【修了式】ラストスパートは華やかに｜リアクション

【修了式】ラストスパートは華やかに

　一年五組のクラスメイトを引き連れて佐藤英二はカラオケ店に訪れた。フロントで手続きを済ませて部屋へと向かう。
　ほとんどの部屋が使用中であった。ドアの窓からは中の様子が窺える。若者が多く、何人かは制服を着ていた。
　英二の目にも入る。
　――考えることは同じだね。
　部屋に着いた。程々の広さで個々が適当なソファーに座った。間もなくしてテーブルに全員の飲み物が運ばれてきた。
　英二は一同を見回す。
「誰から歌う？」
「決まってるよな」
「そうだよね」
　ネクタイを緩める男子の言葉に女子が笑って言った。
　別の女子がマイクを英二に差し出す。
「カラオケを提案した佐藤君が最初だよね」
「じゃあ、僕から歌うよ」
「盛り上げ役、よろしく！　アニソンは俺の為に残しておいてくれよ」
　男子は笑いながら言った。英二は、わかったよ、と答えて端末を操る。色々と曲名を見て一曲を選択した。
　マイクのスイッチをオンにする。
「少し前の特撮のオープニングで、まあまあ、盛り上がるかな」
「わー、楽しみー。次は私が歌うね！」
　対面に座っていた野々ののこが陽気に頭をスイングさせる。
　ギターソロの前奏が始まる。英二はマイクを口に近づけた。
　攻撃的な歌詞は加速する。素の英二と掛け離れた曲調に全員は聴き入り、終わる頃には大いに盛り上がった。
「次は私ね」
「その次は俺な」
「私もビュッビューンな歌にするね！」
　次々と曲が入れられた。予約は溜まり、十曲を越えた。
　途中、曲を止めてトイレ休憩となった。その時間を利用して英二がマイクを手にした。
「一年間、このクラスで楽しく過ごせた。いつか……何年後になるかわからないけど、同窓会で集まって今日みたいに皆と盛り上がれたらいいな」
「盛り上がれるって。一年五組の仲間だからな！」
　男子は明るく返した。英二は頷き、湿っぽくなる前にカラオケを再開した。
　時間の関係で、あと歌えるのは一曲となった。その時、英二にマイクが回ってきた。少し迷うような目でののこを見詰める。
「野々さん、良かったらデュエットしない？」
「いいよ！　最後にカッコよく、ガツーンって決めるよ！」
　ののこの満面の笑顔に英二は照れたような笑みを返した。