【星幽塔】第十一階層　極圏のハレーション｜リアクション

【星幽塔】第十一階層　極圏のハレーション

（ばかな……）
（何ともない？）

（アイス・アステロイドを、撃ち落とした？）

　命中の瞬間、竜はその長い尾を振り上げ、氷塊にぶつける。
　アイス・アステロイド、あえなく四散。
　アステリズムの奥義、竜に通用せず。
　
　絶望の溜息が漏れる。
　万事窮す。
　
　――いや。
　――見よ。

　――竜の様子が、おかしい？
　
　突如竜の全身を、星の光の発行が包む。
　乱反射の中でもだえ苦しむドラゴントレイン。
　
　ここに至るまでに蓄積していたダメージ。
　アイス・アステロイドを破壊したことによる、星の力の消耗。
　さらに……。
　
（銀のナイフ？）

　竜の頭部にきらめく、銀の刃。
　目にできるはずのないそれを、はっきり一同は視認する。
　サキリが投擲したナイフは、過たず竜を捉えていた。
　
　――攻めるなら、今しかない！
　
　真っ先に動いたのは、刀、そしてレグルス。
　日本刀と曲刀、それぞれに渾身の力を籠め、竜の体にたたきつける。
　怒りに燃えるドラゴン、すさまじい星の力を籠めたファイアブレス。
　二人に直撃する、その間際で、それは強い力で弾かれる。
　悠月の防御壁。
　
　「歌を、皆、力の限り！」

　悠月が皆を鼓舞し、朗々とした讃歌を響かせる。
　それは神々の歌。
　星と、塔と、乙女の歌。
　英雄が生き、英雄が戦い、英雄が倒れる歌。
　歌声は重なり合って、無窮の凍土に響き渡る。

　
　オーロラが乱舞する。
　迅速に雲が飛び去る。
　めくるめくダイアモンドダスト。
　この世の終局のような風景が現出する。
　
　神の化身の如き竜、荒れ狂う力に立ち向かう朗々たる聖歌。
　刀、レグルス、サキリ、武道、亮。
　武器を持つ者が、果敢に竜に挑む。

　――決めるのは一撃。
　音の消えた世界、桜は無心にクロスボウの照準を合わせる。
　――一撃だけ撃って、あとは離脱。
　狙うは頭部。
　その鼻先。
　その鼻先に刺さった、銀のナイフ。
　――打っても外しても一撃。
　星の力のすべてを籠めて、この一撃に賭ける。
　
　引き金は軽かった。
　弓蔓が乾いた音を立てた。
　まっすぐな輝きの線が、夜に吸い込まれた。

　寸分の狂いもない着弾が、銀の音叉を弾き、竜が天地を震わせる声を上げる。

　風のように跳躍して現れるのは、
　凍土に立つ荒野のガンマン、鎌八まもる！

　――旦那、スペキュレイティブに行くぜ！　
　
　
　なおも立ち上がろうとする竜に向け、ゲースが手にした槍を掲げる。
　酒と怠惰に蝕まれた中年の体に、どこにこんな力があろうかという勢いで、それを投擲。
　まっすぐな軌道が、焔を上げる。
　まもるの星の力だ。

　
　槍が、竜の頭を貫く。

　絶叫する竜が、ぐらりと体を傾がせる。
　
　村まであとわずか。
　
　そこを狙っていたのは八神修。
　弓を射かけつつ、後退。

　
　――今度こそ！

　氷壁に向け、ろっこんを発動。
　再び、氷の塊が竜に降り注ぐ！

　
　そして、跳ね上がった刀の刀が。
　武道の渾身の一撃が。
　亮の炸裂弾が。
　サキリの蛇腹剣が。
　グレッグの弓が。
　メリィの爪が、
　レグルスの曲刀が。

　
　それぞれに、思いのこもった一撃が、竜に打ち込まれ――。
　
　今度こそ。
　
　今度こそ、竜は、動かなかった……。
　
　
　
　――Ｍｉｓｓｏｎ　Ｃｏｍｐｌｅｔｅ！！！！

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