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【修了式】ラストスパートは華やかに
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ロベルトは全ての用事を済ませた。早足で二年八組へと向かう。
開いたドアから中を覗き込むと
丹羽 紅葉
が席を立ったところだった。学生鞄を肩に引っ掛けて横に結んだ髪に手を入れる。
「丹羽、迎えにきたよ」
「あ、ロベルト君。わざわざ、ごめんね」
「それより急いだ方がいいかもね」
「ちょっと待って。今回のカラオケは男の子が多いよね?」
聞かれたロベルトは自身の指を折り曲げて苗字を読み上げる。
「女子は丹羽だけかも。誰かが誘っていたら、もっといるかもしれないけど」
「同じクラスの胡乱路さんを誘ってもいいかしら? ロベルト君とも仲良いよね」
ロベルトは教室内に目をやった。
胡乱路 秘子
は窓辺に立ち、見える景色に微笑み掛けていた。
「そうだね。誘ってみよう」
二人は揃って秘子の元にいった。
ロベルトが代表して声を掛ける。
「胡乱路、少しいいかい?」
「エメリヤノフさん、わたくしに何か御用ですか」
振り返った秘子は口元に笑みを湛えている。
「打ち上げで皆とカラオケに行くんだけど、一緒に来ないか」
「カラオケですか。歌はいいものですね。是非、ご一緒させてください、んふふっ」
緩いウェーブの掛かった長髪を弾ませて秘子が二つ返事で加わった。
南校舎を出た
三宅 葉月
が東門を通って正門へと向かう。直線状の道を歩いていると
志波 武道
が早足で追い抜き、強引に上体を逸らして振り返った。
「その大人びた雰囲気、もしかして二年生だったりしなーい?」
「その通りよ。生徒会長、それで私に何か?」
「これから打ち上げのカラオケなんだけど、参加決定でいいよね☆」
「そうね……」
考えるように目を伏せた瞬間、葉月は連れて行かれた。武道は言葉通りに受け止めたのだった。
正門のところで全員が落ち合い、決めていたカラオケ店に移動した。
前に数人の客がいて少しの待ち時間ができた。武道は早口で最後の確認を取る。
「カラオケの部屋は個別じゃなくて、出来れば一つの大きいところがいいよね!」
「この人数なら、そうよね。空いてなかったらパーティールームを借りてもいいわ」
早坂 恩
は手を合わせて微笑んだ。他の者も同じ意見であった。
武道はキョロキョロと辺りを見回す。
「時計はどこかなー」
「私のスマホで時間を見るね」
スマートフォンを取り出した
丹羽 紅葉
が表示された時刻を武道に伝える。
「じゃあ、二時間で部屋に入って、足りなかったら延長みたいな感じでいいかな!」
「部屋と時間はそれでいいんだけど、ちょーっと俺が提案しちゃうよー」
ツーブロックの髪の側面を掻き上げた。
安本 マコト
が一同の関心を集める。
「長く歌うつもりならさー、やっぱ、飲み物はどうしても必要になるじゃん。だけどさ、個別で注文すると高いんだよねー。だから最初から飲み放題のドリンクバーを選んだ方がいいよって話。本当は常温の水が一番らしいんだけどねー」
その薀蓄に
音海 なぎさ
は感心したような眼差しを向けた。
「安本くんは物知りなんだね」
「っていうかー、俺って今はカラオケでバイトだから、先輩に教えて貰ったんだよねー」
「でも、ちゃんと忘れないで覚えてるから役に立つね」
微笑むなぎさは愛らしい少女のようであった。マコトは顔を上に向けて、惜しいなー、と少し悔しさを覗かせた。
「おっと、順番が回ってきたYO! じゃあ、皆の意見を取り入れて俺が手続きをパパーッと済ませるZE!」
「助かるよ。俺に振られたらどうしようかと思ったし」
もっさりとした前髪で
霧谷 朧
が陽気に言った。
「んふふ、何か秘密めいたものを感じさせます」
微笑みを絶やさず、
胡乱路 秘子
が朧の顔に目を留める。本人は手を振って否定した。
「ないって。そんな秘密は全然ないから」
