【修了式】ラストスパートは華やかに｜リアクション

【修了式】ラストスパートは華やかに

探検部
　部室の内部には雑然と物が置かれていた。隅の方に置かれた段ボール箱は肥満気味で閉じられない状態にあった。壁には多くのピッケルが立て掛けられ、使い込んだようなツルハシも混ざっている。
　その中、龍目豪は手入れと掃除をこなしていた。時に考え込むような表情で動作が鈍くなる。
　――もう三年生か。来年度は部長を退いて後輩の育成に専念したいところなんだが。
　苦笑いで縺れたザイルを伸ばしていく。
　――誰も部長に立候補しねえし。俺がもう一年、部長をやらなきゃならねえのかな？
　綺麗に揃えて束ねられたザイルをテーブルに置いた。
「おいおい、誰の仕業だ」
　笑いながら手に取った。カラビナがチェーンのように繋がっていた。元の状態に戻していく。その表情が厳しいものに変わった。
　――部長の大変さはよくわかる。だからこそ、押し付けでは無くて自発的にやってもらいたい。
「難しいよな……」
　手の甲で頬に流れる汗を拭う。小物は粗方、片付いた。
「あとは大物だけか」
　豪は部内を見回す。
　――最初は勢いで突っ走ってきたが、このままだと俺の卒業と共に、この部はなくなっちまうんじゃねえか？
「一人の部長を選ぶより、皆の力が必要か」
　豪は段ボール箱の側にしゃがんだ。ファイトーと叫び、対象の物体をひょいと両手で持ち上げる。ろっこんの『軽いぜ！』を駆使して軽々と運んだ。次々と場所を移動させて掃き掃除に励む。
　その過程で一枚の写真が出てきた。少し汚れていたが全く色褪せてはいなかった。
　開いた窓に持っていく。桜に囲まれた山道。リュックサックを背負った部員達が笑顔で歩いていた。豪は先頭に立ち、一同に励ましの声を掛けていた。
「あいつら、どうしてるかな」
　目を窓の外に向ける。色鮮やかな鳥が目に入った。
「あれはインコ？　なんか足に付いてないか？」
　不格好な姿でインコは飛んでいく。どこにも立ち寄らず、横切って見えなくなった。
　――あんなインコだって、空を飛べるじゃねえか。俺達だって……。
　手にした写真を大空に掲げる。部員達は笑顔で空を飛んだ。