「今日は経済だな、教科書の準備はいいか?」
そう言って、政治経済の先生である松沼 忠秀はクラスを見回した。
「先生、神木君がいません」
席が比較的近かった
浮舟 久雨がそのことに気がついて手を上げてから発言する。
「彼はいいんだ。そろそろ着くだろうしな」
そうっ言ってさっさと教科書を開く松沼先生。
「それはどういう……」
久雨が言ったか、言い終わらないかのタイミングにがらっと教室の扉が開いて、段ボール二箱を持った
神木 煉であった。
「ご苦労」
「……ここに置いておきます」
そう言って、段ボールを松沼先生の近くに置いて自分の席に戻る煉。
とたんに、段ボールの中身について生徒は議論を交わす教室。
「……何を運ばされていた?」
「……たぶん、中身はペットボトルだ」
「何に使うのだろうか……?」
「さぁ?」
久雨と煉もぼそぼそと話す。
そんな風にざわざわと騒がしくなった瞬間であった。
「静粛にッ! 授業中だ!」
松沼先生のよく通る声が教室中に響き、しんっとなった。
「さぁ、まずは先週のおさらいだ。授業科目は需要と供給。まず、この基本理念を延べよ。……浮舟」
「はい、需要と供給とは、消費者側の買いたいという意欲と、生産者側の売りたいという意欲を指します」
がたっと立ち上がり、すらすらと応える浮舟。
「よろしい。では、この両者の意欲が一致するところをいわゆる均衡と呼ぶ。教科書にあるそれぞれ需要と供給の曲線の交点を均衡価格と呼ぶ……相手の需要が大きければその分供給する側が値段を上げることにより両者のバランスは一致する。ここまでは前回説明したな?」
その言葉に頷く一同。
「よろしい。では、今回は政治経済の授業の一環としてこの均衡価格を自らの手で作り出してモノをより高く売ることを考えてもらう。手っ取り早く説明しよう」
そう言って、段ボールを明け、ペットボトル500mlの水を取り出す先生。
「この水を最も高く売りつける方法を考えてもらう……需要と供給の応用だ」
そう言って、プリントを配る先生。
「なお、この水は持って帰りたい奴は勝手に持って帰っていいぞ」
その一言とともに全員はプリントと向き合った。
どうも、じんのです
今回は経済分野で書きます
まぁ、どちらかというと本格的な議論ではなく
お遊びの範疇ですので
色々と企んでみてください
松沼・忠秀 (まつぬま・ただひで)
政治経済の先生
三四才の男性
経済と政治を教える先生で非常に厳しい先生
顔もそのまま厳しめの顔をしている
二児の父で車通勤
欠点として正論家、一部にしか通じない冗談を言うなど
美点としてはまじめで勤勉、規則正しい
・今回の課題について
今回の課題は
「特定の条件下において配布されたペットボトルの水を少しでも高く売ること」です
*状況!
朝、混雑した駅のホームでたくさんの人がいる
その中でどこにでもいる赤の他人にどう売るか
しかも、すぐそばには自動販売機で水が100円で売っているが
自分の持っているペットボトルの水も高く売りたい
さあどうする?
という状況になります
*交渉相手
・OL風の女性(少し目の下に隈ができている)
・一人駅のホームに座る男性のお年寄り(足が不自由に見える)
・サラリーマン風の男性(高いスーツを着ている)
・中年のおばちゃん(なぜか顔の赤い小さな女の子を連れている)
・お嬢様学校っぽい女子高生(グループでおしゃべりしている)
彼らに対してどのような交渉を行うかをプリントに記述
その後先生が評価します
・そのほかアクションについて
教室では簡単な会話程度は松沼先生が許可を出します
ただし、グループを組んだ場合や、授業に即した内容のみです
それ以外の会話が聞こえた場合は直ちに中断させます
以後、連帯責任として全員に会話を禁じます
*この授業は全学年、全クラスの生徒が参加できる授業です