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寝子島高校
春の嵐の只中で
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春の黄昏の道をふたり、歩く。
一歩分だけの距離を開けて隣を歩く
鵙海 甫
の、男子にしては少し小柄な、それでも自分から見れば十分に強靭そうな肩を見遣る。
前を見据えていた甫の紅茶色の瞳がふと動く。黄昏の色を映し取って鮮やかな琥珀色に染まる眼鏡越しの瞳に思わず見惚れそうになって、思わず視線を外す。
外した先、茜の道を手を繋いで辿る家族連れの姿があった。母親に笑いながら話し掛ける子と、それを微笑み眺める父親と。首を巡らせるようにして、知らず見送っていることに気付き、小さく小さく、
千堂 結
は息を吐いた。
(なんでだろう)
すれ違う家族を見て、それだけでどうして胸が締め付けられるのだろう。
(……ちょっと寂しい)
隣には大好きな友達がいるのに、一緒に居ればそれだけで楽しいはずなのに、今日はどうしてだか父母の顔ばかりが頭を巡る。母の作るご飯や父の笑顔や、そんなことばかりを思い出してしまう。
(だって、……仕方ない)
父にも母にも、仕事がある。遠地にさえ仕事があるというのはたぶん、きっと幸せなことには違いない。両親が働いてくれているお陰で、自分はこうして寝子島で高校に通っていられる。それは重々、承知している。
(でも)
誰も居ない家に帰り、暗い部屋に電気を灯さなければならない心細さは、時折どうしても、どうしようもなく込み上げて来てしまう。
(こういうのを、センチな気分って言うのかな)
零れる溜息を誤魔化すように、ほんの少しおどけて思ってみる。小さく肩を竦めて、知らず目を伏せる。
伏せた視界に捉えた自分の靴先に、甫の靴先が触れそうなほど近く、近づいた。
「行こうぜ」
低く囁かれ、手を引かれ、瞳をもたげる。掴んだ手から視線を逸らすように、甫は前に向き直り歩き始めた。
「……あ、ごめん、少しぼーっとしてた……!」
慌てた口調で詫びる結に首を横に振って見せながら、甫は肩越しにちらりと結を盗み見る。どうしてだろう、彼女がふと足を止めてそのまま立ち尽くしてしまいそうな気がした。だから思わず手を引いた。
冷たくて小さな手を掴んで歩きながら、甫はもう一度、改めて結の顔を見遣る。
(いつもと違う感じ)
こちらの視線に気づいて向けてくれる、もうすっかり見慣れたはずの笑顔も、どこか弱々しく感じられた。
気遣うような結の笑顔から一度視線を外す。黄昏の空を睨み、繋いだ手に力を籠める。歩を緩め、結と肩を並べる。
「元気ないじゃん、どうかした?」
尋ねながらふと思いついたのは、彼女の親のこと。あまり聞いたことはないけれど、彼女もまた親と離れて暮らしているらしい。
(うちの親も海外いっちゃったけど)
親子仲は普通に良い。それに家にはほとんど毎日、お帰りと迎えてくれる祖父母がいる。
(何か訳ありだったりして?)
言葉に迷ってか、口元に手をやる結を見つめる。黄昏の色を仄かな紅に透けさせる柔らかそうな細い栗色の髪も、その髪に覆われた華奢な背も、栗色の長い睫毛に縁どられた透き通るような蜂蜜色した瞳も、
(か、かわいい……!)
