メリーさんが座敷童、なの｜リアクション

メリーさんが座敷童、なの

　穏やかな土曜日の朝を迎えた。
　星ヶ丘寮の広い自室で八神修は机に向かう。机上には参考書の類いが積まれた状態で置かれていた。
　修は顔を上げた。両方の肩を軽く回す。目に付いたスマートフォンを手にして、ねこったーの情報に関心を寄せる。
「これは……」
　一つの書き込みに目が留まった。
『寝子温泉の沢野屋って旅館に座敷童がいる。マジで瞬間移動してるし』
　修は笑みを浮かべた。
「あの時の約束を果たそう」
　白いシャツに茶色のジャケットを羽織る。思い出したかのようにスマートフォンでメールを送った。
「猫鳴館の座敷童は、どう動くのかな」
　軽やかな声と足取りで行動を開始した。

　隙間風が遠慮なく入ってくる猫鳴館の部屋で雨崎荒太郎は布団に包まっていた。
　突然、枕元から音がした。
「……なんでがんすー」
　間延びした声で携帯電話を引っ掴み、メールの内容に目を通す。差出人は修であった。
『寝子温泉の沢野屋にメリーさんという座敷童が出没したらしい』
「座敷わらし、がんすかー」
　呟いて息絶えたように瞼を閉じる。数秒で目を見開き、掛布団を撥ね飛ばす。
「ゆっくり寝てなんていられない！　座敷わらしの地位は譲れないでがんす！」
　ボサボサの頭で野良着に着替える。裸足で部屋を飛び出し、あまりの冷たさに舞い戻って雪駄を履いた。
「待っていろ、でがんすー！」
　興奮して頬は赤くなる。座敷童然とした姿で駆け出した。

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