メリーさんが座敷童、なの｜リアクション

メリーさんが座敷童、なの

　桜月は星ヶ丘寮の自室にいた。窓のカーテンは閉められ、朝陽を締め出す。未だに夜の気配が居座っていた。
　月はベッドで仰向けになっている。赤い瞳を開いて仄暗い天井を眺めていた。投げ出したような四肢を気だるげに動かす。指先に何かが触れた。掴んで顔の前に持ってくる。
「……相手をしてくれるのか」
　スマートフォンに語り掛ける。ネットに繋げて情報の海を揺蕩う。
　沢野屋という旅館のホームページに目が留まった。座敷童が現れると、はっきり書かれていた。
「寝子温泉か」
　――座敷童か。姿はどうなのだろう。やはり、黒髪のおかっぱで着物を……。
　口元に笑みが浮かぶ。
「メリーさんみたいだな」
　スマートフォンを持つ手が力なく倒れた。開いていた瞼を閉じる。
「今夜、行ってみるか……」
　穏やかな寝息で再び夜が訪れた。

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