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夢の通い路の先で
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世界が燃えている。
真紅の炎が渦巻き躍る度、家々が轟音たてて崩れる。庭先で色鮮やかに咲いていた花々が熱に萎れ、見る間に焼けて黒い灰となる。
それはひとも同じこと。
焼けた家からは焼け焦げた誰かの腕が覗き、その腕にしがみついて悲鳴をあげる子どもが焼けて崩れた隣家の下敷きとなる。逃げ惑う人々に魔物じみて炎が襲い掛かる。
大地が割れる。炎が噴き出す。黒煙に巻かれ、炎に包まれ、人々が斃れてゆく。一瞬のうちに炭と化してゆく。
「ああ、また……」
白金の髪に炎の色を映し、
クレメル・トロムリッツ
は低く呻く。
「クレメル、クレメル……!」
「大丈夫だ、クラーラ」
己と同じに小さな掌で縋りついてくる双子の妹、
クラーラ・トロムリッツ
の肩を、クレメルはきつく抱きしめる。
「だから何度も言ったのに」
残酷なまでに冷徹に呟く少年の薄紅の瞳に映るのは、城壁に囲まれた自国を見渡せる玉座に座したまま、宝剣に貫かれて絶命するこの国の王。
双子の言葉を最早聞くことも出来なくなった王に向け、クレメルは過去幾度となく繰り返し忠言しては無下に拒まれ、挙句口汚く罵られた言葉をもう一度囁きかける。
「過去から学べと、あれほど忠告したというのに」
クレメル・トロムリッツ
の薄紅の双眸は世界の始まりから現在までを見通すことができる。
クラーラ・トロムリッツ
の蒼空の双眸は現在から世界の終わりまでを見通すことができる。
双子として生を受けたふたりはその身に宿った力を惜しみなく使った。星読みとして名を馳せたがゆえに、王族に仕えた。
兄から過去を習い、妹から未来の予言を受け、賢明なる王は己が国を繁栄の極みへと導いた。そうして、堕した。
国の全ては我が物であると民を虐げ、臣を虐げ、近隣の国への侵攻を繰り返し、――終には臣に弑逆された。
未来は、蒼空の双眸持つ妹が見たその通りに訪れた。
「わたし、みんなに幸せになって欲しかっただけなのに」
美しい蒼空の瞳に惨たらしい破滅の光景が映るまま、クラーラが哀しい声で喚く。
「だからみんなに、このまま未来に向かってはだめだって言ったのに……!」
(……三国め、だったかな)
妹の肩を強く抱きしめ、兄は奥歯を食いしばる。零れそうになる息を噛み殺す。
優しい妹は、訪うた国にやがて訪れる悲しい未来を力の限り遠ざけようともがいて足掻いて、結局は叶わずに嘆く。そんなことが、およそ三回。ひとの時間にすれば数百年に及ぶ時間の中にあっても、幼い姿のままに永い時を生きる星見の双子たちにとっては瞬きの間。
瞬きの間に滅びゆくものに、クレメルは正直然程の感慨を抱けない。己の心が痛むのは、どれほど力の限りを尽くしても結局は己の見た滅びの未来を変転すること叶わぬ妹の嘆きを知るがゆえ。
ひとの滅亡を短い時の間に三度も見てしまったクラーラの心の痛みはどれほどだろう。それはどれほど妹の心を死に至る病巣の如く冒しているのだろう。
(人はどうして凄惨な歴史を繰り返すのか……?)
そう思うのは、だから愚かにも滅ぶひとに対する嘆きではない。憎悪にも近い、憤怒だ。
「みんなみんな、いなくなる……」
悪夢にうなされるように呻く妹の頬を両手で挟み、蒼空の双眸を覗き込む。涙に曇るその瞳に、クレメルは淡く微笑みかける。
未来を見通す瞳。
(この目があるから、クラーラは傷付く)
これ以上、妹を傷付けたくなかった。
(絶対に、君を守るから)
白金の睫毛が触れ合うほどに近く、顔を寄せる。額と額を軽く合わせる。
「僕の眼を片方あげる」
甘く甘く、囁く。
「だから君の眼を片方、ちょうだい」
過去見る瞳と未来見る瞳を半分ずつ交換すれば、双眸は現在しか見つめることができなくなる。双子に宿った星見の力は相殺され、失せる。
それは兄だけが知っていた、星見の力の壊し方。
「交換こ、しよう。ね?」
「クレメル……」
兄を呼ぶ妹に、クレメルはもう一度、出来るだけ明るく応じる。
「……クラーラ」
「クレメル、……クレメル、起きてる?」
繰り返し呼ばれ、吐き出す息とともに瞼を押し上げる。
ベッドを覆う白い紗を押しのけるかたちで、クラーラが枕元に両手を置いて覗き込んできていた。
ふたりで寝起きする部屋に落ちる夜の闇に、クラーラの双眸が見えた。
右が薄紅、左が蒼空。
あの運命の日に妹の蒼空の瞳と交換した己の薄紅の瞳をクラーラの片目に見て、クレメルは白い頬に僅かな笑みを刻む。
「ん……」
眠りの内に温かくなった掌を伸ばし、妹の頬に触れる。
「どうしたんだい?」
「ううん、なんでもないの」
兄の優しい眼差しを受けながら、クラーラは無表情のまま首を横に振った。
「怖い夢でも見た?」
それでも、起き上がった兄に頭を抱きしめられてしまえば、クラーラは頷くしかなくなる。
「とても、怖い夢を見たの」
「前の世界の夢?」