「そうでしょうか」
秘子は一層、目を細めて言った。
フロントにいた武道が笑顔で一同に振り返る。
「一番、大きい部屋をゲットしたよー!」
短い歓声が上がる。武道が先頭に立ち、ぞろぞろと引き連れて移動を始めた。
一階の奥の角で足を止める。
「ここだZE!」
部屋に入った直後、どよめきが起こる。横長で二十畳くらいの広さを有し、大きめのクローゼットまで用意されていた。
部屋の中央にはガラス製の細長いテーブルが設置されていた。両側には同等の大きさのソファーがあり、その突き当りには特設のステージまで作られていた。
「俺は入り口に近いところに座るよ!」
背後の壁にはフロントに繋がる受話器があった。対面の壁にも同じ物が見られた。
「武道君が歌ってる時はオレが代わりに注文するねぃ」
呉井 陽太
が細めた目で移動した。紅葉が続く。
「私も向こう側で歌いながら、いろいろと注文もするね」
他の者達も適当なところに座った。
一同が席に着いたのを見て武道が言った。
「まずは飲み物からだね!」
「俺がドリンクバーに行ってくるんよ。その間は会話を楽しめばいいし」
座ったばかりの朧が立ち上がって早々に部屋を出た。
少し浮かれた状態で朧はドリンクバーにやってきた。
置いてあったトレイに人数分のグラスを乗せる。
「どれにしようかなー」
各サーバーで飲み物の種類が異なる。幅広く揃えられていた。
ふと動きが止まる。
――知らない人ばかりが集まったカラオケで、俺は意外と平気でいるよな。
去年の今頃は、こんな風に遊ぶことも怖くてできなかったのに……。
朧はぼんやりと考えながらも飲み物を選択した。グラスにオレンジ色の液体が注がれてゆく。
――本当に不思議だ。今でも少しは緊張するけど楽しいって思える。色々な騒動に巻き込まれたことで鍛えられたってのもあるだろうけど。
次々にグラスを飲み物で満たしていく。心の中も同じなのか。口元に笑みが浮かぶ。
――こういう人との関係も悪くないってわかったからかな。
「このサーバーは」
好きな飲み物を混ぜ合わせる機能が付いていた。口角が不自然に吊り上る。
指はグレープを押した。似たような色合いのコーヒーを選び、最後に烏龍茶を選択した。
注がれたグラスは限りなく黒に近い。
「ニシシ、誰が飲むかなー」
陰湿な笑い声が漏れる。朧は足取り軽く、部屋に戻っていった。
全員の手にグラスが行き渡った。朧は前髪に隠れた目でちらりと見る。黒いグラスは
龍目 豪
が持っていた。
武道がグラスを手に立ち上がる。
「今日は集まってくれて、ありがとう! 学科に関係なく楽しんでいってね☆」
持っていたグラスを斜め前に掲げる。居合わせた全員がそれに倣う。
「それじゃー、みんな! さらば二学年、そしてこんにちは最終学年を祝って、カンパーイ!」
乾杯の声が幾つも重なって弾けた。
笑顔が大半の中、豪が渋い顔で軽くむせた。
「な、なんだ、これは!?」
「おもしろいサーバーがあって試してみたんよ」
「飲み物ミックスか。何を混ぜたらこうなるんだ?」
「えーと、グレープにコーヒー、それと烏龍茶だねー」
朧は楽しそうに伝える。豪は手の甲で口元を拭った。
「無茶しやがって……まあ、珍しい味ではあるが」
「慣れたら意外と癖になるかもね☆」
武道の笑顔に豪は気をよくした。
「そうか。一口目はこんなもんだが、続けて飲めば美味く思えるのか!」
探検部の部長らしく、豪は果敢に挑む。グイッと二口目を呷った。少し口の中で溜めて一気に飲み込んだ。
「最高に不味いな!」
豪は黒ずんだ歯を見せて笑う。
何人かはその姿にジュースを吹き出した。
「少し時間を貰うわ」
三宅 葉月
はふらりと席を立つ。武道の前を通り過ぎようとした。
「カラオケはこれからだよ♪」
「そうね」
読めない表情で部屋を出ていった。
飲み物で喉を潤したマコトは表情を緩める。
「俺達もとうとう三年生かー。つーか、学年が変わるからクラス替えじゃん。さほちゃん(
若林 沙穂
)のクラス、楽しかったなー」
