this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
【お花見】桜の下で待ち合わせ
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
63
つぎへ >>
ばん、と作業机に一枚の広告が叩き付けられる。机の上に満載の端切れや綿、ひとつひとつ緻密に作りこまれた布製の桜の花やマチ針満載の針山が小さく震えた。
「ねえサクラ」
寝子島シーサイドアウトレットの大観覧車が大きく刷られた広告を机に叩き付け、
ノア・ベルナールド
は菜の花のように明るい琥珀色した瞳を三角形にする。
布の桜花を幾つも連ねて花冠を縫っていた
酢酸 朔良
が驚いたように手を止めた。くまの浮いた若草色の瞳を持ち上げ、何だか怖い顔をしている血の繋がらない甥っ子を見遣る。
ぼんやりと見上げてくる叔父の言葉を待つことなく、ノアは唇を尖らせた。
「お花見行こうよ」
「花見……?」
無表情なまま、上げた瞳を手元に戻し花冠作りを再開する仕事中毒な叔父と視線を合わせるべく、ノアは作業机の前にしゃがみこんだ。机に手と顎を乗せ、椅子に掛け針仕事に余念がない叔父を睨み上げる。
「だってサクラ最近全然外出してないじゃん」
春休みが始まる前も、始まってからも、叔父はずっと仕事場である自分の店に籠っている。そうして自分がデザインしたテディベアや服飾小物、果てには物語に出てくるアリスやドロシーが身に纏いそうなドレスを一心不乱に作りこみ、店を飾り立てている。
放っておけば食事さえ忘れて針仕事に没頭する叔父のため、ノアは最近、三度三度の食事の度に叔父を呼び、時には叱り口調で入浴と就寝を言いつけている。
(そのうちぬいぐるみに埋もれて倒れちゃうよ)
万が一のその時をうっかり想像してしまい、ノアは唇を噛む。三歳のときに実母が死に、先に父と養母も事故で一度に逝ってしまった。養母の弟であり、血すら繋がらない自分を引き取ってこの家に置いてくれている、今は唯一の家族である叔父が居なくなってしまうことなんて、考えるだに嫌だ。
放っておけば寝食忘れて仕事をしてしまう叔父には休息が必要だ。それも早急に。
「別に行くのは構わないが」
そう前置きして、叔父はやっと仕事の手を止めた。
「俺も外出はしているぞ」
昨日はスーパーに買い出しに、先週は銀行に税金の振り込みに、と指ぬきをはめた指を折って数える朔良の顔の前、ノアはぐいと顔を近づける。
「……そういうのじゃなくて!」
「……そういうのじゃない?」
無表情に瞬く朔良に業を煮やし、ノアは机に叩き付けた半額チケットつきの広告をばしばしと叩く。
「とにかく! シーサイドアウトレットの大観覧車に乗るから! 出かける準備しといてよね!」
白金の髪を揺らし、自分の外出の準備に取り掛かる甥の華奢な背中を眺めつつ、朔良は机に置かれた広告を手に取った。『空から桜を見てみよう』の文字に、ちらり、首を捻る。
「花見と何が違うんだ……」
「ほら乗って!」
強引に寝子島シーサイドアウトレットに引っ張ってこられた挙句、同じく強引に観覧車に押し込まれ、朔良は観念して空へ昇り始めるゴンドラ内のベンチに腰を下ろした。
「これならサクラくらいものぐさで、でかけたがらない人でもいろんな場所の花を一気に見れるでしょ」
向かいのベンチに手提げ鞄を下ろして座りどこか得意げに笑うノアに、苦笑気味に頷く。重たそうな鞄は、道中どれだけ持とうと言っても頑として持たせてくれなかった。
(何が入ってるんだろうな)
「ほら見て! 山の方、一面ピンクですごくキレイ」
観覧車に乗り込んでも、折角の空からの桜を眺めるどころかどこを見ているのか分からないようなまなざしでぼんやりとする叔父に、ノアははしゃいだ声を掛ける。
(お花見って昔はママンが喜ぶからくらいの気持ちだったけど)
朔良の姉である継母は、春になる度、うきうきとお花見に誘ってくれた。その頃は継母がどうしてそんなに張り切るのかよく分からなかったけれど、誘われる側から誘う側になった今は、継母の気持ちが分かる気がした。
例えば、鞄の中に入れてきたお弁当が上手にできているかとか。
例えば、おにぎりに朔良の好きな具を入れたことを気づいてもらえるかとか。
そんな些細な、ともすれば日常に埋もれてしまいがちな小さなことも、お花見という特別な行事のおかげでいつもよりずっと楽しいことに思える。継母はきっと、これが楽しかったのだ。
育ての母と同じことを同じように楽しいと思えていることが、ノアには何より嬉しかった。
(それに)
それに、窓の外を見遣れば青空の下で満開に咲き誇る、
(サクラ)
叔父と同じ名の花。
島中を薄紅に染める桜を見ていると、ノアの心はちょっぴり温かくなる。
(なんか……)
ここに来るまでも、道を行く誰も彼もが嬉しそうに桜を見仰いでいた。彼らの口から聞こえる花の名を耳にする度、叔父が皆に褒められているようなくすぐったい気持ちに駆られ、うっかり笑ってしまいそうになったりもした。
(いや、まあ、うん)
ちらりとその叔父を見れば、肝心の叔父は相変わらず何を考えているのか何も考えていないのか、無表情に窓の外を眺めている。ひらりと空から迷い込んできた桜の花びらにひょいと手を伸ばし、掌に押し包んだそれをこちらに見せもせずにただ押し黙る。
それがなんだか悔しくて、ノアは唇を尖らせた。
(サクラがすごいのは手芸の腕くらいなんだけど!)
