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【星幽塔】第十一階層 極圏のハレーション
最終局面の幕が、切って落とされた。
遊牧民はゲースの指揮のもと、密集して竜をけん制する。
悠月の一団が、巨大な防御壁を展開し、遊牧民たちにまで攻撃を届かせない。
力負けして離脱したものは、ペルラの治癒が当たる。
けが人の救護が優先。
前線に立つのは、ゲース、そして美咲紀。
「当たらなければどうということはないのです！」
果敢に風を操り、敵の攻撃を散らす。
本来ならワイバーン対策に取っておいた自分の力だ。
ここ一番となって、出し惜しみする必要はない。
背後で全体を見渡すリリエルとともに、風の防波堤を作り上げる。
「俺は竜と一騎打ちだ！」
軒昂と義手を振り上げ、槍で突撃を繰り返すゲース。
「金はあとでせびるがな」余計な一言を忘れない。
穴まで、あと数メートルと迫る。
「いまだ！」
不意に解かれる陣。
蜘蛛の子を散らすように逃げる遊牧民たち。
とまらない竜は、穴めがけて……。
その瞬間、竜はブレスを噴き出す。
まるで割れた地面から噴出したように、もうもうと雪煙が舞い上がる。
黒い巨大な影が、大きく跳ねた。
噴射の勢いで、自らの軌道を修正。
あえなく、穴は回避……。
その瞬間。
「列車なんだから、レールの上を走らないと！」
青い髪を靡かせ、あろうことか竜の目の前に躍り出る影。
またも伏兵、アリス。
彼女は最後まで、ドラゴンの形状に拘り続けていた。
列車である以上は中に入れるだろうし、列車である以上は車輪があるはず。
それが見えないにしても、軌道から外れることはできないはず！
抱えた一対の氷柱。
ドラゴンの直前に、それを激しく落下させる
そのまま星の力で、雪を凍結。
轍を完成させる。
（無理やり進路を作り出して、移動するコマをゴールへ導く……）
「あったなあ、昔そんなゲームが……」
急に進路を転換されたドラゴン、バランスを崩し……。
ドオオオオオオン！
穴の中に、その巨体を突き落とす。
「やった！」
「いや、まだ」
竜が、全身を震わせる。
穴からはい出てくる。
底知れぬ力。どのような意思が、かの化け物を駆り立てる？
――ここだ。
――見つけた。
夏朝はドロップを噛み割る。
その瞳は澄明に澄み切って、白夜の空のようだ。
渾身の力で、星の力を発動。
黒い縄のようなエネルギーが相手を縛り上げる。
同時に、自分の全身にありったけのワッペンを張る。
ろっこん「重く軽く」。自らの体を極限まで重くし、トレインに自らを引っかける。
自分自身が足止め。
「無茶な！」
悲鳴が上がる。
ずるずると引きずられる夏朝の体。
次第にそれは速度を増す。
「あ……っ！！」
夏朝の口から、苦鳴が迸った。
全身が軋む。
とめどない痛みが走る。
手袋が裂け、おそらく掌から血がにじんでいる。
屈した膝がそのまま引きずられる。
――！！！
ペルラを突き動かしたのは、算段ではない。
確かに事前に、正念場に至ったならば、己を擲ち治癒に赴くと決めていた。
それでも彼女を走らせたのは、ただ友人を救わねばならぬという思い。
自分の命を賭しても、誰かを守りたいという思い。
いかに移動したかわからぬ。
サキリのろっこんがまだ発動できたのか、負荷を超えて、飛行したのか。
ともかく夏朝の顔は正面にあり、ペルラはありったけの力で治癒を施した。
もはや、一歩も動くことが叶わぬ。
かろうじてエリクシルハーブを飲み下すと、眼前はドラゴンを抑え込む夏朝の姿。
竜を凌駕するすさまじい意思で、夏朝はしがみつく。
――痛みは我慢。
想像を絶する苦痛。
限界まで自分の躰を重くすることが、これほど負荷が大きいとは。
それでも、夏朝は屈しない。
――骨が折れ、肉が裂けても……。
こんな風にしか、他人を守れない自分に対する自嘲がふっと湧き上がる。
どうしていつも、僕はこうなんだろう。
一番不器用で、一番大変そうなやり方でしか、他人を守れないんだろう。
頭を振って、雑念を追い払う。
「弱れ、弱れ……。
――止まれぇぇぇ！！！」
絶叫が響き渡る。
竜は一際巨大な軋みを上げて……。
そのまま、静寂。
（と……）
（止まった……？）
（止まった……）
不意に訪れる静寂。
ピクリとも動かないドラゴントレイン。
――見ろ。
――おお、見ろ。
――背中が……。
――竜の背中が……。
背中に走る、無数の亀裂。
溢れ出る、おびただしい光の乱舞。
そこからゆっくり、巨大な羽根が伸びる。
――ドラゴントレイン、第二形態。
遊牧民はゲースの指揮のもと、密集して竜をけん制する。