「本当に楽しかったわ。担任の若林先生は男っぽいところはあるけれど、どこか品があって優しかったよね」
紅葉が思い出すような表情を見せる。
「さすがクラスメイト! 今度の担任も、やっぱ女性がいいよねー。あー、それと進路も決めないとーって思うのは明日から! 今日は全てを忘れる! 通知表もなかったことにして楽しもうー!」
「成績は少し考えた方がいいかもね」
紅葉は柔らかい声で核心を突く。マコトは自身の胸を押さえてずり下がる。
その合間に
北里 雅樹
は早々とグラスの中身を飲み干した。テーブルにあったメニューを開いて眺める。飲み物はさらりと流し、腹持ちの良さそうな物に自然と目がいく。
「食べ物を頼んでもいいかな」
「わー、いろいろあるんだね」
隣にいたなぎさがメニューを覗き込む。スイーツと書かれた一群を指差した。
「ボクは甘い物がいいな」
「僕はハニトーがあれば食べたかとです」
眠そうな目ながらも
倉前 七瀬
はしっかりとした口調で言った。
「ハニトーは僕も食べてみたい。最初だからできれば小さめの物でお願いしたいね」
ロベルト・エメリヤノフ
は少し離れたところで軽く手を挙げた。
呉井 陽太
が壁際の受話器の前に立った。
「まとめて注文するから、次々と言ってねぃ。ちなみにオレは限定メニューのお好み焼きバーガーを注文するよぅ」
次々と希望の品が声で寄せられた。陽太は受話器からフロントに伝える。
復活を果たしたマコトが一同に向かって言った。
「んじゃー、誰が最初に歌うー?」
武道は部屋に用意されていたタンバリンを手に取った。太腿に打ち付けてうきうきした顔で問い掛ける。
「さぁさぁ、誰から行く? どんなの歌っちゃう? ほらほら、早い者勝ちだよ☆」
ドアが開いた。フロントに注文して一分も経っていない。
誰もが驚いた。秘子だけは例外で、んふふふ、と笑みを深めた。
葉月は黒と白の特徴的なゴシックロリータ姿となって戻ってきたのだ。
静かな歩みで端末に曲を入れる。マイクを手にステージに上がった。
備えられた各方向の画面に英語のタイトルが浮かび上がる。馴染みのない曲に誰もが戸惑いを見せた。
前奏の美しいピアノの旋律をギターとドラムが打ち壊す。重低音の塊が部屋に降り注ぐ。
葉月はタイミングに合わせて頭を激しく上下させた。間もなくマイクを通して地鳴りのような声が部屋全体を揺るがす。
紛れもないデスヴォイスであった。死を運ぶ声が重なって聞こえる。他の驚嘆の声は全て地の底に呑み込まれた。信じられないような現象を目の当たりにした顔で数分を過ごした。
曲が終わり、葉月は乱れた髪を掻き上げた。軽く頭を振って整える。
二曲目は静かな曲調のバラードであった。囁くような甘い声で歌う。武道のタンバリンの出番はなかった。他の者と同様に歌声に聴き入る。
七瀬は画面に表示された文字を目で追う。繰り返しのフレーズに入ると曲が書かれた分厚い本を開いた。活字に飢えているかのように貪り読む。一字も見逃さない。
曲の最後には顔を上げて周りと同様に拍手を送った。
「歌声がきれいですねー。僕は好きですよ」
「ありがとう」
七瀬の感想に葉月はマイクを通して礼を言う。
タイミングよく、注文した品々が運ばれてきた。カラオケは一時、茶会に早変わりした。
雅樹はナポリタンを啜った。数回の咀嚼で呑み込み、唐揚げを摘まんだ。その隣ではなぎさがパフェを頬張る。幸せそうな顔でクリームの付いたマンゴーを一口にした。
少し離れたところではロベルトがハニートーストをまじまじと見ている。
「こ、これが噂のハニトー……」
こんがりと焼き上がったトーストの上でアイスが蕩けていた。網目のようにチョコレートが描かれ、隙間を埋めるようにホイップクリームが甘い香りを漂わせている。
ナイフで端を切り取り、フォークに刺して口に入れた。
口一杯の甘さを表現するかのように笑みが溢れる。
「ああ、なんて甘くて……素敵な味なんだ」
うっとりとした声で呟く。
陽太は失敗したという風に頭を掻いた。
「オレもロベルト君くらいの大きさが良かったんだけどねぃ」
