シナリオ「【修了式】ラストスパートは華やかに」

【修了式】ラストスパートは華やかに

イラスト：飴田的

　柔らかい朝陽が等しく降り注ぐ。
　公園に植えられた桜の蕾が大きく膨らむ。開花の時を心待ちにしていた。
　その横を寝子島高校の生徒達が通り過ぎてゆく。早々と顔を綻ばせて会話で盛り上がる。
　財前華蓮はゆったりとした様子で桜花寮から出てきた。少し遠回りになる道へと歩き出す。
「こっちの方が近いよ？」
　偶然に居合わせた女子が声を掛ける。すると華蓮は緩く巻いた金髪を指で弄りながら答えた。
「この私の美しい姿を一目でもみたいと望まれる殿方のために、わざわざ遠くを回って差し上げるのですわ」
「はぁ、先に行くね」
　溜息にも似た声で女子は小走りとなった。その慌ただしい姿に華蓮は軽く頭を振った。

「もう少し心に余裕をもって、エレガントに行動して貰いたいですわ」
　別の道を悠然と突き進む。腰に手を当てて強気の表情を隠そうともしない。
　その態度が唐突に崩れた。
「あの縦ロールは！」
　足を速めた。途中で少し走った。肩に当たるくらいの近さで角を曲がる。
　少し前を剣崎エレナが歩いていた。華蓮は口元に笑みを作って横に並んだ。
「あら、剣崎さん。このようなところで会うなんて、珍しいですわ」
「ウォーキングよ。寝子島のアイドルとして当然よね」
　横目で返すエレナに華蓮は大口を開けた。

「オーッホッホッホ！」
　狂気を宿した目で笑い出す。
「この私を差し置いて大きく出ましたわね。本当のウォーキングを見せて差し上げますわ！」
　腕の振りを大きくして前に出た。透かさずエレナが追い付く。
「バレエで鍛えた脚力を甘くみないことね」
「その程度の習い事で私の努力に勝てると思わないことですわ！」
　二人は互いに押し合いながら歩く。体力を削り合う。
　高校の正門が見えてきた。未だに争いは続いていた。

「剣崎さん、息切れですわね。無理は身体に悪いですわ」
「心配はいらないわ。あなたこそ、汗が酷いわよ」
　二人は競り合ったまま、正門に突っ込んでいった。
「心配する必要はなかったみたい」
　桜花寮で分かれた女子は柔らかい笑みで正門を通り抜けた。

「本当にあの二人は仲がいいよね」
　どこからともなく現れた八十八旗信彦は女子に寄り添う。肩に手を回そうとしてつねられた。
「本当に仲がいいよね」
「この俺とも仲良くしようよ。その怖い笑顔はやめて、スマイルが一番だよ」
　懲りずに肩に触れてつねられる信彦であった。

　私立寝子島高等学校、最後の行事が始まろうとしていた。

運営部より

※参加キャラクター数によっては、担当マスターが追加される可能性があります。

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

黒羽カラス

マスターコメント

今回はシナリオガイドに財前華蓮さんと八十八旗信彦さんに登場していただきました。
ありがとうございます。本シナリオに参加される場合、シナリオガイドに影響されることなく、
自由にアクションを綴ってください。

改めまして、タイトルにもある通り、今日は修了式となります。
しんみりとした一日になるのでしょうか。
解放された喜びを共にわかち合い、記憶に残る日になることも。
あなたの思い描く今日を自由に過ごしてください。
少し長くなりますが、詳しい説明に入りたいと思います。

以下の中から、主な行動として２つまで選んで、
「キャラクターの行動」欄に【Ａ】【Ｂ】などのアルファベットを省略しないで入れてください。
３つ以上選んだ場合、いずれかのアクションが省略される可能性があります。

　【Ａ】朝から修了式の直前まで
　【Ｂ】修了式
　【Ｃ】今年度最後のホームルーム
　【Ｄ】ホームルーム終了後から下校まで
　【Ｅ】下校してから布団に入るまで

基本的には寝子高１・２年生のための行事ですが、
なにかしらの理由をつけていただければ、それ以外のＰＣさんの参加も歓迎します。
（例：親だから子どもを見に来る。卒業生だけど遊びに来た。無関係だが懐かしくて立ち寄った）

　【Ａ】朝から修了式の直前まで

　朝起きてから、修了式の会場となる講堂に入るまで、ご自由に行動してください。
　（例：自宅での起床、友だちとの通学、こんな日にも朝練、学校に着いてお喋り）

　【Ｂ】修了式

　この日、朝一番で行われる大切な式典です。

　会場は、寝子高の講堂（１階席）です。
　出席するのは、１，２年生です。留年する生徒も出席してください。

　３年生は既に卒業しているので出席する必要はありませんが、
　希望者は２階席で見ることもできます。

　以下の「修了式の流れ」を参考にして、アクションを自由にお書きください。
　（例：隣の人とお喋りして先生に怒られる。いびきをかいて眠る。スマートフォンをいじっている）

　　　■修了式の流れ
　　　・教頭による開式の辞
　　　・校長の話
　　　・生徒によるスピーチ
　　　・校歌斉唱
　　　・教頭による閉式の辞

　★ 校長の話
　長いです。

　★ 生徒によるスピーチ
　何人かの生徒が先生にマイクを渡されます（自らマイクをもぎ取る。強引に渡される、などをアクションで指定）。
　マイクを手にした生徒はアクションにスピーチの内容を書いてください。
　１年間に達成出来た事、思い出、新年度の抱負などを語ることになっていますが、
　関係ないことを熱く語っても構いません。

