「おおっ……」
扉をくぐった一同から、感嘆の声が漏れる。
そこは雪原の真っただ中。
彼方にいくつもの純白の霊峰が望まれる。
蒼穹は、手に触れそうなほどに近い。
耳の奥が抉られるように痛む。吹き付ける風が冷たい。
ペルラ・サナーレは自分の身体を抱きしめる。
「いきなり、雪山の斜面に放り出されたみたいですね」
「……キヒヒッ……」
唖然とする一同に、聞き覚えのある声が響いた。
――ようこそ、第十一階層へ。
――ここまで来れた皆さんの栄誉を讃え、こんな趣向を用意しました。
突如巻き起こる、激しい縦揺れ。
驚く間もなく、雪山の山頂から巨大な影がせりあがってくる!
一見すると、巨大な芋虫に似ている。
漆黒の列車。
全長は視認するのが困難なほど長い。
「なんですか、あれ」
慄くペルラに答えるように、「ドラゴンだ!」と誰かが言った。
異形の巨体、かろうじてそれだけが竜の名残をとどめる禍々しい頭部。
その真紅の瞳が、ぎろりとペルラをにらみつけたように見えた。
いままでの星幽塔の冒険で、彼らの出会ったドラゴン。
そのどれとも似ていたし、そのどれとも似ていない。
それらの悪意だけを凝り固めたキマイラのように見えた。
――GRUUUUUUU!!!!!!!!
そいつが軽く身を揺すると、山全体が揺れ、頂に積もった雪が雪崩れた。
その雪崩に乗って、ドラゴン自身も切り立った山の斜面に身を躍らせる。
「こっちに来ます!」
逃げようとする冒険者たちをあざけるように、青空に映し出されるビジョン。
ドラゴンからまっすぐ麓方向へと映像は移動し、そこにある小さな村が映される。
その小さな村の中央にある広場に聳える氷柱。
透き通った氷の中には、男とも女ともつかぬ美貌の人物が氷漬けにされている。
その人物が胸に抱えているのは……
「オーブ!?」
――あなたたちの健闘は称えますが、ここまでです。
――この階層のアステリズム、ふたご座の
神威(かむい)がこの階層のオーブと共に無残に砕ける余興を一緒に楽しもうじゃありませんか。
――もっとも、あなたたち自身が死ななければ、の話ですが。
「……キヒヒッ……」
笑い声の残響は、雪崩の轟音にかき消された。
芋虫めいたドラゴンの腹から、二体のワイバーンが射出され、ドラゴンに先行してこちらへと向かってくる。
一同に戦慄が走る。
このままでは自分たちも危険だし、なにより山頂から滑り降りて、加速度のついたドラゴンが村に激突したら、どんな惨事が起こるか……。それだけではない。次の階層へと進む手段を失うかもしれないのだ。
「たたた大変なのー!」
凝集した光の中から、ステラが引き攣った顔を見せる。
「とりあえずスキー用具とかの道具は用意できたの。
ただ……ここからは、みんなにまかせる他はないの……」
すがるような目を向けるステラ。
星幽塔、かつてないほどの熾烈な激戦が、今まさに開始されようとしていた。
ペルラ・サナーレ様、ガイドの登場ありがとうございます。
人呼んで謎のマスター、ZZZZと申します。
愛ある限り戦いましょう。
状況
雪山の山頂です。
このままだとドラゴンは約30分で麓の村に辿り着いてしまいます。
滑降しはじめたドラゴンが麓の村に着く前に破壊してください。
・ドラゴントレイン(第一形態)
弾丸列車型ドラゴン。見た目は巨大な芋虫。
今まで星幽塔で遭遇したドラゴンなどの攻撃を複製してきます。
・想定される攻撃
・黒龍(第一階層登場)の火球・絶対防御・鉤爪・翼
・水龍(第二階層登場)の水球・アクアブレス
・スカルドラゴン(第五階層登場)の放散液弾砲、コラプションアタック・氷霧
・「かいぶつ」(第九階層登場)の鉤爪ラッシュ
その他、まだ見たことのない攻撃があるかもしれません。
これらの攻撃は、間隔を置いてなされ、十分な対策があれば防御可能です。
が……。
詳細
最終目的地、麓の村までは以下のようなルートになります。
【1】山頂
ドラゴントレイン出現地点。
ドラゴンの腹からは、一定の間隔で二体のワイバーンが射出されます。
また、巨大なドラゴンが身をゆすると、雪崩が発生します。
・ワイバーン
氷でできた小型の飛竜。アイスブレスで皆さんの足止めをします。
【2】山頂からやや下った斜面
PCが出現した位置。
【3】山林
針葉樹林の林が広がっています。
ドラゴンはなぎ倒しながら進みますが、皆さんはなんとかしてください。
また、ここでもワイバーンが空から飛来します。
【4】ブリザード地帯
強い風が吹き荒れます。
ドラゴンが雪玉、氷の槍などを繰り出してきます。
【5】雪渓地帯
起伏の激しい場所になります。
視界が遮られてしまいます。
【6】廃工場
かつて巨大な工場地帯であった場所。
現在は使用を停止し、工場跡だけが残っています。
燃料などは全て凍結済みで、使用することはできません。
ドラゴンはなぎ倒しながら進みます。
【7】雪原地帯
氷壁などに囲まれた平原地帯。麓の村まではもうすぐです。
ドラゴンが暴走し、形態を変化させるかもしれません。詳細不明。
※ドラゴンを途中で止められた場合、それ以降のアクションは必要なくなるので、
残念ながら描写が少なくなる可能性がありますが、ご了承ください。
※PCさんが途中でドラゴンや自然の脅威などに敗北した場合、気を失って救護されて、第一階層に運ばれます。
その時点で、残りのアクションは不採用となりますので、ご了承ください。
あちこちにオーロラやダイヤモンドダストが乱れ飛ぶ、おかしな天気になっています。
●遊牧民
雪原でほそぼそと生活を営む遊牧民。30人程度。みな小柄です。
カリブーなど、雪原地帯に生息する生き物と暮らしています。
温和で気が弱く、ドラゴンの出現におびえています。
星の力の<虹>を使用可能。
戦闘開始後、全力で離脱すれば、ドラゴン到達以前に彼らとの接触が図れるかもしれません。
●雪上装備
ステラが簡易な防寒具や、スキー用具などを用意してくれています。
騎士の力を使えば、簡易なスノーモービルなども用意できる可能性があります。
●アステリズム
ふたご座のアステリズムで名は神威(かむい)。
強力な星の力を行使できるらしいですが、弱点のらっきょうを使用されていまは敵の手に落ち、
オーブといっしょに氷漬けの麓の村にとらわれています。
アクションは2~3か所に区切って書いていただいた方が、より効果的に演出可能です。
なお、キャラクターが大きな音を立てることで雪崩が起こったりということはございません。
あまり目立つ器具を持ち込んでしまうと、ドラゴンの集中攻撃を食らいかねないので、ご注意ください。
状況説明は以上です。
かなり困難なミッションになることが予想されます。
皆さまの参加をお待ちしております。愛ある限り戦いましょう。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの ほしびととは をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!