目の前には自身が注文した限定メニュー、お好み焼きバーガーが置かれていた。大皿とほぼ同じ大きさであった。バンズに見立てた普通サイズのお好み焼きに分厚いハンバーグが挟まれ、押し潰された具の一部が食み出て見るだけで胃がもたれる。
「誰か食べるのを手伝って欲しいんだけどー」
「俺が手伝う」
ピザを齧りながら雅樹が手を挙げた。その食べっぷりに陽太は目を見張る。
「よく食べるねぃ。お腹は大丈夫なのん」
「平気だ。今の俺は猫鳴館の住人だからね。食い溜めのチャンスは逃さない」
「こっちとしては大助かりだよぅ」
陽太は嬉々として取り分ける。
食は進み、会話も弾む。喉の渇きを癒す飲み物が大活躍した。大半のグラスが空になったところで紅葉がトレイを持って回収した。
「私が戻してくるわ。飲み物の追加が欲しい人はいるかな」
数人が手を挙げた。紅葉は快く応じた。
紅葉はドリンクバーで空のグラスを返却した。そして新しいグラスを取り出す。
――二年生になったばかりの頃は、こういうイベントに自分から進んで参加するなんて、考えられなかったわ。
グラスにジュースが注がれるのを見ながら過去を思い出す。
――男の子との会話は緊張したし、今みたいに笑ったり、一緒に遊ぶなんて夢にも思わなかったわ。
満たされたグラスをトレイに乗せる。次のグラスをサーバーにセットした。
――この一年、皆といろんなことに挑戦して、本当に良かったわ……。
急に涙腺が緩んだのか。ハンカチを取り出し、目元に押し当てる。
「今日は楽しまないとね」
自然な笑顔で言った。
戻ってきた紅葉は明るい表情で曲を入れた。マイクを手にしてステージに向かう。
武道とマコトが目配せして立ち上がった。
「タンバリンで盛り上げちゃうよ☆」
「志波がタンバリンなら俺はマラカスだ!」
二人はステージの両脇に陣取った。
曲が始まる。ドラマの主題歌に数人が反応した。
前奏の間、マコトは両手のマラカスを振り続ける。
「ふわっふわっ! 今の主役は丹羽だ! アイドルの気持ちで歌えー」
紅葉はマイクを口に持っていく。少し恥ずかしそうな表情で歌った。軽い振り付けにはマコトと武道が、かわいいー、と甲高い声で合いの手を入れた。
地下アイドルのコンサート会場を思わせる。
歌い終わった紅葉は軽い興奮にあった。その影響なのか。アイドルのようなマイクパフォーマンスを見せた。
「次はデュエット曲よ! もちろん、もう一人はこの会場にいるわ。皆、拍手で迎えてあげてね」
マコトと武道を筆頭に拍手が沸き起こる。
その直後、高らかに秘子の名前が呼ばれた。んふふ、と驚いた様子もなくマイクを手にステージへと上がった。
「この曲は私もよく知っています、んふふっ」
「二人でステージを盛り上げようね!」
明るい曲調に合わせて二人は歌った。愛らしい振り付けにマコトは声の限りに叫ぶ。
「紅葉ちゃーん! 秘子ちゃーん! 最高、最高、絶好調ー!!」
上体を激しく左右に振って、ふわっふわっ、と合いの手も忘れない。マラカスは火が噴く勢いで振られた。
武道はタンバリンを太腿に打ち付けて、いいよーいいよー、と汗に塗れた笑顔が迸る。
その熱いパフォーマンスに七瀬は当てられた。
すっくと立ち上がり、恩の元に向かった。横に座ると早速、話を切り出した。
「僕と一緒に歌いませんか?」
「いいわね。喜んで受けるわ」
二人は端末を操作して曲と歌い出しの歌詞を見ていく。
決めあぐねた七瀬が隣に目をやる。
「どれにしましょうかー」
「そうね~。あら、これなんかいいんじゃないかしら?」
男性アイドルユニットの曲を指差した。七瀬は明るい表情となった。
「よかですねー。その曲は当時、よく聴いてました」
「決まりね♪」
曲を予約した。間もなくして紅葉と秘子がステージから戻ってきた。
七瀬は二人に声を掛けた。
「楽しい曲で僕も歌いたくなりました」
「んふふ、ありがとうございます」
「倉前君も歌うのね。がんばって」
