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政治経済特殊講義 ～需要と供給と金儲け～
【真辺 伸幸の場合】
「特定の状況下ねぇ」
伸幸はのんびりとプリントを前にして考えた。
「ぬんっ、とりあえず書きこんでみるかねぇ」
そう言って課題を提出した。
ちなみに、途中先生に質問しようとしたが、妙なすれ違いがあってできなかった。
そしてとうとう伸幸の出番がやってくる。
「真辺」
「はい～」
若干間延びした声を出しつつ立ち上がる。
とりあえず、プリントを一時返却してもらい自分の案をしゃべる。
ちょっと自信が無かった伸幸だが。
「ちょっと自信が」
という伸幸に松沼先生はこういった。
「失敗してもいいから言ってみろ」
というわけで、伸幸は自分の案をつらつらと述べていく。
一生懸命なのか敬語が時折素に戻っている。
「女性へは『これ1本でサプリメントを取ったのと同等の効果がある水ですよ』と言います。次に、ホームに座る男性へは座ったままで不自由な足を動かさずに買えると云う利点を売りします。サラリーマンの男性へは『会議で使用するお茶やミネラルウォーターはもう買われました？ えっ、まだ買って無い？ でしたらコレなどどうでしょう。あ、電車が来ますよ！ どうします？』と問いかけます」
「それぞれに対応する形で考えてきたと」
松沼先生の問いかけに頷きつつも伸幸は続ける。
「中年のおばさんには『こちらをお使い下さい。お子様が熱を出されているようでしたから…お代は次会った時で結構ですよ』で、お礼+お代+αを狙ってみる」
ふむふむと松沼先生は聞いている。
「女子高生へは『新発売なんですが……お友達と一緒にためしてみませんか？』で、試飲してもらって『みんな買ってるから』の流れでまとまった量の購入、と。ぬ？ 売るの1本だけだっけ？」
「一本だけだな」
伸幸の疑問に、松沼先生はそう返す。
「ぬんっ……そうでしたか」
「まぁ、そんなところだな」
と、松沼先生はストップをかける。
「前半は置いておいて、後半のおばさん以降は需要をある程度見ているとは思ったが、特に付け加えることはない」
そう言いつつ、出席簿に『可』とつける先生。
「先生、こんな感じでいいんですかー？」
そうやって問いかける伸幸に松沼先生は少し考えてから言う。
「及第点といったところか」
それだけを松沼先生は言った。
【御剣 刀の場合】
「水を出来るだけ高く売る……需要と供給のバランスを出来るだけ高額な所でとりなさいって所か」
課題の開始時点で刀はすでに問題の本質を考えていた。
「これ、基準は自販機で売っている百円の水になるな。それ以上の金額で売るには相応の価値が必要になる」
そうつぶやいてプリントに目を落とす刀。
「相応の価値を提供する、それを踏まえて書こう」
こうして、課題は提出されたのであった。
「ふむ、これは説明の方が早いな。説明してもらおう」
「わかりました」
そんな風に刀に順番が回ってきた。
「交渉するのは中年のおばちゃんだな？ なぜだ？」
「混雑をしている駅のホームに顔を赤くした女の子を連れているという事だけど、その女の子が電車に乗ってしまうのは危険です。女の子の具合が悪くなってしまった場合、おばちゃんだけで対応するのは難しいし、最悪電車を止めてしまうかもしれない」
松沼先生は黙って刀に続きを促す。
「先ずはおばちゃんに女の子の顔が赤いけれど具合が悪そうだから、どこかに座らせましょう、と声をかけます。その時に先ほど危惧した事も説明して電車に乗れなくても乗った後の危険性を考えればここは休ませるべきだ、と話をします」
「ほほぅ、それでどう水を売り込む？」
「体温を下げる為の取り組みに少しお金がかかるけれど良いですか？ と許可を貰い。ペットボトルの水でハンカチを濡らし、顔を拭いて気化熱で体温を下げようとしたり、水を口に含ませて水分補給をしようとしたりします」
刀はゆっくりと説明する。
「つまり、ただ水を売るのでは無く、状況を見て水に付加価値をつけて売り込みます。結果的に水が高く売れたことになります」
「授業の内容に即しているし、その回答は一つの模範解答になるな」
刀が説明を終えて座ると、松沼先生がそう付け足した。
「よろしい」
そう言って、次の生徒の名前を呼ぶ松沼先生。
（実際に想定した場面なら金要らないけどね……）
そう考えたとき、あることに刀は思い至る。
（……経済とはなんて冷たい世界なのだろう）
だがしかし、そればっかりでは世界は回らない。
それもまた事実であり、その疑問は誰もが気づかないふりをしている。
刀は経済に対し今後どう思い、変わるかはわからないが、どうしようともおそらく誰も彼をとがめないであろう。
出席簿には『良』と書かれた。
「特定の状況下ねぇ」
伸幸はのんびりとプリントを前にして考えた。
「ぬんっ、とりあえず書きこんでみるかねぇ」