うっかりと見惚れた挙句、思い悩む彼女の面持ちさえそう思ってしまった自分に唇を噛む。小さな手を握りしめ、彼女の言葉をゆっくりと待つ。
自覚するほどせっかちな自分が、彼女のこととなればいつまでも待てる気がするのは、少し不思議だった。
(話せないことなら)
せめて側に居てやりたかった。元気づけたかった。そうして、出来得るのならば、彼女の居場所になりたかった。
しばらく歩いて後、結はずっと離さずにいてくれる甫の手をぎゅっと握り直す。この手の温かさに、ほんの少しだけ縋らせてもらってもいいだろうか。
(……ちょっとだけ我儘言っても、いいかな)
夕陽を浴びる甫の横顔を見上げる。視線に気づいて微笑んでくれる甫に笑い返そうとして、出来なかった。
「あ、あの。甫君……」
俯いてしまった。
「えと、……こ、このままバイバイするっていうのも、なんか……その、」
寂しい、とは口に出せなかった。甫の手ばかりをきつく握り、言葉に詰まる。こんなこと、言っても大丈夫だろうか。十六歳にもなってこんなことを言ってしまうのは恥ずかしくないだろうか。この掌の温かさに、力強さに、頼り切ってしまっても本当にいいのだろうか。
(でも)
言わなくては、伝わらない。
夕陽よりも真っ赤になった顔を上げる。両手に甫の手を掴み、必死の瞳で想いを言葉にする。
「ちょっと、寂しいなって……思っちゃって」
「ん」
否定でもなく、励ましでもなく、ただ頷いてくれるのがありがたかった。
やっと言えた一言と甫の優しい眼差しは、押し込めていた言葉を次々に引き出してくれた。
「私、親と離れて暮らしててね。家族連れとか見ちゃうと、こう……」
春の夕風に火照った頬を撫でられながら、結は困ったような笑みを唇に滲ませる。
「どうしても、寂しくなっちゃうんだ」
胸にわだかまった寂しさを甫に向けて言葉にした途端、ふわりと肩が軽くなった気がした。寂しさに冷えた胸の奥に温かな火が灯った気がした。
(甫君が初めてだな)
家族のことを誰かに話したことなんてなかった。
今こうして手を包んでくれているこのひとには、誰にも相談できないことも話せる気がする。
(不思議)
思った瞬間、ふわりと笑うことが出来た。
「ごめんね、変な話しちゃって」
「……ん」
短く頷き、甫は不意に足を止めた。その視線の先にはいつもの交差点がある。シーサイドタウンに住む結と、旧市街に住む甫が別れる、いつものの場所。
いつも別れる場所を前にして、結は俯く。
(少し、甘えてもいいかな……?)
「だから、……その。……も、もう少し、一緒に」
居たいな、と呟く。
これは甫にだけしか言えない言葉。今は、このひとと一緒に居たかった。
「……なんて」
言ってから、照れた。熱い頬を冷えた掌で押さえる。
「へへ、本当に変な話だね。ごめんね」
謝って甫を見上げて、結は唇を不安に震わせる。甫はどこかしら思い詰めたような真剣な瞳を交差点へと向けていた。
「真っ直ぐ帰りたかったら、勿論帰ってもいいから……!」
胸を冷たくする寂しさを笑顔に押し込める。大好きなひとに、迷惑だと思われたくなかった。
「甫君」
いっそのこと自分から手を離してしまおうとして、解こうとした手は、けれど甫にきつく掴まれ逃れられなかった。
「甫君……?」
見上げた甫は、怖いくらい真摯な顔をしていた。きつく結んだ唇が僅かに開く。
「……俺がいるだろ」
呟くように零れ落ちた不意打ちのような一言に驚き、結が言葉を失くしている間に、甫は一度瞬き、今度は真っ直ぐに結と向き合った。掴んだ手を離さぬまま、結の瞳を見つめる。
「寂しいときは俺がいるだろ!」
はっきりと言って、
(うわ)
言ってから自分の言葉にものすごく恥ずかしくなって、甫は唇を抑えて瞬く。掴んだ手の小ささに、こちらを見上げてくる結の大きく瞠った瞳に、ますます恥ずかしくなる。そもそも、こういう発言はきっと自分には似合わない。
(苦手だ)
その苦手なことを、けれどどうしても彼女には言いたかった。彼女だけには、伝えたかった。
黄昏の薄紅色を映し取ったように、結の頬が花の色に染まる。その顔がとても綺麗で、ずっとは見ていられなくなった。結に背を向け、ずっと掴んだままの手を引く。
「行こうぜ」
歩き出すのは、いつもと違う方向。
(今日は)
普段滅多と甘えたりして来ない彼女が、寂しいと弱音を零すのなら、今日はどうあっても彼女をひとりで帰したりするものか。こんなところで別れたりするものか。
(バイバイしない)
行先はまだ決めていないけれど、でも、よく知っている。結と一緒ならきっとどこへ行ったって楽しい。
(甫君)
手を引く甫の背を見上げ、結は魔法の呪文のように大好きなひとの名前を心に呟く。ふたりで一緒に寄り道できるなら、どこだって嬉しかった。
ふたりで居ても、両親のいない寂しさが消えてなくなるわけではない。
(そうじゃなくて)
ただただ、甫と一緒にいられるのが、
(すごく嬉しい)
それだけのことが嬉しくてたまらなかった。そう感じてしまう自分の心に、結は目の前に居てくれる男子への想いを改めて確かめる。
手を繋いで春の黄昏の路をふたり、歩く。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月16日
参加申し込みの期限
2017年01月23日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月23日 11時00分
参加キャラクター一覧
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