空いたステージに七瀬と恩が揃って立った。軽いリズムに乗って二人は踊り出す。緩急のある動きに自ずと手拍子が起こった。
恩は伸びのある声で歌う。隣では七瀬が切れのある踊りを見せた。
続いて七瀬が少し高い声で歌い始める。表情は引き締まり、男らしい一面を見せた。恩は踊りながら目を丸くした。
驚いたのは紅葉も同じであった。
「歌詞に夢中にならないで、ちゃんと歌ってる!?」
妙な感動を覚えていた。
二人の声が混ざり合う。耳に心地よい感覚を与え、何人かは手を止めて聴き入っていた。
歌い終わると七瀬は元の眠そうな目に戻った。恩は微笑ましい顔となった。
二人で揃ってステージを降りる。隣り合ってソファーに座った。
恩は自身のグラスを傾けながら話し掛ける。
「七瀬ちゃんの声、すっごく素敵ねー! 二人でアイドルを目指しましょ♪ なーんてね」
「ふふ、君とアイドルになったら楽しそうですねえ」
二人で話に盛り上がる。
「食べ物の追加はいるかねぃ」
陽太の声に数人が軽食を頼んだ。
「皆の歌を聴いてたら、俺も歌いたくなってきちゃったYO! ノリのいいJ-POPでいくZE☆」
武道はマイクを手にステージに駆け上がる。
長い前奏の合間、スイミングで鍛えたしなやかな動きで踊る。息切れ一つ見せないパフォーマンスに、いいぞー、と幾つもの声援が送られた。
マイクを空中で握り直し、武道が歌う姿勢に入った。
「メニューをお持ちしました~」
女性店員がにこやかに部屋に入ってきた。武道の動きが不自然に止まる。半開きの口で笑顔が硬直した。
数秒で持ち直し、やけくそ気味に歌い出す。上体だけでクロールの真似をした。平泳ぎ、バタフライと続いてクルクルと回る。
「吹っ切れた?」
「キレただけじゃね?」
そんな囁きが聞かれる中、武道は一曲を歌い上げた。
「次はオレがいくよぃ」
陽太が気軽にステージに上がる。軽快なポップスを期待していた数人がギターソロに軽く驚いた。
スローテンポの中、ドラムが力強くメロディーを牽引する。
陽太はゆったりと曲に乗った。見事なハイトーンヴォイスを披露した。
聞き惚れた者達が頭をスウィングさせる。
最後は身体を仰け反らせて天に届くような高い声で締め括った。
「デュエットしたいんだけど、一緒に歌ってくれる人いるぅ?」
すると二人がほぼ同時に名乗り出た。豪とマコトであった。
そこで三人で歌える曲を話し合った。そこで古い曲が話題に上る。マイクスタンドを蹴り飛ばすアクションが決定打となった。
ステージに三人が上がる。マコトが中心となり、右手に豪、左手に陽太が並んだ。
曲が始まる。三人は揃ってマイクで歌う。切れのある腰の動きを入れる。歌の合間に素早い回転を見せた。
「やるなー」
「本物のアイドルみたいね」
ディナーショーのようにも思える。三人を褒め称える言葉が尽きることはなかった。
三人はマイクスタンドを想定した蹴りを前に放つ。踊りの激しさは増して中心が回るように入れ代わる。
マイクには微かな息の乱れも入らず、最後まで歌い切った。
「マジで疲れたー」
マコトはソファーにドカッと座り込んだ。
笑ったような糸目で陽太は天井を見上げていた。息は荒く、喋る気力もない様子だった。
豪は爽やかな笑みでグラスのジュースを飲み干した。
「やっぱり、まともなジュースは美味いよな!」
新しい曲が入れられた。
「腹ごなしに俺も少しやるか」
雅樹はゆったりとした足取りでステージに立った。
マーチを思わせる音楽が流れてきた。画面のタイトルは『子猫たちを責めないで』とあった。
凄味のある声で朗読が始まった。ラップのように韻を踏んでいる訳ではない。スピーチに近い印象を受ける。人物と曲が噛み合っていないのか。誰もが不思議そうに推移を見守る。
延々と子猫への非難が続き、最後は絶叫で終えた。
続いてアニメソングに突入した。歌い慣れた感じに引っ張られ、曲の間奏中にカスタネットやタンバリンが賑やかに打ち鳴らされた。
雅樹は満足したのか。ステージを降りた。持っていたマイクをなぎさに差し出す。
「音海の出番だ」
「え、ボク?」