さらりと見破られ、顔を上げる。見上げた視線の中で、双子の兄は小さく肩をすくめた。もしかしたら同じ夢を見たのかもしれないと思いながら、クラーラはクレメルの薄い胸に頬を押し付ける。
「だから、わたし、」
確かめたかった。
だって夢の中では誰も彼もがいなくなった。誰も彼もが、惨たらしく死んでいった。
ずっと傍にいてくれたクレメルが、これからもずっと変わらず隣にいてくれると、嘘でもいいからせめて信じさせて欲しかった。この目はもう、未来を見ることはできない。嘘を嘘だと見破れない。だからこそ、
「……大丈夫だよ」
頭を抱くクレメルの腕の力が強くなる。耳元に感じるクレメルの心臓の音が近くなる。
「何があっても僕が君を守るから」
穏やかな心臓の音に、妹は兄の言葉が決して嘘ではないと信じる。
「ここは、とてもいいところだわ」
「……そうだね」
背中を優しく撫でる兄の掌の温度に誘われるように、クラーラは胸の内を吐息にする。
星見の力を失って後に辿りついたこの世界は、日々いくらかの事件はあれども、それでもとても平和なようにクラーラには思える。少なくとも、己の居た世界のような破滅は訪れないように思える。
それがたとえ、未来が見えないがゆえの儚い展望だとしても。
「平和で、幸せで、……わたし、この世界が好きよ」
だからこそ不安になる。
いつか、この幸せが壊れてしまうのではないか。
いつか、またあの世界のようなことになってしまうのではないか。
胸にざわめく絶望に抗えず、体が細かく震えた。怖かった。とてもとても、怖かった。
背中を、背中から伸びた小さな翼を、繰り返し優しく撫で続けてくれるクレメルの細い腰に縋りつく。
「ずっとこのままでいられるのなら、とっても幸せなのに」
朝になればふたりで目覚め、ふたりで向かい合って温かいお茶を飲む。そうしてふたりで営む占い師の小さなお店を開き、ふたりでお客をのんびりと待つ。お店を閉めれば、ふたりでごはん。夜を過ごし、ふたり同じ部屋で眠りに就く。
変わらぬ穏やかで幸せな日々を、ずっとずっと、続けたかった。
「やっと手に入れたんだ」
背や背の羽根を撫でる手が、不意に止まる。両腕できつく抱きすくめられ、クラーラは瞬いた。
「この幸せは、絶対に壊させはしない」
悪夢にうなされるように囁く兄の背に、クラーラはそろりと腕を伸ばす。両手で抱きしめ返す。
「……ねぇ、クレメル」
答えが分かっていて、それでも問う。
「クレメルは、何があってもわたしと一緒にいてくれるわよね?」
「ずっと一緒だよ」
クレメルの声に迷いはなかった。抱きしめてくれる腕の力にも、胸の鼓動にも。
「この命が尽きるまで、ずっと」
自分以外のひとを嘲り欺くことに一切の躊躇をしない兄の、自分だけに向けてくれる真心にクラーラは安堵の息を、
「……ええ、ありがとう」
感謝の言葉を零す。
背を撫でていた兄の手が離れ、妹の手を取る。
「さあ、もう一度寝よう」
掌と同じに温かいベッドの中に招き入れられ、クラーラは兄の隣で丸くなった。クレメルと手を繋いでいれば、怖い夢もきっともう見ない。
「クレメルの手の温度は、ずっと変わらずにあたたかいのね」
囁きながら瞼を閉ざせば、額にクレメルの優しいキスを感じた。
ふと、思い出す。
あの運命の日、滅びの炎の只中で互いの瞳を交換したときも、兄の瞳はただ温かかった。痛みの片鱗も与えず、ただただ優しく、失った瞳の代わりに己の体に宿ってくれた。
「おやすみ、クラーラ」
「おやすみなさい、クレメル」
囁き合いながら、双子の兄妹は額を寄せ合う。互いの温度と呼吸の中に沈み合う。
「次は幸せな夢を」
「クレメルも、どうか良い夢を」
祈るように、あたたかで幸せな夢の淵に沈んでゆく。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
夢と、夢から目覚めたあとの物語、お届けにあがりました。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
夢から覚めたあとのあなたを書かせてくださいましてありがとうございました。苦しい夢と、そのあとのあなたの想いや行動、とても楽しく書かせていただきました。
あなたをあなたらしく描けておりましたでしょうか。
ご参加くださいまして、また、お読みくださいましてありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら、お話しをお聞かせいただけましたら嬉しいです。
ありがとうございました。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年03月17日
参加申し込みの期限
2017年03月24日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年03月24日 11時00分
参加キャラクター一覧
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