夜とお菓子と、あとひとつ。｜リアクション

夜とお菓子と、あとひとつ。

「くぅぅ、」
　コンビニで買ったポテトサラダに、旧市街商店街の居酒屋『焼き鳥ハナ』で買った焼き鳥の串を並べて写真を撮り、ねこったーに投稿しつつ、後木真央は哀しく呻く。
「早く成人したいのだ～」
　本当は暖房やらストーブやらのがんがん効いた店の中で焼き鳥を食べたかった。おつまみ的なあれやこれやをウーロン茶でつまんでみたかった。それなのに、良識派な女将に、
　――今日はもう遅いから、寮で食べなさいね
　優しいくせに頑なに入店を拒否されてしまった。持ち帰り用の焼き鳥パックが入ったレジ袋を提げてめそめそ夜道を歩き、けれど真央は猫鳴館には帰らなかった。
　ポテトサラダを買ったコンビニの軒先で焼き鳥ポテサラ乗っけを作成し、食べる。完食して空っぽになった容器の写真をねこったーにアップロードしようとして、寒さにぶるぶる震える手では上手くスマホを扱えず、歯の根をカタカタ鳴らしながら、コンビニに再入店する。
　顔見知りの深夜勤務の店員に寒さに引き攣りがちな笑顔を向け、レジ前で出汁の香を立ち昇らせるおでんの前に立つ。
「大根と卵とウインナー巻きとスジとはんぺん、厚揚げとごぼう巻きと結びこんにゃくも！　出汁多めで！」
　それから、おでんを食べ終わった後の出汁に入れる用のうどんと乾燥葱と、ついでにうっかり目についた唐揚げも欲望のままに購入する。
　おでんの容器で凍えた掌を温め、今度はイートインスペースを借りる。暖まった掌で頬を擦り、作成するのは山盛りおでん唐揚げうどん関西風。
　出汁をたっぷり吸った熱々の大根を頬張り、うっかり辛子をつけすぎた厚揚げに涙目になり、うどんを豪快に啜り込み、出汁で身体を胃袋から温める。
　旺盛な食欲で本日二度目の夜食を平らげながら、真央は次の夜食を考える。
(次は二十四時間牛丼屋に行くのだ)
　シーサイド駅前の店で最安値牛丼にキムチと納豆を乗せて食べよう。
(それからファミレス)
　星ヶ丘付近のファミレスで食休みと暖まりがてら、ドリンクバーと洒落込もう。少し休憩した後は、気紛れに深夜営業をしていることもある星ヶ丘植物園内のカフェに寄ってみよう。そこが開いてなくとも、星ヶ丘の住宅街をうろつけば、隠れ家のような深夜営業の店もきっと見つけられる。
(シメは駅前の朝定食！)
　寝子島をほぼ一周して一晩中飯テロするルートを頭に組み上げ、真央は思わず満面で笑う。学校にはよろよろ登校することになるだろうけれど、授業中爆睡することになるかもしれないけれど、構うものか。
(真央ちゃんは)
　一滴も残さずおでんの出汁を飲み、真央は志も新たに立ち上がる。
(夜食の神になるのだ！)