ノアが心の中で己に対する褒め言葉とも罵倒ともとれぬ言葉を向けているとは微塵も気づかず、朔良は眠たげな瞳を一層眠たげに細める。
宙に迷う桜を反射的に手にした途端、恐ろしいほど鮮明に、あの日のことが胸を過った。
――義理とはいえ母親の葬式だっていうのに、泣かないのか
ノアを初めて見たときに、まずそう思った。
喪服に薄い体を包んだ少年は、誰に何と声を掛けられようと、父と母の棺を目にしたまま唇も頬も微塵も動かさなかった。
喪服から覗く色素の薄い肌と白金色の髪のコントラストの、その人形じみて凄惨な美しさに、知らず肌が粟立った。
――これから……
彼と顔を合わせるよりも先に、決めていた。彼の親類にも話を通していた。血の繋がらぬ他人を引き取るのかだの、置いてもらえるだけでありがたいだの、耳障りな言葉を投げつけられたが、それはどうでも良かった。ただ、その言葉が彼に届いていないことばかりを願った。
それなのに、実際に彼を目の前にして、足が竦んだ。それほどに美しいと思ってしまった。同時に恐ろしいと思ってしまった。
両親の葬式という場にあってさえ涙を流さぬ、白と金の少年。
(この……化け物と暮らしていくのか)
心に零れた己の言葉の残酷さに、知らず唇が歪んだ。ふたりで暮らすこれから先を思って眩暈を覚え、知らず眉間に皺が寄った。
(ああでも、)
ふと思い直す。
(化け物は俺も同じかもしれない)
睡眠も食事もそれまで築いてきた交友も、全て犠牲にして一心不乱に働き続けた数年で、己の感情は悉く死んでしまった。殺されてしまった。その証拠に、大事な姉の葬式に立っても、涙の一滴も流れない。
乾いた瞳で美しい少年を見遣る。視線に気づいたか、少年が琥珀の瞳をもたげた。
(同じ人間を喪った化け物同士)
僅かな感情も浮かばぬ金の瞳に己を写し、朔良は化け物と化した己を哀しく嘲笑う。化け物同士であるのならば、もしかすると上手くやって行けるだろうか。
――お前がノアだな
少年の名を確かめ、己の名を名乗る。継母の旧姓を耳にして長い睫毛を上下させる少年の前に膝を折る。手を差し伸べる。
――……これからよろしく
伸ばした手を琥珀の瞳に捉え、少年はもう一度瞬いた。それでも、その瞳には何の感情も浮かばない。
あの時は、まだほんの幼い少年が両親を一度に亡くしたことや、口さがない大人たちの言葉を耳にしたことに衝撃を受けて感情を表す余裕も失くしているとは思いもしなかった。ただただ、彼の美しさと表情のなさにばかり心を奪われていた。
「あ、ほら、学校の周りにも結構咲いてるよ!」
弾んだ声を掛けられ、朔良は瞬く。
「サクラ?」
ひょい、と琥珀の瞳に怪訝そうに覗き込まれ、朔良は知らず忘れていた息を取り戻す。細く長く息を吐き出せば、向かいの席で僅かに不安気な顔を見せていた甥は安堵まじりにぷっと頬を膨らませた。
「……もう! ちゃんと人の話聞いてる?」
「……悪い」
ノアに叱られ、朔良は小さく詫びた。
「考え事をしていた」
「考え事って、……サクラってばホントにぼんやりしてるんだから」
呆れた口調で、けれどどこか楽しげに少年は笑う。
「ほら、サクラ! 見て!」
窓の外へと忙しく移る少年の眼差しは、
「……あの日、泣かなかった子供だとは思えないな」
「……ん、何?」
何か言った、と不思議そうに眼を丸くして振り返る甥に、朔良は緩くかぶりを振る。
「いや、なんでもない」
「何でもないならまあいいけど……観覧車から降りたらお弁当の時間だから。もう一周してる余裕はないんだからちゃんと見てよね!」
桜の花のように鮮やかな笑みを浮かべ、ノアは窓に白い額を押し付けるようにして眼下を彩る桜を眺める。サクラも、と促されて窓の外へと視線を移しながら、朔良は胸に宿る温かな気持ちにそっと息を吐く。
(笑えるようになったこいつも、)
それを見て穏やかな気持ちになった自分も、きっともう、化け物なんかではない。
<< もどる
1
…
3
4
5
6
7
…
63
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
【お花見】桜の下で待ち合わせ
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!