双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―｜リアクション

双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―

「私も火力職にだいぶん慣れてきましたねー。ほあちゃーとがんばりますよ！」
「碧南ちゃんも梢ちゃんも拳で攻めるのだ？　真央ちゃんも一緒なのだ。蹴りまくるのだー！」
　そんな２人に反応したのは、後木真央。猫のような笑顔の彼女もまた拳闘士らしい。彼女の発言どおり武器はローラーブレード。見事な連続蹴りを見舞ってくれる事だろう。
「今回も気が抜けない。ケイファを解放し信頼を得たら、この先にあるだろう難関攻略の鍵にもなる筈だしな」
　装備を点検しながら八神修が言えば３人は頷く。彼らが望むのは、浮島。そこにケイファはいるのだ。
「……勝つぞ、この戦い」
「勿論ですよ」
　修の呟きに梢が不敵に微笑み、碧南と真央もまた力強く頷いた。彼らの横顔に怯えや不安は無い。

「暑い……。暑いのって苦手……」
　そういいながらヘルウルフの毛皮で出来た猫なローブに装備を変える恵御納夏朝。彼女は耐熱ポーションを口にしつつ周囲の状況を警戒していた。ろっこんの発動トリガーとなるねこシールに余裕があるのを確認していると、装備の確認をしていた水守流と目が合う。
「大丈夫か？　耐熱ポーションを飲んでるみたいだし、装備もヘルウルフの毛皮製っぽいし、そのうち楽になると思う」
「だといいけど……」
　流の言葉に夏朝は額の汗を拭いつつ頷く。彼女は徐にねこシールを取り出すと、流に見せた。
「僕のろっこんで体を軽くできるんだ。石を渡る時に使ってみる？」
　気にかけてくれたお礼だろうか？　夏朝の問いかけに流は少し考える。彼と夏朝は今回治癒士での参戦だ。体力は少しでも温存しておきたい所である。
　と、流が考察していると声をかける者がいた。赤い装束の軽戦士、夜海霧楓である。
「ずいぶん軽装に見えるが……？」

（流の装備：イメージ）

　一見普通の服とヒノキの杖に見えた楓が、不思議に思い流に問う。と、彼は「これ？」と軽く衣服を摘んでみせる。
「初心者装備に見えるだろうけど、この耐火服は火傷になる確立を減らしてくれるし、案外いいものだぜ？」
　流がにっ、と笑えば楓は「そうなのか」と感心する。そうしながらも脳裏によぎったのは、コズエルからの依頼だった。

　少し離れた所ではスピカ・フォーツと鷹司凜太郎、御剣刀が準備を整えながら出撃の時を静かに待っていた。
（ここ、かなり暑い……）
　魔導士のスピカは頬を赤くしながらも、手にした槍を握り締めて立っている。耐熱ポーションは飲んでいるが、やはり視覚効果もあるのか暑いらしい。一方凜太郎は今回ジョブに治癒士を選択し、テテオの毛糸とヘルウルフの毛皮でできたローブを装備。その手には水属性を持つウィローの杖を手にしていた。
（今回は相手のスキルやフィールドを考慮しても回復役は必須だな。それに、水属性の攻撃魔法を使うスピカ君がヘイトを寄せやすいかもしれない）
　傍らのスピカを気遣いながら考察を巡らせ、ちらり、と刀も見る。彼も軽戦士であるため防御力は低い。それとなくカバーが必要だろうか……。
（防御力の問題は守護者の勲章とスキル『ガードブレード』で解決するとして、色々ポーションも準備した。他にも装備で使えそうなのは……）
　刀は天界の花や秘め事色のローブなどを装備しながらこの戦いへ闘志を燃やす。
　３人がそれぞれ色々と考えていると、軽快なメロディーが聞こえてくる。その正体を見、刀は思わずずっこけそうになった。

「……どうしたの？」
「いや、着ぐるみさんは健在だな、と」
　スピカの問いに刀が苦笑する。そう、兎の着ぐるみアーマーの『着ぐるみさん』こと旅鴉月詠がのりのりで浮遊展開した『土くれ色のドラム』を鳴らし、景気づけをしていた。

/) /)
( '人')ｳｻｧ

（おぉ、暑いねぇ。でもアイデンティティみたいなものだから、これは脱がない）
　無駄にきりっ、とした着ぐるみさんに刀は肩を竦めるも、そんな仕草も可愛いのでスピカは興味を示している。傍らの凜太郎はメロディーに耳を傾けつつも神経を研ぎ澄ます。
「そろそろ、時間か？」
　彼の問いに答えるかのように、マグマの海の向こうから声がする。

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