スマートフォンの暗い画面に反射して映る眠そうな目をした女を消すように、電源を入れる。
七緒 璃音がいつものように起ち上げるのは、ねこったーアプリ。
途端、画面に示されたのは、粉砂糖で化粧された真っ赤な苺がこれでもかと乗せられた純生クリームのホールケーキ。スポンジの肌理細やかさがよく分かる断面にも苺と生クリームがたっぷり。
駅前のうどんチェーン店の明太子と温泉卵と天かすと葱たっぷりなあったかうどん。『出汁うまい』のツイートつき。
見ただけでしっとりしていると分かるパンに挟まれたマスタードマヨネーズ和え半熟卵のサンドイッチ。生クリームとチョコレート片で分厚く蓋をされたチョコレートドリンクが見切れている。
レンゲが立つと噂の超ごってりな上にとろとろに煮込んだ軟骨チャーシューがどかんと乗せられた豚骨ラーメン。
「あー……」
スプーンを入れたが最後、とろりと解けてチキンライスを覆い尽す黄金のオムレツから立ち上るは、バターの香り含んだ柔らかな湯気。
さっくさくのタルト生地の中には濃厚なカスタードクリーム、タルト台を覆い尽しそうなほどに飾られた瑞々しい葡萄。『シャインマスカットタルト!』のツイートつき。
「なにこの飯テロ」
ねこったー画面を埋め尽くす食べ物写真に目を落とし、璃音はぼやいた。
『だめだなんか食べて来る』
『夜食作ろうそうしよう』
『コンビニ行く。誰が何と言おうと私はコンビニに行く』
ねこったーに溢れかえる食べ物写真の誘惑に負け、タイムライン上の戦士たちが次々と倒れて行く。
画面から窓の外に視線を向ける。カーテンの隙間から流れて来るのは真夜中の月光。
画面内の時計も部屋の時計も、示しているのは深夜帯。
(無茶シヤガッテ……)
心の中で敬礼を送りつつ、璃音はそっと切ない息を吐いてみる。
(……ウチも腹減ったわー……)
そういうわけで夜食とかどうですか。
こんにちは。阿瀬 春と申します。
ガイドには七緒 璃音さんにご登場頂きました。ありがとうございます!
もしもご参加頂けます場合は、ガイドはサンプルのようなものですので、どうぞご自由にアクションをお書きください。
夜中にご飯を食べる理由も作る理由も、そこは何でも構いません。
ねこったー覗いたら神魂かナニカの力で飯テロ(美味しそうなものの写真を、おやつ食べるには躊躇われる時間にツイートすることを言うようです)が行われていてなんだかもう無性に何かが食べたくなってたまらなくなった、とか。
唐突に24時間営業のファミレスで千べろ(千円でべろべろに酔うことを言うようです)チャレンジしたくなった、とか。
ストレス解消にお菓子作ったら作りすぎたので一緒にカロリー摂取しようと友達の家を襲撃してみた、とか。
夜中にご飯とかおやつとか食べるのに理由なんていらないのです。
食べたいから食べる。カロリーとかは今日はとりあえず気にしないことにしましょう。
真夜中だろうと開いてるレストランもあります、ラーメンやおでんの屋台もどこかの公園でやっているかもしれません。もしかすると気紛れに開いているケーキ屋さんだってパン屋さんだってあるかもしれません。どこに行く気もないのなら家の台所で冷蔵庫や戸棚を覗きましょう。何かあるはずです。たぶん。
ご参加、お待ちしております。