双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―｜リアクション

双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―

承：お姫様との戯れ……というには……。

　スピカ・フォーツが巻き起こした大魔法が、マグマの一部を凍らせてステージを広げる。それが、戦いの火蓋を切って落した。
　ケイファは幾筋もの炎を飛ばし、後方に居るメンバーを狙ってくる。とくに戦場を氷原に変えたスピカを狙って。

「させねぇよ！」

　スケバンスタイルの新田樹が前に立ちはだかり、『挑発』して攻撃対象を自分へと変えさせる。金髪が炎に輝き、勇ましい横顔が照らし出される。
「ほいじゃま、勝負だねぇ」
　とのんびりとした口調と対照的に素早く矢を番え放つ黒兎都。集中アップスキル『コンセントレート』で強化された一矢が炎を打ち消す。
（阿修羅っていうからには戦神様。舞う様な戦いぶりはさながら風に舞う胡蝶、かもね。攻撃頻度、スピード、威力ともに油断ならんだろうし……）
　繰り出される炎を次々と打ち抜きつつ、都は考察を巡らせる。
　その間に、炎をすり抜けるように２人の飛び掛る。片手剣二刀流の御剣刀と赤装束姿の夜海霧楓だ。彼らは熱風を物ともせず軽やかな動きでケイファを切りつける。
　ケイファからの反撃を避けるように下がれば、今度は拳闘士たちが襲い掛かる。後木真央はケイファの姿に思わず口笛を吹きたくなった。
「おぉー、かっくいーのだ～♪　うっかり似ているお友達の名前を言いそうになったけど、ここではケイファさまだったのだっ」
　連続蹴り込みを腕狙いで叩き込もうと跳ね除けられるも、猫のような身軽さで着地する。その隙に羽生碧南と屋敷野梢が連続攻撃を仕掛ける。特に梢は武器を使用せず攻撃が斬撃となる『胡蝶拳』を使い、炎の腕にも屈せず攻撃する。
（じゃあ、手合わせ願おうか！）
　七峯亨はその間に己のろっこん『縮身』を使って小さくなって接近。狙うは拘束具だ。
だが、彼が小さくなって接近している事などケイファは気づかない。なぜなら……。

「ケイファ、退屈だったんだよね？　わたしも退屈って苦手なんだー。だからね……、その分めいっぱい楽しんで欲しいな！」

　薄野九月が楽しげに語りかけながら強烈な一撃を見舞う。それを受け止め、跳ね除けたところへ再び真央と刀が攻撃を繰り出す。
「この炎ってこれで打ち返せないかなー。やっぱり無理っぽい？」
　そういいながらも炎を打ち消し、ケイファへ『ぷち☆めてお』で殴りかかる白真白。彼女は自分の防御力、ステータス異常耐性を大きく下げた上で攻撃力を大きく上げるスキル『テュールの加護』を使用した上で攻撃していく。
　故に、ケイファの意識が縮んだ拳闘士に向くわけが無かった。
「こっちだ！」
　亨がクリティカル率上昇のスキル『アートオブハント』を発動させ鋼爪を交えた攻撃で拘束具を狙う。ケイファが周囲をめぐらせれば、跳ね除けた九月たちが再び向かってきている。その中には金髪を靡かせ、バットを手に突貫をかける樹の姿が……！
　ケイファはくすり、と笑うと背中から生えた炎の腕で亨たちを抱きしめようとした。『阿修羅の腕』だ。
「危ないっ！」
「今、回復します！」
「こっちは任せろ！」
　恵御納夏朝と塔ヶ崎璃亜、水守流が手分けして前線組の回復に勤しむ。その間に、先に攻撃していた者たちをすり抜け、樹は不敵に笑って『挑発』。その上で威力より命中率を重視した『速打』を繰り出す。
「スピカちゃんのお陰でマグマの上も走れるのか！　地形変更便利すぎ！」
　桜庭円が『鋼の左腕』を召還しケイファを攻撃する。真白の攻撃に合わせ出現する機械の腕は迫力満点である。ケイファはそれを避けきれず僅かに怯む。
「結構容赦ないな……」