キョンシーにご用心｜リアクション

キョンシーにご用心

【ぬいぐるみの行進だ】

　ぴょこん。ぴょこん。ぴょんぴょんぴょん。
　かわいらしい丸っこいフォルムの集団が、桜台を行進していた。
　先頭を進むのは、高笑いするオールバックの、鈴木修一郎。
　仲良しのぬいぐるみさんたちに囲まれて、ご満悦で飛び跳ねている。

「ほわあああ！　とっても楽しそうなのだー！」
　瞳をらんらんと輝かせて、後木真央はよろよろと集団に近づいた――。

　真央がここ、桜台にいたのには、わけがある。
「だって満月ですから！」
　真央にとって、「月がきれいですね」というのは、猫集会のためにある言葉だ。
　満月の夜には猫集会がある。
「今日のおネコさまズは、レベルが高かったのだ－！　真央ちゃんとっても幸せなのだ。はふぅぅ」
　こんな夜には、猫鳴館に門限がなくて本当によかったと感じる。
「にゃんにゃん、にゃんこにゃーん♪」
　楽しいひとときの帰り道、そんな具合で、真央は出会った。

「真央ちゃんも、混ざるのだーっ！」
　真央は自分から修一郎へと近づき、キョンシーとなった。
「真央ちゃん……、ねむねむぅ。もう夜なのだ、猫鳴館に……帰る、のだぁ」
　優しい真央は、道中同じ寮の人間を見かけたら、一緒に連れて帰ってやろうと考え、へらりと笑った。

「……高笑いが聞こえるのじゃ」
「美嘉にも聞こえるよ！」
「つーか、あれじゃね？　うっはー、えっらいシュールじゃねぇか。どうするよ」
　ぬいぐるみの行進に真央が突入する現場を、ホラー部の面々は目撃していた。
　荒太郎、美嘉、骸の三人は、物陰で顔を見合わせて、共通の見解にたどりつく。
「あの禍々しい高笑い。ここは一発、やめとくべき！」
「逃げちゃお」
「がってん！」
　せっかく手に入れた札を試すこともなく、ぬいぐるみ集団の異様な迫力におされて、三人は逃げ出した。
　そんな最中にも、荒太郎はファンシーかつキュートでシュールな一幕を、しっかりカメラにおさめておいた。

「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、ハハハハーッ！」
　桜台に、感情のこもりきらない修一郎の笑い声がひびく。
「にゃーっにゃっにゃっにゃ、にゃにゃにゃにゃー！」
　猫鳴館に向かう声が、それに応えた。

【気高い標高のおっぱいさんを探せ】

「おっぱいさぁ～ん」
「きゃああああああああああああっ！」
　握利平の行くところに、悲鳴あり。
　桜台のはずれ、桜花寮方面の路地に、助けを求める女性の悲鳴があがった。

「戦衣着装！　キョンシーバスター降臨ッ！」
　路地の奥で、風雲児轟の声がした。
　彼のろっこん『戦衣着装』が発動する。
　住民の安全を守るヒーロ－、ザ・ストレイトの登場だ。

　ねこったーでキョンシー情報を手に入れた轟は、これを撃退するために現場に来ていた。
　対策案を事前に練ってきていた轟は、当然札も用意してある。
「死者を氾濫させるなど、この俺が許さん！」
　両手に札を構えて、利平の元へと急行する。
「おのれキョンシー！　俺の札を受けてみよ！」
　怯える女性を背後にかばい、轟は利平に立ち向かう。

「おおお、おっぱい～……」
　轟の胸元には目もくれない利平だが、おっぱいへの帰路を邪魔するものは断固として排除する。
　轟が放つ、札が添えられた掌底打ちをバックステップで避けた利平は、そのままバク宙をきめて両足で蹴りつけてくる。
「おっと！」
　思ったよりも素早い利平の動きに、気を配り、轟は背後の女性に声をかけた。
「今のうちに逃げてください」
「は、はいっ」
　走り去る女性の足音を聞きながら、轟は利平めがけて拳をくりだす。
　触れてはならないとわかっているぶん、集中力が必要だ。

「おっぱ、おっぱい……、俺の、ふるさと……」
　立ち去った女性の姿が見えなくなると、利平の動きは急にやる気の感じられないものへと変化した。
「おっぱい、どこだ、俺のおっぱああああああああ……っっっい！！！」
「おい、待てっ！」
　もうここには利平の求めるおっぱいは存在しない。
　そのことを察した利平は、制止しようとする轟の掌底をはねのけ、新たな故郷目指して猛スピードで立ち去った。

「くっ……、逃がしたか」
　悔しがる轟だが、近辺にはまだキョンシーの姿がちらほら見える。
　被害を食い止めるべく、彼は次のキョンシーめがけて、駆けていった。

このページにイラストを設定する

キョンシーにご用心

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