メリーさんが座敷童、なの｜リアクション

メリーさんが座敷童、なの

　シーサイドタウンを朝陽が照らす。二階建ての小さなマンション、ニャス・ポ・ワール黄昏荘も例外ではない。
　窓際に置いたソファーに夜海霧楓が足を組んで座っていた。手にはスマートフォンが握られ、書かれた内容を吟味するような目で見ている。
「カエデがー、morningから、こむすびがおしてるデスよ」
「それを言うなら小難しい顔だ。俺は関取じゃない」
「席取り？　Fairy？　Youの席はねーデス？」
　トワは金髪の頭を左右に振りながら疑問符で返す。楓はスマートフォンの画面を見ながら言った。
「発音からして違う」
「カエデ、Texting while walkingみたいデス。どーしーてーヨ」
「俺は座ってるから歩きスマホは成立しねぇよ」
　トワはソファーの横手から顔を出す。画面の文章を見て、うーん、と唸る。邪魔な金髪を楓は片手で押し返した。
「見てもわかんねぇなら、見るんじゃねぇよ」
「なに、これ、なに？」
「島の怪異について書かれている。俺はちび助の護衛役だからな。危険分子には目を光らせている、って言っても本当に光る訳じゃねぇからな」
　先に釘を刺され、出番を無くしたトワは少し赤い顔で膨れた。
「……座敷童が瞬間移動ねぇ。本当かよ。ま、確かめてみるか」
「トワもgoデス！」
「いや、来なくていい。俺が偵察に」
「トワもgoデス！」
「金髪を押し付けてくるな。眼鏡のフレームが歪む。グリグリも禁止だ」
「つーれーてーいーけーデス！」
　食い下がるトワに根負けした。出掛ける用意をしろ、と楓は短い言葉を放った。
　トワは飛び跳ねて喜んだ。早速、着替えを始める。楓はハンチング帽を被り、やれやれ、と軽く溜息を吐いた。

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