口に付いた生クリームをナプキンで拭き取る。マイクを受け取ると、小走りでステージに向かった。
「えっと、指名を受けたからボクも歌うよ」
フルートの音が心地よい。ハープの旋律に合わせてピアノが加わり、ゆっくりと歌い出す。なぎさの見た目と同じ可愛らしい曲調に誰もが安堵の表情を浮かべる。
各々の頭が緩やかに揺れた。なぎさの動きが大きくなる。瞳に夏の海の輝きが満ちていく。
一曲では終わらなかった。立て続けに歌って、最後は腕を大きく広げて『その愛が背負う定め』を熱唱した。
大きな拍手の中、照れたように笑って席に戻った。
武道が立ち上がる。
「次は誰かな♪ まだ歌ってない人は元気に、はーい、と手をあげちゃってNE☆」
秘子はマイクを持って、ゆらりと席を離れた。朧の前で立ち止まると妖艶な笑みで見下ろしてきた。
「霧谷さん、遠慮なく歌ってください、んふふ」
「は? え、俺?」
「霧谷は、そうだね。まだ一曲も歌っていなかったか」
ロベルトはプディングをスプーンで掬って口に入れた。
「え、いやいや、俺は歌わなくていいし!」
「マイクを持つ手が辛くなってきたのですが、それでも受け取って貰えないのですか?」
辛さを全く見せない秘子の笑顔が徐々に近づいてくる。朧は顔を伏せるようにしてマイクを奪い取る。
「あー、もう! わかったし! 俺は座って歌うから」
テーブルの端末を引き寄せて曲を見ていく。全員の目が朧に集中する。
「だから、あんまし見んなし! 特に隣の視線が近いし!」
「ステージで歌った方が遠くてよかと思いますよ」
七瀬は眠たげな目で言った。
「その手があったんよ!」
曲を入力した朧は急いでステージに上がった。マイクを持ってテーブルの方に向く。急に背筋が伸び上がる。
「み、見られると歌いにくいし!!」
一番、目立つところで朧はハウリング混じりの声で怒鳴るのだった。
代わる代わるステージに上がり、大いに場が盛り上がる。
その時、部屋の受話器が鳴った。代表で武道が電話に出た。
「皆、延長はどうするー」
両手でバツの字を作る。歌っていた豪も親指を立てて見せた。
武道は皆の意見を取り入れて切り上げることにした。
「あ、帰る前に女子は注目ー!」
いきなり声を上げたのはマコトで手にはスマートフォンを持っていた。
「今日の俺の歌声は痺れたよな! もっと熱い美声が聴きたかったら、俺とホットな関係で繋がってもいいんだぜ!」
該当する三人は視線を合わせないようにして帰り支度を始めた。
マコトの頬の一部が引き攣った。
「なーんてな♪ か、軽い冗談じゃん。さー、俺も帰るかなー」
武道は言葉に出さず、黙って肩を抱いた。
ロベルトは手を合わせて拝むような格好をした。
恩は目元にハンカチを当てて、強く生きてね、と声を掛ける。
陽太は何事もなかったように糸目でいた。
なぎさは励まそうとして身振りが大きくなる。
「落ち込まなくてもいいよ。安本くんには良いところがいっぱいだよ。たとえば、えっと、見た目がチャラ、カッコよくて。あとは……いっぱい、いっぱい、良いところがあるかな!」
「俺は気にしてねーよ。ホント、冗談だって!」
笑顔のマコトは心の中では密かに白目を剥いていた。
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3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
59人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年04月15日
参加申し込みの期限
2017年04月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年04月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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