ブラック・ブラックの夜｜リアクション

ブラック・ブラックの夜

◆9:01　不動石

「さて……はて……ふむ」
　木陰に座り、タブレット端末を操作して『ねこったー』を見ながら伊賀解理は、黒くなった地面を撫でていた。
　軽く爪を立ててみると、黒板を引っ掻いたような嫌な音がする。
　眉をひそめつつ、手頃な物がないか周囲を観察して落ちていた黒い石を手に取ろうとした。が、なぜか持ち上げられない。
　片手で持てるサイズの石が持ち上がらない、と言うよりも『地面とくっついている』ような感覚に違和感を覚えながら、伊賀はそっと立ち上がり「ていっ」とその石を蹴る。ペキリと小さな音がして、石は二、三メートルほど先まで飛んでいった。
　剥離された石があった場所から、土が見える。手でその土を触ってみると、やや湿ってはいるものの、土の中までは黒くなっていないようだった。
（物体の中までは、黒くできない……のか？）
　掘り返した部分と黒くなっている部分の間に指を入れて、材質や感触を確かめる。厚い部分でも五ミリ程で、光を通さずに、どこまでも黒い。
　素手で割れるようなものでもなく、先ほどの石が置かれていた部分は偶然、この黒い膜のようなものが薄かっただけだろう。
「んー……ま、何かの役には立つかね、うん」
　ねこったーに画像付きで詳細を投稿してから、流れているタイムラインに目を通す。
　いくつかの感謝の返信や、疑問文が投稿されたので、返信を送る。
　しばらくそれを繰り返していると、新着部分に、短い投稿文が表示された。

＜今から犯人を炙る＞

　伊賀は、その書き込みを見て「……ライターは持ってないな、そういえば」と妙にズレた独り言を呟いた。

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