃんに聞いたけどもう手に入らないものを使ってるみたい」

　傀儡師が呟き、円と修は傀儡師からの情報を提供する。
　交渉に骨を折った訳では無かったものの、寝子島で匿うという2人の提案に悲しそうな笑顔を返していた。

「けどこれは…、壊すと中の子死んじゃう？」

　円の素朴な疑問は少しの静寂を呼んだ。
　考えなかったわけでは無いが、時に非情も必要であると認識していても浮かぶ疑問。
　それに対する答えを持っていた傀儡師でも、少しだけ寂しそうな顔をしていた。

「うん。白衣の話だと外気に触れると死ぬ。注射器で少しずつ取り出して使っていたみたい」
「ちなみに、俺らが使うとどうなる？」
「それは知らない。我々の力は対象ではないとは聞いている」
「なら悲しいけど、ここで破棄しちゃうのが一番ってことかなー」

　最初は傀儡師を警戒していた刀と武道だが、敵意がないことを感じていた。
　刀の質問にもぶっきらぼうながら答え、それを聞いて武道は破棄を推す。

「私が壊しちゃいます」

　寝子島から持ってきたバットを片手に発言したのは美咲紀。
　修とのトランシーバーでの連絡は研究所の妨害なのか、ノイズのせいで役に立たなかった。
　しかし、今やるべきことは分かっている。
　できるだけ周りに飛ばないように配慮して、上段に構え振り下ろす。

　思い切りが良かったはずだが、バットが当たる鈍い音のあとにパリン、と音がして中身が漏れていく。
　同時に子供の泣き声のような音が響く。

「これでろっこん無効の露出は防げたってことかなー」
「ああ。だがまだ大仕事が残ってる」
「だね、シュー君。白衣の頭の中のデータも処分しなきゃなのです」

　見届けた者たちの表情は様々だが、武道は素早く切り替えた。
　修と美咲紀、他の者たちも感じている白衣の危うさ。
　今回の方法が使えないとしても、別の方法が確立されることは防がなければならない。
　意を決して大部屋Bへと向かっていく寝子島のもれいびたち。

●●●研究の成果は塵に●●●
「大体こんな感じかなー、あとは燃やしちゃおうー」

　碧南は書類を次々と燃やしていた。
　寝室が終わり、研究用Cに赴き、研究用Aに来ていた。
　隣の部屋では何か物音が聞こえた気がするが、碧南の目的はろっこん無効の研究成果。
　大介が見つけたものは研究の結果ではあるが、研究過程なんかは別々で管理しているかもしれない。

「それに、こういう悪だくみは他にもやってそうだもんねー」

　普段から鍛えた体力を遺憾なく発揮し、多少重いものでも何のその。
　換気を忘れず燃えるものなら燃やし、壊せるものは壊す。
　ろっこんや星の力などの不思議な力がなくとも、役に立てるのだと言い聞かせながら。

「んー、この部屋のも開かないなー。燃えそうにないし、捨てちゃおう」

　鉄のような素材でできた、宝箱のような形をした大きめの入れ物。
　鍵がかかっているようで、燃えもしないと判断して窓の外へと捨てていく。
　奇しくもそれが、『緊急崩壊』の要であると碧南が知る由もなく。

　次は研究用Bだとばかりに廊下に出るも、ちょうど出てきた刀達。
　既に破壊するものはないと言われ、戦闘が少なそうな大部屋Aに移動していった。