【星幽塔】第十階層　本の迷宮｜リアクション

【星幽塔】第十階層　本の迷宮

☆アストライアと共に

　１階にアストライアと共に残ったのは３人の少女だった。
「おおー、ほしびとの叡智の結晶！　って感じの迷宮ですね―。この機会に、いっぱい勉強しちゃいますよ―」
　おさげな三つ編みの屋敷野梢が、オリーブ色の瞳を輝かす。
「本、本！　この世界の薬草とかの調合の本が読みたいんですよねー。エリクシルハーブ単体でも効果はあるんですけど、特化した薬草には敵いませんしー。やはり、この世界で万能薬を作り出したいでーす！」
「それは素晴らしいですね」
　アストライアが頷く。
「……というわけで、そ～言う感じの本をよんで勉強したいです。適当に混ぜて作っても、成分が被ったりしたら副作用のほうが強くなるかもですし、どうなるかわかりませんからー」
　梢が話しているうちに、目の前に書棚が動いてきた。
　書棚の背表紙に目をやった梢は驚きの声をあげる。
「えっ？　これ薬草の本じゃないですか……これも、これも……まさか」
　まるで、自分の注文に応えたように……いや、応えたとしか思えない。

「おすすめの本や利用方法を教えていただけますか？」
　綾辻綾花はアストライアにそう尋ねているところだった。
　本の虫である綾花にとって、不思議な図書館は楽園の様だった。
「書棚は種類別に分かれていますので、お好きなジャンルを館内図から探してみてください。借りたいものがはっきりしていれば、書棚が向こうからやってきます」
「そうなんですか！　あの、貸し出しできたらしたいですけど……」
「それ、私も聞きたいと思ってました。この迷宮の本ってお借りできるんですかねー？」
　梢が口を挟む。
「大事な部分はメモはとるつもりですけど、もっと色々読んで勉強したいんですよねー。星幽塔ですごす夜、若干暇ですしー」
「はい、大丈夫ですよ。貸し出し期間は次の月齢までです」　
　アストライアは微笑んだ。　
「月齢……だいたい一ヶ月ってことですかー」
　梢が頷く。
「とりあえず、時間が許す限り読ませていただきますね」
　そう言った綾花が、
「星幽塔の歴史」
　と口にすると、目の前に歴史の本が並んだ書棚が現れた。
「すごい……」
　綾花は目を輝かせて本を読み始める。　
　オーブの役割、黒い影について、過去に同じように異世界から来る事例があったのか、塔の最上階や各階の案内図などなど……
　知りたいことはたくさんあるけど、こんなふうに書棚が飛んできてくれるなら探すのも楽だ。
　
　見渡す限り本が収まった書架が空間全体を埋め尽くしているようだ……ともうすぐ寝子高生になる水上桜は感じた。
「たまには読書をするのも悪くないよね」
　受験勉強中は参考書とにらめっこするばかりでうんざりだったけど、興味の赴くままの読書なら悪くない。
　というわけで、片っ端から星幽塔の歴史や地理、伝説のお宝などについての本などを読むことにした。
　今後の行動に際して何かしらのヒントが見つかるかもしれない。
　ちょうど目の前に星幽塔の歴史の本が並んだ書棚が現れたところだし。

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