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【お花見】桜の下で待ち合わせ
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テーブルの上、白いカップが置かれた。
葉利沢 倫理子
の黒い瞳に、湯気とともにカップに注がれる熱い紅茶が映る。
温室特有の湿った温かな空気に混ざり、ふわり、ジャスミンの香が流れてくる。
ごゆっくりどうぞと微笑む中年の女性店員に軽く会釈する。一緒に供されたボリジの砂糖漬けを飾ったクッキーを手に取り、どこを見るともなしに上げた瞳に、窓の外の桜が見えた。
桜の若木を囲んでのお花見お茶会の席は様々な人々で賑わっている。
桜から少し離れた温室カフェ側にも先ほどまで誰かが居たのか、蓮池に近いテーブルを店員が片付けている。
本当は、星ヶ丘での用事を終えて桜花寮へ真っ直ぐに帰るつもりだった。どこからか流れてくる桜の花びらを眺めながら道を歩いていて、ふと、胸が詰まった。
唐突な吐き気と動悸に襲われ、よろけるように歩くうち、ローズマリーの鮮烈な香りを嗅いだ。見れば、ローズマリーの生垣の一角、まるで隠れ家を示すように『ねこの庭』と書かれた植物園への入口があった。
過呼吸の気配を感じながら平静を装って植物園の入り込めば、小さな温室カフェが目についた。外で行われているらしいお茶会の人込みに紛れ込む気にはなれず、人気のない温室カフェへと足を向けた。
ともかくも、どこかで休憩をとった方がいい。そう思って、カフェの隅のソファへと崩れるように身を沈めた。
(落ち着いてきていると思ったのに)
口の中でほろほろと崩れるハーブクッキーの甘さを感じながら黒い睫毛を伏せる。
ここ最近は、急激に体調を崩すこともなくなりつつあった。その上、過去の忌まわしい記憶がフラッシュバックすることも少なくなってきていた。
それと引き換えにするように、意識と記憶の双方を喪失することが増えた。
(三学期の始業式以来、よね)
あの日以来、己の中に蠢動するナニカを感じる。意識と記憶が失せるたび確かになる、
(私の中に誰かがいる)
そんな感覚。
それがいいことなのか悪いことの予兆なのか判断を下すことができぬまま、もうすぐ新しい学年が始まる。
カフェ出入り口近くのカウンターの向こうで食器を洗い始める小太りな中年女性店員の背中を眺める。
己の内にある感覚を、人に話す気にはなれなかった。通院する心療内科の主治医にさえも。
(話してもどうにかなるわけでなし)
投げ出すように思う。
それでも、意識の端で常に思う。
(私の中の誰かさん……あなたは、どうしたいの?)
話しかけても、己の内に応じる声はない。
己の内にあるどこまでも果てのない虚にむなしく語り掛けている気がして、倫理子は肩を落とす。過去の事件も、意識と記憶を喪失してしまうことも、束の間でいいから忘れてしまいたかった。
花の香のする紅茶を口に含む。砂糖漬けの青い花を齧る。口いっぱいに広がる甘さに、知らず頬が緩んだ。まだ笑むことが出来ることに気づいて、倫理子は息を吐く。
植物に囲まれてお茶を飲むうち、ざわめいていた心が静まってくる。苦しかった呼吸が落ち着いてくる。
けれどそれと同時、身を侵す毒のように思う。
(あの忌まわしい夜を迎える前の自分は)
お菓子を作るのが好きだった。作ったお菓子を家族に食べてもらうのが好きだった。
あの頃の無邪気な自分はもういない。
(壊された。穢された)
胸を焼こうとする苦悶を、頭を振って追い出す。蓋をし、心の底に沈めて殺す。
(こんなことを思い出したくない)
ずっとずっと、そう思い続けている。
ふと思う。記憶と意識が飛ぶのは、そう思い続けているからではないだろうか。考えかけて、その考えごと溜息にして心から追い出す。今はもう、何も考えたくなかった。
紅茶とクッキーを空にし、席を立つ。支払いを済ませて外に出れば、温室内とはまた違った春の空気が身を包んだ。
黄色い煉瓦が敷かれた道に佇む。植物園内を散策すれば、少しだけでも気持ちが軽くなるかもしれない。
