双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―｜リアクション

双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―

　そう言いながら新田亮が『地竜の鱗』で前線組のダメージ軽減を狙う。一方、八神修は水や氷の魔法を強化する魔法陣を展開し、着ぐるみさん（旅鴉月詠）がうさぎの耳をゆらしながらノリノリでドラムを叩く。彼女が繰り出すのは水土奏『眠れる龍脈』という物で防御力を上げ、継続回復を行う魔曲だ。ちなみにスピーカーを召還し演奏範囲を広げる『反響』も使用済みだ。
「その魔法、玄人好みのような気がする……」
　修の呟きに着ぐるみさんはどやっ！　とした顔。だが内心では

　(・ω・)＜打楽器が似合うと思うんだ。和太鼓やガムランがいいかもしれない。

　とか思っていたりもする。
「……これ、嬉しい……」
　修の発動した魔法陣のお陰でスピカが扱う水（氷）魔法は威力が上がっている。そのため『銀界ニブルヘイム』による戦場変更も延長できるようだ。彼女は『氷宿フロスヒルデ』で氷の盾を呼び出し、周囲にめぐらせつつ集中している。
　そんな彼女と念のために、と周辺の魔導士たちに『水晶は塵を受けず』（以後『水塵』と略す）という一定時間継続的にＨＰ・ＭＰを少量ずつ自動回復というスキルを添付しているのは鷹司凜太郎。彼はスピカを優先的にしつつも援護する形で身構えている。
（これでも目は良いし、観察も得意なんだ。これを生かしてみんなの状態やＨＰの把握に努めよう）
　周囲を観察しながら、凜太郎は下がった前線組を回復し、ケイファの動向も見守る。と……、彼女がくすっ、と笑った途端まばゆい光が空間に溢れた。凍りついた床が、光を反射してよりまばゆく、身を焦がすような熱を一瞬だけ感じる。

（しまった！　『日照りの庭』……？！）
　誰もの足が竦む中、樹がなにかを察知してバットをフルスイング。『殴打』で軽く何かが跳んだ感触に、樹が叫ぶ！
「ケイファはここだ！！」
　まだ目が開けられない者は樹の声を頼りに動く。
「うわっ、真横に来てた！！」
　円が瞬時にごつごつとした機械人形の腕を呼び出す。真白も思いっきり『ぷち☆めてお』を振るい、それに続いて『鋼の左腕』のロケットパンチで距離をとりつつ攻撃を行う。軽戦士と拳闘士が素早い動きで向かおうとすれば、ケイファは炎の腕を広げて迎え入れる。

　(・∀・)　＜今やらないでいつやるの？

　着ぐるみさんが咄嗟に曲を敵の敏捷性を下げる土奏『スタンビート』へとチェンジし、小さくなっていた亨は近くにいた梢の衣服に捕まって炎の腕の抱擁を免れる。
「うわぁっ！？　熱いのがくる！」
「一旦離脱ですよ！」
　九月がエアブレードを唸らせて下がり、梢が向かっていた者たちへ下がるように指示を飛ばす。その間にも都は何発もの矢を放ち飛ばしてくる火を打ち落ちす。同時にあらぬ方向へ矢を飛ばしておき、特殊な鉄線を壁に打ち込んでおく。
「レイドでの回復のコツは『治癒術をかぶらせない事』だ！」
「はいっ！」
　流にコツを教えてもらった璃亜が彼と手分けしてケイファ周辺に居た者達を治癒していく。入れ替わりに、亮が槍を振るいケイファへと向ければ地面から尖った岩が出現しケイファを傷つける。発動した『隆起槍』で出現した岩の影に身を隠し、怯んだ隙に真白が三度特攻をかければ、あわせて楓が軽やかな身のこなしで岩を蹴り、飛び掛った。
「これはこれでいい足場ゲットなのだ！　亮ちゃんに後でどれだけ持つか確認なのだ」
　真央がローラーブレードで岩を滑り、勢いよく蹴り上げる。
「考える頭があるなら拳闘士やってないのだ。いって行って逝きまくりなのだ～！……ありゃ？」
　と、連続攻撃を続けていたら思いっきり空ぶる。どうやら避けられたらしい。ケイファはそんな真央に微笑み、腕を払えば重力波で周辺に居た者たちが吹き飛ばされる。
　夏朝は回復術を発動させる。遠くの者には『ふわふわきんねこヒーリング』（以下金猫と表記）を飛ばし、それに併走するように下がっていた碧南が身動きを止めていたケイファへと駆け上がる。