【修了式】ラストスパートは華やかに｜リアクション

【修了式】ラストスパートは華やかに

南校舎の屋上
　大掃除という重労働から解放された。葉利沢倫理子はクラスを離れ、屋上へと足を運んだ。
　降り注ぐ陽光に目を細めた。柵に向かって歩いていく。吹き上げるような風に髪が乱れた。
　――日差しに春は感じるけれど、吹き付ける風は冷たいわ。
　倫理子は遠くを眺める。気ままに視線を漂わせて、白い建物が見える辺りで顔を背けた。
　――今日は心療内科に行く日だけど、そんな気になれないわ。
　柵から離れた。歩きながら目が自身の居場所を探す。日陰になったところで立ち止まる。
　項垂れるような姿で腰を下ろした。背中を壁に預けて瞼を閉じる。
　倫理子は動かなくなった。横風を受けても揺るがない。
　微かな寝息を立てて意識を心の奥深くに沈めていた。