お茶会の場から風に乗って迷ってくる桜の花びらを眼で追う。煉瓦の路に落ちては風に舞い上がり空へと跳ねた薄紅は、ローズマリーの生垣の秘密の入口を潜って『ねこの庭』に入って来た黒髪の少女の白いブラウスにくっついた。
楽し気に笑った少女は、ツインテールに結った長い黒髪を躍るように揺らして駆けだす。
「こんにちはっ」
腰と首元を飾る時計モチーフのアクセサリーを春の陽にきらきらと煌かせて礼儀正しく挨拶をする、少女は元気いっぱい、花と緑に溢れる植物園を駆けていく。
「今日は」
屈託などあるはずのない、あってはならない、やっと十代になったばかりのその背に、倫理子は穏やかな声を返す。少女の元気をほんの少し分けてもらったような、そんな気がした。
お気に入りの服のスカートが春風に翻るだけで嬉しい気分になれた。
星ヶ丘の邸に籠って大好きな時計をいじったり修理したりするのも至福の時間ではあるけれど、
(こんないいお天気だもん)
部屋の中でこもっているのももったいない。インドア派であろうと、
佐藤 瀬莉
はそう思う。
(おうちの庭には桜はないし)
お隣の庭に咲く桜はちょうど自分の部屋から見えるけれど、今日は外に出てお散歩しよう。もっと近くで桜を見よう。
そう決めて、お気に入りの服とアクセサリーを身に着けた。最近建ったばかりの自分の邸を後にして、星ヶ丘の街をのんびりと歩いた。母親にいつも言われるように近所のひとにきちんと挨拶もした。
星ヶ丘の街は、裕福な家庭が多いこともあってどの庭も綺麗に整えられている。ご近所の庭に咲く桜や鈴蘭、菫や山吹を楽しみながら気の向くままに歩いた先で、『ねこの庭』を見つけた。よく通りがかりはするけれど、中に入ったことのない植物園に誘われるように入って、
(うん、正解!)
瀬莉は黄色の煉瓦道を跳ねるように歩きながら笑う。
優しいクリーム色した花が満開の木香薔薇の通りのその先には、一本の桜の若木を囲んだお茶会が開かれていた。白いクロスのテーブルの上には銀で出来たケーキスタンドや薔薇が描きこまれたポットやカップが飾られ、大人な雰囲気の人たちが穏やかに笑いながらお茶を楽しんでいる。
(素敵!)
黒い瞳を輝かせ、少女は空いたテーブルにちょこんと腰掛けた。春の陽気と桜に誘われた時計の国のアリスが迷い込んできたようなその様子に、ポットを片手にお茶を注いで回っていた女店員が思わず微笑む。
「小さなアリス、お茶はいかが? 甘いクッキーもありますよ」
女店員からおどけて話しかけられ、瀬莉はおしゃまに笑う。
「くださいなっ」
花びらのように薄い陶器のカップに、桜の色した薄紅のハーブティーが注がれる。鮮やかに蒼い菫の砂糖漬けの飾られたクッキーをお供に、時計の国の小さなアリスは大人に混ざって小さなお茶会を楽しんだ。
ソーサーにちりん、と微かな音たててカップをそっと置けば、風に散った桜の花びらが舞い込んだ。薄紅の紅茶の水面でくるくると躍る花びらをしばらく眺め、瀬莉は黒い瞳を細める。
そうしながら思うのは、自室に置いている時計のこと。
(これをモチーフに時計をデザインできないかな)
きっと、とても可愛い時計ができるに違いない。
芝生の地面に届かない足をぶらぶらさせてご機嫌に桜を眺める瀬莉の視界に、ひょこん、と栗色の髪と栗色の瞳が覗いた。
「こんにちは。相席させてもらっていいかしら?」
ぱっちりとした瞳を笑ませる大人びた中学生のお姉さんから、大人に話しかけるように声を掛けられ、瀬莉はツインテールの黒髪を揺らして大きく頷く。
「うん、いいよ!」
人懐っこい明るい笑顔を見せる小学生の女の子に礼を言い、
時高 クレオ
は隣の席に腰を下ろした。なんだか妙に楽し気に注文を取りに来た女店員にほんの少し焦った顔をうっかり見せてしまいながらも、どうにかお姉さんらしい態度を崩すことなくおすすめのハーブティーを頼む。
「あなたも花を見に?」
背筋を伸ばして微笑むクレオにつられ、瀬莉も思わず姿勢を正して頷く。
「そう。植物園の良さがわかるのは大人の証拠よね」
ゆったりとしたまなざしで周囲の草花を見回し、どのテーブルからでもよく見える桜を眺め、
(……うんうん、クールだわ!)