　【Ｃ】今年度最後のホームルーム

　各教室で、担任の先生から通知表を渡されたり、最後のお話があったりします。
　※クラス替えがありますが、新年度のクラスや担任の先生は、新年度に公表されます。

　ホームルームの内容は、生徒や先生によってクラスごとに特色が出ることでしょう。
　やりたいことを考えて、各クラスのコミュニティで提案や相談をしておくと、スムーズにことが進みます。
　（例：最後だから、教室でみんなで何かして遊ぼう！
　　　　担任の先生を胴上げしよう。プレゼントを贈ろう。記念撮影をしよう）

　通知表は、先生や生徒の性格などによって、褒められたり、励まされたり、怒られたりと様々です。
　その様子を、アクションに自由にお書きください。
　（例：友だちに自慢する。顔面蒼白できゅうと気絶）

　通知表は各教科５段階です。
　その評価の内容は、プレイヤーさんが自由に決めてアクションに書いてください。一部だけでも構いません。
　（例：英語以外は１だから怒られそう。美術は５。理数英は３。国社４。体５）

　※各テスト関連シナリオとの相違に関しては、こちらでは確認できません。
　　アクションに則って描写しますので、ご了承ください。

　※留年については、前日までに生徒に通告されているはずですが、
　　何らかの理由で通知表を受け取る時に初めて知った、というアクションもＯＫです。
　　大いに落ち込んだり、吹っ切れたり、というアクションを楽しんでください。

　【Ｄ】ホームルーム終了後から下校まで

　大掃除をしましょう。
　教室や校舎、部活動をしている生徒は部室、生徒会や委員会で特定の部屋を管理してる場合はそこも含めて、
　１年間の汚れを取りのぞき、新年度を迎えられるように準備しましょう。

　片付けも大切です。
　教室の机の引き出しなど、すべてを取り出しておきましょう。
　留年する生徒も、次は何組になるかわからないので、いったん空っぽにする必要があります。

　掃除と片付けのあとは、自由にお過ごしください。
　学食でランチ、部活の練習、委員会の活動、友だちとお喋り、お世話になった先生のところへ行く、などなど。

　夕方の下校時刻まで、学校にいることができます。

　【Ｅ】下校してから布団に入るまで

　学校を出て、この日の夜に眠りにつくまでを自由にお楽しみください。

　クラスのみんなと打ち上げパーティー！というのが定番ですが、孤独を楽しんでもいいです。
　コミュニティで相談があれば、できるだけその内容に沿ってご参加ください。
　相談がなかったり相談しづらかったりする場合は、アクションに書いてあれば対応に努めます。
　クラスメイトのモブＮＰＣもたくさん参加させて構いません。

　打ち上げ以外では、友だちと帰る、お店に寄り道、夕日を見つめて留年決定を嘆く、
　親に通知表を見られないようにがんばる、などをご自由にどうぞ。

　登場ＮＰＣ

　キャラクター登録されている、寝子高関係のＮＰＣは全員登場できます。

　そのＮＰＣの性格や立場などを踏まえて、自然な形であれば、ある程度アクションで指定が可能です。
　（ＯＫの例：音楽室に津止先生がいると思うので会いに行く。ピアノの演奏を聴いてもらう
　　ＮＧの可能性が高い例：桐島先生が女子更衣室をのぞいてると思うので注意しに行く）

　※特定のマスターが主に担当しているＮＰＣは、軽めの描写にとどまります。ご了承ください。

今年度、最後の寝子高の行事です。
悔いのないように思いきり楽しんで、ほどほどにハメを外しましょう（！？）～♪

サンプルアクション（1）

プレイヤーの目的・意図: 修了式を特に意識しないで自然体のＰＣでお願いします。
キャラクターの目的・理由: 今日は修了式。
担任のいつものノリで、なんか肩の力が抜けたよ。
キャラクターの行動・手段: 【Ａ】
早くに目が覚めた。
いや、いつも通りか。ただ今日は部活がない。
もっと寝ていられる。
俺は布団の中で目を閉じた。すぐ開けた。
トレーニング用の服に着替えた。スポーツバッグには制服を押し込む。

「日課だもんな」

俺はいつもの時間に家を出た。スポーツバッグを肩に引っ掛けて高校へと急いだ。
第一グラウンドに着いた。誰の姿もない。バッグは隅の方において軽い柔軟をおこなう。
俺は走り出した。何周とかは決めていない。すっきりするまで走るつもりだ。
誰かが来たら、挨拶はする。部員だったら、一緒に走るのもいいな。

走りながら俺は思った。後輩ができるんだな、と。

【Ｃ】
担任の軽いノリでホームルームが始まる。
通知表を渡す時に一人一人に声を掛けていた。
俺も受け取る時に言われた。

「体育以外もがんばれよ」

通知表を開くとその通りの数字が並んでいた。
体育は５。それ以外は、まあ、３がほとんど。
国語は２だが。

最後は休みの間の心得みたいな話になった。
生徒の一人が「急にどうしたんだ？」と口にして笑いが起こった。
俺も一緒になって少し笑った。

「おまえら、茶化すなよ。たまには先生させろよ」

そんな台詞にクラスが爆笑した。
いつものあんたは何なんだ。