メリーさんが座敷童、なの｜リアクション

メリーさんが座敷童、なの

　間もなくして二人組が旅館に現れた。ふわふわしたワンピース姿のトワ・E・ライトフェロゥと黒系統のスーツで纏めた夜海霧楓であった。
　青い瞳を好奇心で満たしたトワが声を張り上げた。
「たのもー。たのもー。なにをorderするデス？」
「俺に聞くな。もう少し考えて喋ればいいだろ。それよりも、どこに怪異が潜んでいるかだ」
「いらっしゃいませなの」
　怪異は潜むことなく、堂々と二人の前に出現した。トワは笑顔となって抱き付いた。
「メリー　my dear friend　ハグハグするデスー」
「金髪が痒いの。鼻がムズムズするの」
　女の子は顔だけでも逃れようとする。近くにいた楓に訴え掛けるような目を向けてきた。仕方ないという風に息を吐いてトワの頭をむんずと掴む。
「ちび助、少しは落ち付け」
　トワを引き剥がしたあと、着物の女の子に聞いてみた。
「トワの知り合いみたいだが」
「friendデス」
　ワンピースの腰に手を当てて言った。
「食い下がった理由が、それか。初耳だが、まあ、いい。ここに出没する座敷童っていうのは、えっと、名前は何だ？」
「あたしはメリーさん。期間限定で座敷童をしているの」
「メリーか」
「トワのfriendデス。girls talk　楽しむデス」
　トワは一歩を踏み出す。再び、楓に頭を掴まれた。
「色々と語りたいのもわかるが、仕事中にちょっかい出すのはやめてやれ」
「カエデに、ぐぬぬdeath！」
　振り返ったトワは双眸に青い炎を宿らせた。プルプルと身体を震わせて、すぐにフロントを指差す。
「おーとーまーりするデス！　メリーをDinnerにー招待するデス！」
　楓は顎先に軽く手を当てる。
「……まあ、メリーにはもう少し聞きたいこともあるし、それもいいだろう」
「オショクジは山盛りでー」
　トワは両手を広げてフロントに歩き出す。女の子は、またなの、と口にして消えた。
　目の当たりにした楓はそれとなく目を動かした。
「……本当に消えたみたいだな」
　踵を返した楓はトワの横に並ぶ。
「夕飯に招待するのはいいとして、山盛りはどうなんだ？　メリーは子供で大食らいには見えないが」
「メリーデスカラー、こーれーくらいー必要になるマス」
　トワは限界まで両手を伸ばして飛び跳ねる。楓は呆れた表情で見ていた。
「まあ、俺は雇われの身で懐も痛まないからな。好きにすればいい」
「どんどん、たのもー、たのもー、デス！」
「わかった、あまりはしゃぐな。回りに迷惑だ。背中の電池を抜き取るぞ」
「デンチないデス！　カエデがご乱心デスね！」
「あほ姫に言われたくねぇよ」
　辛辣な内容をやんわりと口にして楓は宿泊の手続きを済ませた。