背伸びをしたい年頃なクレオは内心でガッツポーズをとる。そもそも『ねこの庭』に来たのも、家でごろごろしながら何となく眺めていたタウン誌に星ヶ丘の植物園の記事を見つけ、なんとなくカッコいいかなと思ってやってきただけのこと。
何と言っても、クレオの中では植物園の良さがわかるのは大人の証拠。圧倒的に大人な証拠。
「こうやってのんびり過ごすのはいいわね」
春の風に撫でられ、ひらひらと花びらを優しく散らせる桜を眺める。桜の樹の根元に降り積もる薄紅を見つめて小さな溜息を吐いてみたりするも、
「お待たせしました、お嬢さま」
大人びた仕草は、女店員が甘い香りの紅茶と一緒に菫の砂糖漬けつきのクッキーを運んできた途端に崩れた。
「かわいい!」
「『ちいさなお茶会』セットです」
クレオと瀬莉、少女ふたりの可愛らしい取り合わせに思わずにこにこしながら、女店員がクレオの前にお茶会セットを並べる。
花びらを広げたようなカップとソーサーと空色した皿の上のクッキーをきらきらした目に映し、クレオは小さく首を傾げる。
「ちいさなお茶会……?」
聞けば、今日のこれは特別なお花見イベントなのだという。
桜が満開の今日だけですよ、との女店員の言葉に、クレオの瞳はますます輝いた。
特別なお茶会。なんて心躍る言葉だろう。
「楽しそう! クレオもお茶会したい!」
思わず口走ってしまってから、クレオは上気して桜色の頬を両手で抑えた。長い睫毛をぱちぱちとさせる瀬莉をちらりと横目で見、
「アフタヌーンティーをしながらお花見なんてオシャレよね」
取り繕って言ってみるものの、わくわくする心はもう抑えきれない。だって今ここに集っているひとたちは、特別なお茶会に集まったひとばかり。
(どんなひとたちなのかしら)
ハーブティーに口をつけながら、好奇心を我慢できずにキョロキョロと視線を巡らせる。
桜の樹を挟んだ向かいの席には、派手めの美人さんと地味めの美男子さん。パッと見は恋人同士のように見えたけれど、男の人の方がどこかしら遠慮している風にも見える。もしかしたら上司と部下の関係なのかもしれない。
お茶会会場の入口近くでは、女性とも見紛うばかりに優しい面差しをした見事な赤毛の男性が、通りがかったクールそうな眼鏡の女性に声を掛けている。
(おとな! 大人だわ!)
それぞれにお茶会を楽しむ大人な人々を少女らしいまなざしで観察し、クレオは心の中で喝采を叫んだ。
(だって、……だってだって!)
大人な人たちの間に混ざって同じようにお茶会を楽しむ自分は、きっとそのうちの一人に見える。かもしれない。
そんな風に考えて、クレオはにこにこと上機嫌になる。
「あ、シフォンケーキも食べたいわ!」
「あっ、あたしも!」
気分が昂るまま、うっかり大人ぶるのも忘れて両手をぱちんと打ち鳴らす。隣の瀬莉と共犯者じみた楽し気な笑みを交わし、少女たちはいつのまにやら花より団子。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
110人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月13日
参加申し込みの期限
2017年05月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月20日 11時00分
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