悠月の一団が、巨大な防御壁を展開し、遊牧民たちにまで攻撃を届かせない。
力負けして離脱したものは、ペルラの治癒が当たる。
けが人の救護が優先。
前線に立つのは、ゲース、そして美咲紀。
「当たらなければどうということはないのです！」
果敢に風を操り、敵の攻撃を散らす。
本来ならワイバーン対策に取っておいた自分の力だ。
ここ一番となって、出し惜しみする必要はない。
背後で全体を見渡すリリエルとともに、風の防波堤を作り上げる。
「俺は竜と一騎打ちだ！」
軒昂と義手を振り上げ、槍で突撃を繰り返すゲース。
「金はあとでせびるがな」余計な一言を忘れない。
穴まで、あと数メートルと迫る。
「いまだ！」
不意に解かれる陣。
蜘蛛の子を散らすように逃げる遊牧民たち。
とまらない竜は、穴めがけて……。
その瞬間、竜はブレスを噴き出す。
まるで割れた地面から噴出したように、もうもうと雪煙が舞い上がる。
黒い巨大な影が、大きく跳ねた。
噴射の勢いで、自らの軌道を修正。
あえなく、穴は回避……。
その瞬間。
「列車なんだから、レールの上を走らないと！」
青い髪を靡かせ、あろうことか竜の目の前に躍り出る影。
またも伏兵、アリス。
彼女は最後まで、ドラゴンの形状に拘り続けていた。
列車である以上は中に入れるだろうし、列車である以上は車輪があるはず。
それが見えないにしても、軌道から外れることはできないはず！
抱えた一対の氷柱。
ドラゴンの直前に、それを激しく落下させる
そのまま星の力で、雪を凍結。
轍を完成させる。
（無理やり進路を作り出して、移動するコマをゴールへ導く……）
「あったなあ、昔そんなゲームが……」
急に進路を転換されたドラゴン、バランスを崩し……。
ドオオオオオオン！
穴の中に、その巨体を突き落とす。
「やった！」
「いや、まだ」
竜が、全身を震わせる。
穴からはい出てくる。
底知れぬ力。どのような意思が、かの化け物を駆り立てる？
――ここだ。
――見つけた。
夏朝はドロップを噛み割る。
その瞳は澄明に澄み切って、白夜の空のようだ。
渾身の力で、星の力を発動。
黒い縄のようなエネルギーが相手を縛り上げる。
同時に、自分の全身にありったけのワッペンを張る。
ろっこん「重く軽く」。自らの体を極限まで重くし、トレインに自らを引っかける。
自分自身が足止め。
「無茶な！」
悲鳴が上がる。
ずるずると引きずられる夏朝の体。
次第にそれは速度を増す。
「あ……っ！！」
夏朝の口から、苦鳴が迸った。
全身が軋む。
とめどない痛みが走る。
手袋が裂け、おそらく掌から血がにじんでいる。
屈した膝がそのまま引きずられる。
――！！！
ペルラを突き動かしたのは、算段ではない。
確かに事前に、正念場に至ったならば、己を擲ち治癒に赴くと決めていた。
それでも彼女を走らせたのは、ただ友人を救わねばならぬという思い。
自分の命を賭しても、誰かを守りたいという思い。
いかに移動したかわからぬ。
サキリのろっこんがまだ発動できたのか、負荷を超えて、飛行したのか。
ともかく夏朝の顔は正面にあり、ペルラはありったけの力で治癒を施した。
もはや、一歩も動くことが叶わぬ。
かろうじてエリクシルハーブを飲み下すと、眼前はドラゴンを抑え込む夏朝の姿。
竜を凌駕するすさまじい意思で、夏朝はしがみつく。
――痛みは我慢。
想像を絶する苦痛。
限界まで自分の躰を重くすることが、これほど負荷が大きいとは。
それでも、夏朝は屈しない。
――骨が折れ、肉が裂けても……。
こんな風にしか、他人を守れない自分に対する自嘲がふっと湧き上がる。
どうしていつも、僕はこうなんだろう。
一番不器用で、一番大変そうなやり方でしか、他人を守れないんだろう。
頭を振って、雑念を追い払う。
「弱れ、弱れ……。
――止まれぇぇぇ！！！」
絶叫が響き渡る。
竜は一際巨大な軋みを上げて……。
そのまま、静寂。
（と……）
（止まった……？）
（止まった……）
不意に訪れる静寂。
ピクリとも動かないドラゴントレイン。
――見ろ。
――おお、見ろ。
――背中が……。
――竜の背中が……。
背中に走る、無数の亀裂。
溢れ出る、おびただしい光の乱舞。
そこからゆっくり、巨大な羽根が伸びる。
――ドラゴントレイン、第二形態。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年04月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年04月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年04月29日 11時00分