そう言って課題を提出した。
ちなみに、途中先生に質問しようとしたが、妙なすれ違いがあってできなかった。
そしてとうとう伸幸の出番がやってくる。
「真辺」
「はい～」
若干間延びした声を出しつつ立ち上がる。
とりあえず、プリントを一時返却してもらい自分の案をしゃべる。
ちょっと自信が無かった伸幸だが。
「ちょっと自信が」
という伸幸に松沼先生はこういった。
「失敗してもいいから言ってみろ」
というわけで、伸幸は自分の案をつらつらと述べていく。
一生懸命なのか敬語が時折素に戻っている。
「女性へは『これ1本でサプリメントを取ったのと同等の効果がある水ですよ』と言います。次に、ホームに座る男性へは座ったままで不自由な足を動かさずに買えると云う利点を売りします。サラリーマンの男性へは『会議で使用するお茶やミネラルウォーターはもう買われました？ えっ、まだ買って無い？ でしたらコレなどどうでしょう。あ、電車が来ますよ！ どうします？』と問いかけます」
「それぞれに対応する形で考えてきたと」
松沼先生の問いかけに頷きつつも伸幸は続ける。
「中年のおばさんには『こちらをお使い下さい。お子様が熱を出されているようでしたから…お代は次会った時で結構ですよ』で、お礼+お代+αを狙ってみる」
ふむふむと松沼先生は聞いている。
「女子高生へは『新発売なんですが……お友達と一緒にためしてみませんか？』で、試飲してもらって『みんな買ってるから』の流れでまとまった量の購入、と。ぬ？ 売るの1本だけだっけ？」
「一本だけだな」
伸幸の疑問に、松沼先生はそう返す。
「ぬんっ……そうでしたか」
「まぁ、そんなところだな」
と、松沼先生はストップをかける。
「前半は置いておいて、後半のおばさん以降は需要をある程度見ているとは思ったが、特に付け加えることはない」
そう言いつつ、出席簿に『可』とつける先生。
「先生、こんな感じでいいんですかー？」
そうやって問いかける伸幸に松沼先生は少し考えてから言う。
「及第点といったところか」
それだけを松沼先生は言った。
【御剣 刀の場合】
「水を出来るだけ高く売る……需要と供給のバランスを出来るだけ高額な所でとりなさいって所か」
課題の開始時点で刀はすでに問題の本質を考えていた。
「これ、基準は自販機で売っている百円の水になるな。それ以上の金額で売るには相応の価値が必要になる」
そうつぶやいてプリントに目を落とす刀。
「相応の価値を提供する、それを踏まえて書こう」
こうして、課題は提出されたのであった。
「ふむ、これは説明の方が早いな。説明してもらおう」
「わかりました」
そんな風に刀に順番が回ってきた。
「交渉するのは中年のおばちゃんだな？ なぜだ？」
「混雑をしている駅のホームに顔を赤くした女の子を連れているという事だけど、その女の子が電車に乗ってしまうのは危険です。女の子の具合が悪くなってしまった場合、おばちゃんだけで対応するのは難しいし、最悪電車を止めてしまうかもしれない」
松沼先生は黙って刀に続きを促す。
「先ずはおばちゃんに女の子の顔が赤いけれど具合が悪そうだから、どこかに座らせましょう、と声をかけます。その時に先ほど危惧した事も説明して電車に乗れなくても乗った後の危険性を考えればここは休ませるべきだ、と話をします」
「ほほぅ、それでどう水を売り込む？」
「体温を下げる為の取り組みに少しお金がかかるけれど良いですか？ と許可を貰い。ペットボトルの水でハンカチを濡らし、顔を拭いて気化熱で体温を下げようとしたり、水を口に含ませて水分補給をしようとしたりします」
刀はゆっくりと説明する。
「つまり、ただ水を売るのでは無く、状況を見て水に付加価値をつけて売り込みます。結果的に水が高く売れたことになります」
「授業の内容に即しているし、その回答は一つの模範解答になるな」
刀が説明を終えて座ると、松沼先生がそう付け足した。
「よろしい」
そう言って、次の生徒の名前を呼ぶ松沼先生。
（実際に想定した場面なら金要らないけどね……）
そう考えたとき、あることに刀は思い至る。
（……経済とはなんて冷たい世界なのだろう）
だがしかし、そればっかりでは世界は回らない。
それもまた事実であり、その疑問は誰もが気づかないふりをしている。
刀は経済に対し今後どう思い、変わるかはわからないが、どうしようともおそらく誰も彼をとがめないであろう。
出席簿には『良』と書かれた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年06月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年06月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年06月27日 11時00分
